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2013年09月21日03:21

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誠実に向き合った末の混沌 (#389)

side A
1. Bumblebee / くるり
2. Heaven's Pinhole / 山中さわお
3. Baiya / Delphic
4. Glory Days / くるり
5. Young and Lovely (live) / Blur

side B
1. Song 2 (live) / Blur
2. Tin Angel / Bob Dylan
3. Car on a Hill / Joni Mitchell
4. Late Night / Foals

bonus
1. End of a Century (live) / Blur
2. Tracy Jacks (live) / Blur
3. Greatwall / ねごと
4. 沈丁花 / くるり
5. Advert (live) / Blur
6. China Dress / くるり

くるりの「坩堝の電圧(るつぼのぼるつ)」については、入手するのがだいぶ遅れてしまい、それからさらに長い日数が経ってようやく紹介することになった次第ですが、
このアルバムについて書こうとするとどうしても長い話になってしまう、という危惧はあり、
それゆえこのディスク・レベル3の477枚めを使ってウォークに出ることすらずいぶん躊躇していた経緯があります。本末転倒の極み。

入手まで時間が経ってしまった背景には、正直、このアルバムがもうひとつ「世間の話題をさらう!」といったレベルには遠く達していない(ように思われる)ことも関係しているかも知れません。
そしてそれは、(またしても)僕を悲しくさせる。

震災そして原発事故以降、それをテーマに、あるいは向き合って作られた音楽作品がどれほどあるのかは把握できませんが、
このアルバムほど徹底して向き合ったものはそう多くはないでしょう。
そしてそれゆえ、大メディアおよびネットカルチャー上で半ば意図的に無視されている、そんな疑いの色は濃いものがあります。

旧来の彼らのファンを含め、リスナーを混乱させてしまっているかも知れないのが、音楽にも言葉にも一貫性がないこと。「いろんなタイプの曲がある」なんてレベルじゃなく、1曲の中でも誠実さとシニシズムが無造作に隣り合っているような印象がある。まさに混沌。
おそらくそれは、意図して表現されたものではないでしょうか。

じっさい僕たちは、あれ以後、人間としての生き方をどうしたらいいのかわからない、そんな混沌状況の中に立っているのだと思う。
特に、多くの人に伝えるためには電気というエネルギーに頼らなければならないロックミュージシャンという存在は、そのことに誰よりも自覚的にならざるを得ない。
半ば投げやりのようでもある言葉が、ひとつのビート、ひとつのパターンを繰り返す音楽の中でなんだか力強いメッセージのように聴こえてくるアンセム的ナンバーGlory Days。
どこかで聞き覚えのあるコード進行に乗り、曲の終盤にはくるりの過去の名曲たちがラジオかメガホーンを通したような声で聴こえてくるところは、
「これがくるりにおけるAll You Need Is Loveだ。」と思わせるものがあります。

そんな曲たちの中で、際立ったピュアさを示しているのが「沈丁花」。
こういう日本的フォーク曲を、僕がプレイリストに選ぶことはあまりないのですが、
この曲の言葉ははらわたに沁みます。

このアルバム制作にあたりくるりはメンバーを2人追加、4人編成となったのですが、
その一人が女性トランぺッター、ファンファン。彼女は中国人です。
どういう経緯で彼女が参加することになったのかについては情報に接していないのですが、
僕の知る限りでは、これは歴史上最も「批評的」あるいは「それ自体が表現である」メンバー人事なのではないでしょうか!

その彼女が歌っているのがChina Dress。美しすぎてとても無視できない、そんな歌です。
ちなみに彼女はトランぺッターとしての腕も大変なものです。もちろん、ジャズ・ソウル寄りではないロックバンドの音にたった1本だけ加わるトランペットというのが「イメージしにくい」ものであることに変わりはなく、その意味でも彼女はこのアルバムの「混沌」におおいに貢献しています。

一聴しただけでもあの「ホワイト・アルバム」によく似た構造・感触を持ったアルバムということはすぐに解りました。あとは、
歴史の風雪の中で評価と名声をみるみる上げていった「ホワイト・アルバム」、
それと同じようなことに、なるのでしょうか?
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