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2010年02月25日23:59

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【アイマス】SS あるプロデューサーの1日(作品タイトル未)

※千早誕生日記念SS
 タイトル未定
 あとがきは追記します





「マズイ、マズイぞ……どうする? どうするんだ俺」

 2月24日22:59 男は自分の失態にやっと気がついた。
 忘れてた、なんで忘れてた? 一週間前はちゃんと覚えてたはずだ――なんだかんだで焦らされたけれど、バレンタインのチョコもらって、クールに振舞いつつも心の中で「イヤッホゥゥゥゥ」となっていた次の日には、誕生日プレゼントをどうしようかと頭をひねっていた。
 その頃からちょうど立て続けに各種打ち合わせに忙殺されてたのか。頭フル回転で文章いっぱい書いてたしなーあーあー(遠い目。
 ああ、思えば、去年はいろいろがんばったなぁ。……待て待て、危うく回想しながら寝落ちでドタバタなんてお約束フラグを立てそうになったぜ。ふぅ。今は過去を振り返ってる場合ではない。今を考えよう。あと1時間はある。でも、今の俺に何ができる?

「そうだ、何かプレゼントをッ」
 ……勇んで立ち上がろうとしてすぐ、手が止まった。この時間にやってる店なんてたかがしれてる。第一、何をプレゼントしたらいいんだ? プレゼントなんて俺のガラじゃない…………
 辺りを見渡す。何かアイデアになるものはないか。本棚、鏡、タンス、作業机、机の上に置かれた携帯。
「メール……は味気ないか」
 
「料理なん……て、いやいや、俺の手料理なんか食って体調崩しても問題だ。アイドルの体調管理も仕事だからな。てか料理はホワイトデー用のネタに(以下不要」
「歌でも贈るか! ……千早に歌を贈るって笑い話か?」
 なにか俺だから出来るものをプレゼントしたい。でもなんだ? 
「仕事をもっていく……は、当たり前か」
「手先が器用なわけでもないし、何か作るのが得意なわけでもないし……」
 男はあからさまに堂々巡りに陥っている。
「待てよ、こういうのは形じゃなくて気持ちだ。気持ちがこもっていれば喜んでくれるはず。俺が気持ちをこめられるもの――」
 ふと思いついたのは「手紙」……いまさら…いや、ここはあえて古典的な手法に打って出るのも悪くないかもしれない。電子メールが普及した昨今の手紙離れにあいて逆行しての情緒をとるのはアリかもしれない。よし、そうと決まれば、便箋なんかあったかな?
 手紙なんて書くことない男が、引き出しという引き出しをひっくり返すこと5分。便箋が見つかったのは奇跡の仕業かもしれない。
「さて書くぞー」
 腕まくりをして自分に気合いを入れる。
 えーと、最初の書き出しは……前略、じゃ寂しいし、拝啓? 謹啓? なんだっけ?
 とりあえず次だ。次はえーっと、時候のあいさつだったかな。「余寒の候、益々ご健勝のことと存じ上げます。」……堅苦しすぎないか? そもそも、毎日のように会っているわけだし、ぶっちゃけどうよ。
 それからも書く手が一向に進まない…………

「もしかして、俺はとんでもない選択をしてしまったのか!?」

 男は、背景にコミカルタッチで雷でも描写されそうな衝撃を覚えた。
 まどろっこしいことはいいや、とにかく書こう。想いが伝わればいいんだ。
 時計の針が立てるカチカチと明瞭な音をBGMに格闘すること幾星霜…なんて大げさな時間は経っていないが。
「よし、なんとか書けたぞ…………ハッ! 今何時だ?」
 01:08 とっくに25日になっていた。
「手紙と決めたら、0秒アタックをキメるようなことでもない。一時は徹夜を覚悟したが、我ながらなんとかなったもんだな」
 自分を誇らしげに

 よし、寝よう。明日も朝は早い。電気を消して敷きっぱなしの布団に入る。
 ……あれ? そういえば明日は千早に会わないぞ。

 ※(ピンポンパンポン〜♪)解説しよう! 今週は別会社での交流研修中で、千早とは仕事一緒じゃないのです (解説終わり)

 どうしろと。俺にどうしろと。どうしろと……「ドシロウト♪」。おい、Do-Daiがなぜ頭の中で再生されたし。
 落ち着け、ん? そうだよ。手紙なんだから、代わりに渡してもらうなり千早のBOXに入れておくなりすればいいじゃないか! すげえ、そこまで本能で計算してたんだな、ナイス俺(笑) そうと決まれば、事務所に寄る分、起きる時間を早くしないと。
「時計セットよし! スヌーズ機能もOK! さあ寝るか。」
 それにしても、これを読んだらなんて思うだろう。なんだかこっぱずかしくなってきたな。とにかく、寝よ寝よ……あーでも(以下ループzzz


 寝過ごさなかったのはよかった。睡眠時間とか気にしたら負けだけどな。さて本題だ――


 「 誕 生 日 プ レ ゼ ン ト は 何 に し よ う か な ! ! 」


 サイズを倍にしてゴシック体のボールドで強調したいくらいだね。だーーーー!! なんだこの文は。中学二年生のラブレターかっての。ダメだダメだ、こんなの渡したら黒歴史決定。
「千早さん、これが私の愛だー!」なんてレヴェルを軽く一蹴できるくらいの黒歴史だorz  ※注:(心の声)ゼングラシアは名作だよ!!
 俺もまだ青い若造ってことか。リングコーナーで真っ白に燃え尽きそうだぜ。

