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2013年08月04日23:18

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七月の読書記録

先月は哲学思想関係と三島由紀夫の著作が多めだったのが際立っていたかな…?

2013年7月の読書メーター
読んだ本の数:16冊
読んだページ数:5342ページ
ナイス数:66ナイス
http://book.akahoshitakuya.com/u/4147/matome?invite_id=4147

■獣の戯れ (新潮文庫)
解説に「古典悲劇」という言葉が出ているが、この作品は小説という形をとった戯曲ではないか?という気がふとした。これまで読んできた著者の他の作品以上に、登場人物が著者のいわば駒としての役割を果たしており、著者の観念の中で作り上げられた世界で操られているという印象を強く受けたのである。実際に調べたわけではないが、登場人物の心理はほぼ会話文の中で出てきており、独白や心理描写といった箇所は見受けられなかったように思う。また、作品中で幸二と優子を操っているともいえる逸平の存在が何とも不気味なのも印象的だった。
読了日:7月29日 著者:三島 由紀夫
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/30689338

■永すぎた春 (新潮文庫)
何となしシニカルな内容を想像していたのだけれど、都会版『青い山脈』と言いたくなる程牧歌的だったのにちょっとびっくり。ただ、解説にもあるように、牧歌的では終わらない細かい仕掛けやシニカルな視点が施されているところに著者の真骨頂があるとも言える。例えばヒロイン百子の兄で、作家志望であるにも拘わらず、人間観察の才に欠けているとされる東一郎が、最後になって意外にも機知が潜んでいたのでは?と示唆されているところなどなかなか心憎い。また宝部夫人に対応する木田家の人間が東一郎というのもヒネリがきいている。
読了日:7月27日 著者:三島 由紀夫
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/30658959

■内田さんに聞いてみた 「正しいオヤジ」になる方法
例によって、その大方はすでに読んだ内田氏の著作と重複しているのだけれど、それでもやっぱり考えさせられてしまう。特に「ムム!」と思ったのは、対談者木村正雄が紹介した、小泉元首相が、彼の構造改革に肯定的なIQの低い層を氏のキャラクターを指示する層と分析したというエピソード。そして、現在もこの層をターゲットにして政治戦略やテレビ番組作りが行われているというのは、昨今の世相を鑑みるにさもありなんという気にさせられる。そして首のあたりまで親父世代にどっぷり浸かってしまった者には、本書が示唆するものは大きい。
読了日:7月26日 著者:内田 樹,木村 政雄
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/30622017

■吉本隆明が語る親鸞
収められた五回の講演の内容に重複する箇所は少なくないのだけれど、それが余計に吉本の親鸞に対する思いが感じられる気がする。「弥陀の誓いをいっぺんでも唱えたらよい」という親鸞の教えは、当時にとっても、そして現在においても非常にラジカルなものだが、その教えをあまりに皮相的に捉えた人達があまりに多いところに、現在の仏教界が抱えた問題の多くが潜んでいるのでは?という気にもさせられた。そして何より考えさせられたのが、善悪の問題。僕が信仰するカトリックとはいわば真逆であるが、だからこそ踏みとどまる必要性を感じた。
読了日:7月25日 著者:吉本隆明
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/30605102

■哲学講義〈1〉―認識〈1〉 (ちくま学芸文庫)
フランスの高校生はこんな難解な物を読まされるんだ…ということに改めて驚かされる。翻訳の問題もあるから、ネイティブが原書を読むときに感じる難解さと同列に語れるものでもないだろうけれど、それでもやはり日本との知的レベルのギャップを痛感させられる。それなりに哲学的素養がある者でも、本書を読了するのはかなりしんどかった。特に心理学の理論や用語が頻出するあたりは正直苦痛。一見して平明な文章なのだけれど、その言わんとすることを理解するために今一歩踏みとどまって理解に努めるということを幾度となく強いられた。
読了日:7月24日 著者:ポール フルキエ
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/30578232

