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2014年06月01日23:36

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五月の読書記録

五月は『希望の原理』にかなり時間を取られた。それでも結構読めたほうかな?でも、五月もなぜか岩波文庫の割合が多いけれど(笑)。編集方針とか注釈の親切さにバラツキはあるものの、でもやっぱり良い本を出しているというのは事実。

2014年5月の読書メーター
読んだ本の数:17冊
読んだページ数:5950ページ
ナイス数:63ナイス
http://book.akahoshitakuya.com/u/4147/matome?invite_id=4147

■わが町・青春の逆説 (岩波文庫)
これほど主人公が愛おしいと思わされた小説は無かった「わが町」。一本気で不器用、それでいて愛情深いベンゲット他あやんこと他吉の言動には何とも言えない小気味良さを覚える。いかにも映画的だな…と感じたが、実際映画化を前提にして書かれたとのこと。そして、作品の随所に登場する「夫婦善哉」の柳吉と蝶子も妙に嬉しい。解説では『赤と黒』が引き合いにだされる『青春の逆説』だが、過剰な自意識で何かと空回りしてしまう主人公豹一の言動は、むしろ『ライ麦畑で〜』のホールデンを思い出させた。個人的にはやや冗長という印象が否めない。
読了日:5月31日 著者:織田作之助
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/38425854

■新・帝国主義時代を生き抜くインテリジェンス勉強法
タイトルに「勉強法」とあるので、てっきり佐藤氏お得意の古今東西の書物についての蘊蓄が聞けるのかな…と思って手にとってみたら、期待に反して、昨今の現状分析。それでも概ね興味深く読めたのだけれど、個人的に気になったのと同時に不満だったのは、あれだけ安倍政権について論じながら、国家秘密法案については一言も触れていないこと。ただ、その安倍政権を評して、民衆がたたき上げの政治家を評価しなくなったという指摘にはかなり示唆的なものを覚えた。他にも色々と興味深い発言はあるのだけれど、できれば注釈をつけて欲しかった…
読了日:5月28日 著者:佐藤優,荒井和夫
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/38367287

■放浪記 (岩波文庫)
本書を読んでいて、山頭火の日記と通ずるものを感じた。それはともかくとして、解説で引用された辻潤の言葉がいみじくも言い当てているように、全編身体で書いているという何とも言えない生々しさと力強さを感じた。確かに男にだらしがなかったり、職が長く続かなかったりと、へたれな部分も少なからずあるが、それでも生きていくこと、ひいては食べること、そして創作への情熱には読者を惹き付けるものがある。ただ気になるのは、解説でこの上なく親密だったという母親との関係。親密であると同時に近親憎悪を抱いていたということに留意したい。
読了日:5月28日 著者:林芙美子
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/38351072

■ことばと国家 (岩波新書)
グローバリズムの席巻と共に、偏狭なナショナリズムが勃興する昨今にあってこそ読まれるべき一冊だと思った。これまでの長い人類史の中で、多種多様な変化を遂げてきた諸言語。その複雑極まりない歴史の一端を垣間見ることで、読者はこれまで自分が漠然と抱いてきた言語観に大きな変更を迫られることになる。本書が刊行され、早三十年以上を経ているが、本書で提起された問題は今もその意味を失っていない。錯綜している問題を扱っているため、内容も些か錯綜している感が否めないが、言語の本質に迫る上で一つの手がかりになる一冊ではある。
読了日:5月26日 著者:田中克彦
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/38303943

■古代地中海世界の歴史 (ちくま学芸文庫)
かねてから地中海世界の歴史を概観してみたいと思っていたが、とりあえずその好奇心を概ね満たしてくれたと言える。とりわけ、一クリスチャンとして、地中海周辺の国々の様々な要素を育みながら、発生したと言えるキリスト教の背景が本書でかなり把握出来た気になれたのが、収穫だった。ただ、キリスト教が生まれる背景と、それがローマ帝国の国教に到る経過は記述されてはいるが、キリスト教が生まれるまさにその時点の記述がオミットされているのが気になる。もう少し注釈が欲しかったなど、突っ込み所はあるが、全体的にみれば、良書といえる。
読了日:5月24日 著者:本村凌二,中村るい
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/38261856

