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2009年12月03日07:47

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【読書】 イナンナ

「イナンナ」 って漫画がありまして。
ごく最近、たまたま立ち読みして、ちょっと衝撃でした。

イナンナ 上弦の巻 (モーニングKCDX)
http://mixi.jp/view_item.pl?id=1209414

漫画、、、じゃないね、これ。
絵本?に近いような。

コマ割はないのです。
ページ全体にわらわらと女性の姿が描かれていて、詩みたいな言葉がちりばめられている。

ベリーダンスをテーマに描かれているようなのですが、そう言われなければよく分からない。
というか説明的なものは何もない。

思わずAmazonで買ってしまいました。

なんかねえ、不思議なの。
大したことないって言えばその通り。
色の付いている訳でもない、線だけで描かれた女性の絵。
言葉も、豊穣の女神がなんだとか、よく分からない。
ストーリーなんてないし、意味わかんない。

でも、なーんか、訴えかけるというか。
訴えかけないな。

誘う、だ。
そう、誘われる感じ。

機会があれば見てみてください。
モーニングに連載中です。
ペラペラッとめくればすぐに分かると思います。



こうさ、自分が思ったことを表現する、ってのは、難しくはあるけれど、程度の差はあっても誰にでも可能だと思うのです。
何かしら思うことがあれば、それを、言葉ででも、あるいは絵でも音楽でも映画でも、表現するってことはできると思う。

難しいのは、他人に自分の狙うイメージを持たせるって事ですよ。

例えばさ、文を書きますよ。
で、それを読んだ人が、何かを思う、とは思います。感じる。
でもそれは、必ずしも書いた人の感じていることではない。
書いた人がどんなに言葉を尽くして、「私はこう感じたんだ」 って書いても、読む人がそっくり同じように感じるってことはないと思うのです。

逆に、例えば鳥の絵を描いて、鳥を感じてもらいたいと思う。
でも、やっぱりそれは描いた人の思う鳥ではなくて、見る人の中にある鳥を呼び覚ますだけのものになる。

なんていうのかしら、人はさ、自分の中にしか居ないから。
外のものを取り込んで、自分の中に消化して、それを外に投影する、といいましょうか。

ぼくが、「青い鳥を見たよ」 と言ったときに、相手が思う青い鳥は、僕が見た青い鳥とは違うわけですよ。


でも。
詩は違います。
僕の思う詩ってのはそうです。
あ、以下は僕の勝手な思い込みですからね。

詩ってのは、相手、読み手の中に呼び覚ましたいイメージがはじめにあるのです。
で、そのための手段として言葉がある。
だから、「青い鳥」 を相手に見せたいと思っても、直接 「青い鳥」 って言葉は使わないのです。それだと自分の思う鳥を見せられないから。
なんというか、もっと直接に、じかに相手の中に入っていって、青い鳥のイメージを呼び起こす、そのために、言葉を使う。

まあ別に青い鳥を他人に見せる必要もないので、実際には、ある種の感情です。
じゃあ例としてこれを。

<blockquote>【大漁:金子みすヾ】

  朝やけ小やけだ
  大漁だ。
  大羽いわしの
  大漁だ。

  はまはまつりの
  ようだけど
  海のなかでは
  何万の
  いわしのとむらい
  するだろう。</blockquote>

なんといいましょうか。
書いてある言葉の意味を読んでもしょうがないのです。
大漁で、浜では大喜びだけど、海の中では鰯の葬式をしてるだろうな、
って、まあそういう意味ですけど、そうじゃない。

意味じゃなくて、それを読んだ時に起こる感情、その感情を呼び起こすために、書いている。
題材はなんだっていいのです。

感情を起こすのに、別にそういう手段をとらなくても、可能は可能です。
言葉できちんと説明して、これこれこういう状況で、こう感じました、って言われれば、ああそうかって思う。
それなのに、なんで詩を書くかというと、もっと直接、感情を届けたいから。
言葉で説明すると、いったん頭を通ってそれが理解されます。
頭を通って感じられた感情は、それは直接の感情じゃないのです。
泣いてる人を見て、相手の状況を思いやって、泣きたい気持ちを理解するってのと、自分が泣いている時とはぜんぜん違いますね。まあそういうことです。

詩ってのは、言葉を使うけど、頭を迂回して、直接感情を呼び起こす、そういう手段なのだと思います。




この 「イナンナ」 も、そういう感じがします。
描いてある絵や言葉、それ自体に意味があるわけじゃなくて。
それを見て、何か感じる、その 「感じ」 を、感じて欲しくて、描いているんだろうなあ、と思ったのでした。

それはね、たぶんものすごく難しいことかと思いますよ。
それは、ただ自分が感じることを描けばいいってものではない。
何を見たときに、何を聞いたときに、何を感じるか。それを細かく繊細に感じ取らなくてはできません。青い鳥って聞いたときに、頭の中には青い鳥の絵が浮かぶだけじゃないのです。



で、ぼくもね、mixiにいつも思ったことを好きなように書いているわけですけれど、それは違うなと。
自分が思ったことをただ書くんじゃなくて、読み手に感じさせたいものを、感じさせることができるように、書こう、と思いました。
届けこの思い、ってわけで、それを今年の目標にしたいと思います。ええ今年のです。

以上です。
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