■銀河鉄道の彼方に
個人的には著者の作品で久々の当たりというのが第一印象。直接には触れていないけれど、作品のそこかしこに例の震災と手塚治虫の影響が見え隠れしているのも印象的。特に作品全体に漂う終末観にその影響が濃く反映されていたと思う。個人的に一番印象に残ったのは、「『宇宙でいちばん孤独な男』の手記。広大な宇宙をただひたすら一人ぼっちで突き進むという気の遠くなるようなストーリーは、それこそ未来を舞台にした『火の鳥』のそれを思わせるが、その手記ににじみ出る孤独感にはなぜかある種の憧憬の覚える。こういうのもありか、みたいな
読了日:7月22日 著者:高橋 源一郎
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/30528669

■奇跡―ジミー・ペイジ自伝
おおむね楽しんで読めた。インタビュアーがギター雑誌編集長ということで、楽器関係に関してやや専門的な記述が見られるのも興味深かった。ただ、ややペイジ礼賛に終始する所が気にかかる。特に初期に比べるとギターの腕が落ちているという意見が一般的であることについて、全く触れられていないのはどうかと思う。また、世間的には駄作と言われている『ロサンジェルス』サントラについても高評価を下しているというのも気にかかる。それはともかくとして、特に六十年代の回想は、イギリスロック黎明期の息づかいが聞こえるようで、面白かった。
読了日:7月20日 著者:ブラッド トリンスキー
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/30482950

■道徳の系譜学 (光文社古典新訳文庫)
相性が悪いのか、こちらの読み方が悪いのか、それとも頭が悪いのか…とにかく内容に入り込めない、つい文字面をなぞっているだけの読書に堕してしまう。従来の哲学やキリスト教や価値観に対して否を唱えているということは、ある程度分かるのだけれど、なぜかそれ以上の読み込みを拒否されているような感覚を覚えてしまう。よく分からないながらも、どこか惹かれる書物という物もあるが、少なくとも僕にとってニーチェの著作はそのようなものではないらしい…多くの哲学者に与えてきたという刺激が僕にはいまだピンとこない…
読了日:7月16日 著者:フリードリヒ ニーチェ
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/30391384

■吉本隆明がぼくたちに遺したもの
以前から吉本隆明が「反反原発」の立場を表明しているということに納得がいかなかったが、本書を読んで、納得はできなかったが、ある程度理解はできた気がする。そして、本書の著者高橋、加藤両氏を初めとする所謂団塊世代にとって吉本がどれだけ大きな存在であったかということを改めて知らされた次第。世間で是とされている物に対して、あえてしかも断固として否を唱えるという吉本の姿勢は、時として愚直に映るのかも知れないが、しかし、そこにはある種の凛とした清々しさが感じられ、そこがファン心理をくすぐるのに違いない。
読了日:7月14日 著者:加藤 典洋,高橋 源一郎
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/30325555

■鏡子の家 (1964年) (新潮文庫)
タイトルにある鏡子が主人公かと思うかもしれないが、彼女をとりまく四人の青年が主人公。彼女は狂言回しでさえなく、四人の青年の存在によってことその存在が顕わになるいわばゼロ記号的な役割を示しているのではないか?という気がした。それから、冒頭部分を読んでいて、四人の青年の中で最も存在が地味で、出番も比較的少ない夏雄が、実は終盤において重要な役割を演じるのではないか?という予想を抱いたのだけれど、その予想がほぼ当たって個人的に嬉しかった。特に鏡子の分身とも言える娘真砂子と夏雄との関係にそのことが読み取れる。
読了日:7月12日 著者:三島 由紀夫
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/30285099