■不如帰 (岩波文庫)
読み進める内に、何となし尾崎紅葉の作品を思わされるな…という印象を抱いたが、実際著者は尾崎の『金色夜叉』の影響を強く受けているということを知って、思わず納得。それはともかくとして、いかにも一昔前のお涙頂戴的なストーリーでありながらも、つい引き込まれるものがあるのに驚かされる。というより、何だかんだ言って、多くの人はこういうベタなストーリーに惹かれるのだな…と思いを新たにした次第。後、特筆すべきは登場人物の描写が非常に巧みなこと。その描写がゆえに、ベタなストーリー展開がある種の躍動感を持って読者の心を打つ。
読了日:5月22日 著者:徳冨蘆花
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/38207724

■艶笑滑稽譚 第三輯――結婚せし美しきイムペリア 他 (岩波文庫)
長いようで結構あっという間だった三巻本を読了。三巻に渡って、複数回登場する登場人物がかなりいるので、些か頭がこんがらがるが、そういう細かいことを気にせずともそれなりに楽しめる内容ではある。『千夜一夜物語』みたく寝る前に一話ずつ読んでいくというのもありだと思うがどうか?それはともかくとして、繰り返すようだが、一カトリック信者として気になるのは、本作の随所で描かれる、聖職者の淫蕩ぶり。こうした描写はある程度事実が反映されているのだろうけれど、一体それはどの程度のものなのか、誰か検証して欲しいものだが…
読了日:5月20日 著者:バルザック
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/38156906

■艶笑滑稽譚 第二輯――明日無き恋の一夜 他 (岩波文庫)
個人的にとりわけ印象に残ったのは、「明日なき恋の一夜」か?カトリック信者である著者がいかにも悪漢的なしかも新教徒の寝取られ男が、最終的には妻の不倫相手に報復するという展開には、些か虚を突かれた思いがした。この時代にここまで主人公を突き放したようなストーリーというのは、かなり希だったのではないだろうか?このあたりフランス人の国民性の現れではないかという気がするのだが…また、本作に多大な影響を与えたラブレーが語り手となって登場する「ムードンの…」も印象的。ここにこめられた風刺は更なる掘り下げが必要かも?
読了日:5月19日 著者:バルザック
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/38132991

■艶笑滑稽譚 第一輯――贖い能う罪 他 (岩波文庫 第1回)
タイトルが無駄に画数が多い感じで占められているので(笑)、読む前は若干身構えたのだけれど、いざ読み出したら、タイトルに偽りなしの、エロティックな要素が濃厚な滑稽話を集めたもので、さくさく読めた。他のレビューにもあるように、かなりお下劣で低俗な内容が格調高い文体で綴られているのが、本作の肝か?とにかく「この当時はこんなきわどい表現が許されていたのか?!」と驚かされる表現がかなり見受けられる。また、カトリック信者としては、いわゆる聖職者の御乱交場面がかなり見られるのが気になる。禁書とかにならなかったのか?
読了日:5月17日 著者:バルザック
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/38057028

■現代数学対話 (岩波新書)
以前、同じ著者の『数学入門』を読んだ時も思ったが、一般人にはわかりにくい数学用語や数式には注釈を付けて欲しかった。特に本書では現在ではあまり使われない単語が散見され、余計にそう思う。後、生徒役の哲学者と実業家が数学が大の苦手と言いながら、結構難しい問題を解いていくのには、突っ込みをいれたくなった(笑)。上記の点を除くと概ね良書と言えるか。とにかく会話体で書かれているゆえ難しいところは気にせずさくさく読めるし、あやふやな理解なりに数学の魅力に触れた気になる。それから、本書の後書きは全ての数学教師必読。
読了日:5月15日 著者:遠山啓
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/38018884

■初夏の色
収録作全てが先の震災を扱っているというわけではないが、やはり震災が大きなモチーフであることを予想させる内容。また収録作のタイトルが本書のそれではないというのも特徴的。二百頁弱という控えめなヴォリュームではあるが、どの作品も読み応えがあり、味わい深い。「父」における決して理解し合える関係になれなかった父と息子の描写は、恐らく世の大半の男性が身につまされるものを感じるのではないだろうか?後、「団欒」での楽観的な要素は皆無でもあるのにも拘わらず、震災後新たな生活をスタートさせようとする家族の姿に心打たれた。
読了日:5月13日 著者:橋本治
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/37982278