 いやいや、今はそんなことどーでもいい。帰って来い俺……………………
「よし、仕事に行こう!」
 声のトーンが一段上がったのは説明するまでもないか。


(※ここからは中略ってことでプロット程度で)

 ・移動中「まだ朝だ。今日はまだまだこれからさ」
 ・出社先はプロダクション大澤。アイドル事務所ではなく声優事務所なのだが、なぜってのは別のお話。昨日までは売り出し前の新人さんたちに付き、今日からは担当が変わる。
「今日からは私とこの子が担当させていただきます。弊社で大きく売り出し中でして、ぜひそちらのフィールドの手腕を勉強させていただけたらと思います。ほら、挨拶して」
「あ、はいっ は、花澤香菜です、よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
 確か最近話題になっている子だ。中毒性のある声質で人気急上昇中の声優さん。意外と若いんだな。……「トゥルタラ♪」待て待て、勝手に脳内再生されるな、仕事に集中しろ。
 ・午前中はアニメのアフレコ
 ・午後は歌唱レッスン。歌の助言。
 ・その後せっかくなので一緒に食事。仕事への思いを聴き出す。経験談を話してあげる。香菜ちゃんも実は今日が誕生日、私からのお話だけでありがたいと言ってくれてもプレゼントとしてアレなので、ご飯おごり&今度千早をあわせてあげる約束をする。

 ・千早sideは、朝から事務所に大量んもプレゼントfromファン、レコーディングでもスタッフさんたちに祝われる、夜は事務所でささやかなパーティー。etcと、何十人何百人にも祝われる。

(※中略終わり)


 「明日もよろしくっ」
 香菜ちゃんとマネージャーさんを駅で見送って、大きく一伸びをする。今日は1日濃かったな。ずっとバタバタしてたし、いい勉強になったな。さて、今何時だ……
 時計を見る……

………………

…………

……




……………………ふぅ、落ち着け。
 「ま だ 今 日 は 終 わ っ て い な い !」
 腕時計の短針は10に指しかかろうとしていた。
 あれ? さっきまでドリンクバーで結構飲んでたと思うのに、なんで唇が渇くんだろうなぁ。ゴホンゴホン、「あー、あー」のども渇いてきたぞ。
 どうする! どーするッ!!
 俺は今まで何をしてたんだ? いや、今日のことは良い日だった。新しい縁もできたし、俺も成長できたし。今までの人生、何をしてきたんだ? 俺は千早のプロデューサーだ。確かに今日は違うけど、そういう問題じゃない。ここが正念場か? お、そうだ、確か事務所で集まれる人だけで誕生日パーティーをしているはずだ。
 ……ここからだと着いても日付ぎりぎりか? そんな時間までみんな残ってるわけない……とりあえず行こう。移動しながら考えよう。
 電車に飛び乗り、その間も誕生祝いをどうするかずっと悩んでいた。ダメだ、全然いいアイデアが思い浮かばない。小鳥さんにメールで確認したら、まだパーティーはやっているし、千早はいるという。行く価値はある。
 ふと、全身が横にひっぱられる感覚に襲われ、それに気づいたときには耳をつんざく金属の摩擦音が車両内に響いた。
「非常停止ボタンが押されたため緊急停止しました。ただいま安全確認を行っております。今しばらくお待ちください」
 おい、マジか、なんでこんなときに! 時計を見る。刻一刻と刻まれる時。
 幸いにもすぐに復旧し、けど、事務所の最寄り駅に着いたのは23:50。まずい、仕方ない、とりあえず電話だ。おめでとうだけでも直接声で伝えないと。
 呼び出し音は鳴る…………つながらない。なん……だと……ッ!
 こうなったらメールだけでも! 事務所へ歩きながら、右手で即行メールを打つ、一行でもいいや。左手の腕時計を見ると59分。焦るが、即送信。
 送信完了の表示を見て、時計がまだ23:59であることを確認し、体から大きく息がもれる。

 事務所に着いてはみたものの、案の定みんな解散して、小鳥さんが最後の後片付けを終えたところだった。
 小鳥さんは俺が向かっていることを千早に伝えてくれたようだが、明日もあるし帰れなくなるといけないからと、千早が提案してみんな帰ったのだという。千早だけは残ろうとしたけれどあまりに遅くなって
 正しい判断だった、それが正しい、自分が悪いんだ、必死でそう思い込もうとした。うなだれている俺に、小鳥さんはコーヒーを淹れてくれると気を遣ってくれた。
 ズボンのポケットに振動を感じる。バイブレーション、メールの着信だ。送り主は……「千早」!
 あわてて携帯を落としそうになるが、携帯を宙に踊らせながらも、零コンマいくつな早さでメールを開いた。


お仕事おつかれさまです
電話に出れなくてすみません
メール、ありがとうございました
プロデューサーから何もなくて、その……
でも、なんですかあのメール? 私を笑い死にさせる気ですか? 話は今度じっくり聴かせていただきますからね。
それでは、おやすみなさい


 そう綴られた文面を見て、なぜか安堵を覚えた。一応、伝えられはしたかあ。これじゃ俺が納得いかん、お祝いは後日何かしよう。1回なんでも従うとかでいっか。
 ……ん? でもおかしいな? メールって、何の飾りもない一行メールだぞ? リアクションに心当たりの思いつかない俺は、自分の送ったメールを確認してみた。



   「千早ん誕生日おめでとう」

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