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2012年03月09日10:25

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爆壊

「はじめてのクソゲー」
 著者 麻宮楓
 イラスト ネムネム
 電撃文庫
http://mixi.jp/view_item.pl?id=1557605  


 ゲーム系ライトノベルの方向で進む。

 ゲームは無難に売れ筋ばかりをプレイする少年が主人公。
 目当てのゲームが売り切れていたため、普段は買わない「聞いたことも無いようなゲーム」を買ってしまう。
 それがあまりにもひどいバグだらけのゲームだったので、自分のブログで酷評したら、一人だけその酷評への反論めいたものが寄せられる。
 ・・・まぁこんなタイトルなので、初めてクソゲーの攻略に手を染める物語に発展する。
 その過程で知り合った女の子と親密になりながら。

 この作品の、善きにしろ悪しきにしろ「肝」となるのが小説内ゲームである。
 クソゲーにもいろいろあり、大体この手の企画に登場するのは「バカゲー」であることが多い。
 「バカゲー」は厳密には「クソゲー」とは別物で、ある特殊な視点から妙な方向性に偏ったバランスになっているもので、普通の感覚でプレイすると意味が解らず、人によっては「クソゲー」のレッテルを貼りたくなる。
 ただ、この手のゲームの場合、偏った情熱でしっかり作られているため、その意図を汲んで偏った情熱でプレイすれば、ちゃんとクリアでき、大衆向けのお手軽ゲームをクリアした以上の達成感を味わえることが多い。
 ・・・しかし、この小説に登場するのは「バグゲー」である。
 「バグ」があるゲームは、意図されているわけではないので、どんなに頑張っても決して報われない。
 「バグ」なのでクリアできる保証もない。
 小説なので大げさに書いているから・・・というのもあるが、この作品に登場するゲームのバグは、家庭用ゲームでは有りえないレベル。
 家庭用のゲームの場合、あまりに酷すぎるゲームが発売されないように、ハードメーカーが一応チェックするので、ここまでひどいバグが残ったものが発売されることはまずないし、万一このチェックを抜けてしまった致命的バグが発売後に発見されたら回収されたり救済措置が取られたりするはずである。
 ゲームを知っていると楽しく読めるタイプの小説であるが、ゲームを知っているとしらけるタイプの小説でもある。
 落ちにも反論できるし。
 ・・・題材が「バグゲー」ではなく「バカゲー」だったら傑作になっていたかもしれない残念な小説。
 実在するバグも少なからずあるので、しっかりした取材をしたか体験したかはしているんだろうとは思われるけど。

 ・・・と、このような感想を持たれることを予測したらしい著者が冒頭に予防線を張っている。
 この小説に登場するようなゲームは、かつて作者が実際に体験した経験を活かしている・・・と。
 例えばハードメーカーチェックによりセリフにNGが出たため、意味不明なセリフに置き換えられたゲームや、部分的に致命的なバグの残っていたゲームなどに出会った経験が思い出の中で増幅されて、それを小説にするにあたってさらに大袈裟にしたから、こんなになっちゃったんじゃないかと予想。

 バグの多いゲームを攻略する場合、攻略してできないことはないこともないけど、小説のような手段で攻略すると、まずクリアできないはずである。
 クソゲーも嫌いな方じゃないので、この小説は非常にもったいなく感じる。



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