■無敵の一般教養
自分にとっては門外漢な領域でも、意外な程興味深く読めた。まさにタイトルに相応しい内容と言うべきか?またどんな領域でも、鋭い質問やコメントを投げかける島田雅彦の知性と知識に感服。最後の講義でいみじくも人文学系の農学という言葉が出てきたが、こうした学際的な対話を通して、何かと等閑視されがちな文学や哲学の可能性が新たに見えてくるのかもしれない。それはともかくとして、十年以上前に出た本書を読んでいると、本書で危ぶまれていたメディアの劣化が今日一層その傾向が顕著になっているということに改めて暗澹とした気持ちになる。
読了日:5月12日 著者:島田雅彦
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/37950277

■島田雅彦芥川賞落選作全集 下 (河出文庫)
作品としての出来はともかくとして、上巻以上に以前文庫で読んだヴァージョンとの違いに納得いかなかった。しかも巻末にはそれらの文庫が底本となっていると明記されているのである。これは納得いかない…恐らくこちらがオリジナルなのだろうけれど、何となし肩透かしを食らった感が否めない…特に「未確認尾行物体」はエイズを移された主人公笹川が宗教的回帰をするのが最大の肝だったはずなのに…後、「僕は模造人間」でも終わりのほうで主人公亜久間一人が聖書を読破して到る認識がすごく印象的だったのに、そこがカット。残念である…
読了日:5月10日 著者:島田雅彦
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/37894878

■武蔵野 (1972年) (岩波文庫)
何と言っても冒頭に収録されている表題作「武蔵野」が圧倒的に良い。簡潔でリズミカルで瑞々しい文体と著者ならではの自然描写には思わず引き込まれる。できたらこういう随筆調の物をもっと読みたかったというのが正直なところ。他の短篇も著者の才気を感じさせる物が多い。本書を読んでいると、著者はもう少し長生すれば後世に残るような長編を物にするだけの才能があったのでは?と思わされる。個人的には「河霧」の主人公豊吉が、大志を抱いて上京したものの夢破れ郷里に戻り、ついには一人船出して結局戻らなかったという結末が印象的だった。
読了日:5月10日 著者:国木田独歩
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/37885004

■島田雅彦芥川賞落選作全集 上 (河出文庫)
芥川賞落選云々はともかくとして、初期の傑作が纏めて読めると言うことで購入。上下巻一気に読んだ。とりあえずそのシニカルな語り口だけでなく、著者の作品には何か一貫したものがあるなということを漠然と感じた。それが何なのかは、残念ながらうまく説明できないのだけれど。それはともかくとして、『亡命旅行者〜』は以前読んだヴァージョンにあった箇所がカットされていたのが残念。恐らく本書に収録されているものがオリジナルということなのだろうけれど、その辺りの説明がなされていないのが残念。後、著者前書きと解説が良かった。
読了日:5月10日 著者:島田雅彦
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/37879122

■希望の原理 第一巻 (白水iクラシックス)
始めの五分の一程度の所まではわりに易しく読めたのだけれど、フロイトやユングなどの精神分析に話が変わると、俄然難しくなり、殆ど字面を追うのがやっとという体たらく。正直言って全体の十分の一も理解出来たかどうか…それでも簡潔で、しかも独特の熱を帯びた文章に惹かれて読み進めることに。不思議なことに難解な書物を読む際に感じる苦痛が、本書にはさほど感じない。やはりこの書物には僕と何か呼応するものがあるということだろうか?さしあたり月一冊ペースで読み進めていこうかと考えている。もしかすると一生の付き合いになるかも…?
読了日:5月8日 著者:エルンストブロッホ
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/37834220

■日本精神史研究 (岩波文庫)
解説にもあるように、問題はあるが傑作、あるいは今日でも読む価値がある一冊だと思う。ただ、かなり専門性の高い論文が収められているのにも拘わらず、注釈が殆ど無いというのは非常に不親切。今後改訂することがあったら、ぜひその点を何とかして欲しい。特に『源氏物語』のテキスト・クリティークの問題など、その後の研究の成果を踏まえた注釈が是非とも必要ではないか?個人的にはやはり本書の中でも一番大部を占める「沙門道元」がとりわけ興味深く読めた。多くの宗教が無力化している今だからこそ、改めて読み返されるべきだと思う。
読了日:5月2日 著者:和辻哲郎
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/37657482


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