■ニーチェ・セレクション (平凡社ライブラリー)
「善悪」、「ツアラ」に続いて三作品目のニーチェ。かねてから興味のある哲学者だったのだけれど、このアンソロジーを読んでも「何だかな…」という思いを拭いきれない。確かに興味深い言葉に出くわすことも少なくないのだが、ただ単に常識に対して揚げ足取りをしているだけじゃないの?とつい勘ぐりたくなるところも大きい。これは自分がクリスチャンであるということにも起因しているのかもしれないが。後、解説に「ニーチェを読むと元気が出る」とあるのも正直言って解せない。これは僕の理解力の問題だろうか?とりあえずまだ付き合うつもり。
読了日:7月9日 著者:フリードリヒ・ヴィルヘルム ニーチェ
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/30219867

■パイドロス (岩波文庫)
途中まではまさに劇的な対話の応酬でさくさく読めたのだけれど、シモニデスの詩の解釈を巡る議論あたりから、かなり混乱させられることに。解説によると、このあたりはかなり意図的なもののようで思わず納得させられた次第。それはともかくとして、ここで繰り広げられる議論は、多少のあてこすりや皮肉はあるだろうが、基本的に相手に対する敬意を根底にしたもので、昨今の相手に対する敬意を欠いた揚げ足の取り合いによる政治討論を繰り広げる人達にその態度を見習って貰いたいと深く思わされた。またいずれじっっくり読み返したいと思う。
読了日:7月7日 著者:プラトン
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/30165994

■緋文字 (光文社古典新訳文庫)
もっと陰惨な物を想像したのだけれど、相当に違っていた。何より緋文字というのはてっきり肌に直接圧された一生拭えないものかと思いきや、実は簡単に取り外しができるものだと知って、若干拍子抜けした。そして何より印象的だったのは、ただ耐えるだけの女と思われたヘスターが、実は相当のヴァイタリティの持ち主であったということ。とりわけ牧師との再会でそれまで秘してきた自分の姿を顕わにするシーンの描写の鮮烈さにはちょっとした高揚感を覚えた程。そして、それと同じくらいに強烈な印象を残すのが二人の娘パールの存在である。
読了日:7月7日 著者:ホーソーン
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/30155301

■「三島由紀夫」とはなにものだったのか
序文の三島邸にあるアポロ像がチャチだったというエピソードが何ともおかしく、そしてさもありなんと思われた。見ようによれば薄っぺらに思えるような自己演出に血道をあげる三島の本質を示唆するものに思われたのである。僕自身の拙い三島像を殊更に読み込もうとしたためか、本書ではほぼ終始一貫して、三島の「なんだかな…」観について言及していたように思えてならない。それから、この手の本を書く際に、普通は巷に溢れる三島論を多少なりとも参考文献として挙げるのが常套なのだが、著者がそういうことを殆どせずに書き上げたのはさすが。
読了日:7月5日 著者:橋本 治
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/30120958

■マルクスに誘われて―みずみずしい思想を追う
マルクスとの関わりを軸にした自伝的エッセイ。僕もそれなりにマルクスへの興味を持っていたということで、興味深く読めた。また、著者の同じく根無し草的メンタリティを抱えているという点でもかなりシンパシーを抱いた次第。しかし、そう言うわりには、学会関係のネットワークで何かと恩恵を受けているようだけれど…それにしても、本書が出てさらに年月を経た昨今、著者が憂えたアカデミズムを巡る状況はまずます混迷を極めていることを思うと、著者の若い頃培ってきた学問や当時の状況や空気がますます貴重なものに思えてくる。
読了日:7月3日 著者:的場 昭弘
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/30060021

■美徳のよろめき (新潮文庫)
個人的には今一感が否めない。何より主人公節子の不倫相手土屋のカラーが希薄で、節子が彼のどこにあんなに惹かれているのか?がよく分からないというのが大きいと思う。また、それと対称的と言っていいくらい夫倉越一郎もひたすら退屈に描かれているのも何かの象徴だろうか?それから、解説に三島と谷崎が非常によく似ているというのが、正直解せない。確かに似ているところはあるのだろうけれど、むしろ違いの方が大きいように思う。何より谷崎は三島と違って変に観念を弄ぶようなところがなく、もっと小説本来の面白さを追求していると思う。
読了日:7月2日 著者:三島 由紀夫
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/30034844


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