ま、大したことじゃないのですが。
高校生のときに塾に通うことになりました。なんでだか、放課後に都心まで電車でわざわざ行って、夜に帰ってくるという偉そうな塾でした。なんでそんなとこに行ったのか、よく分かりませんが。
その塾は、一日一科目だったのです。確か。
その中で、古文の一日目、生徒はうーん、50人くらいはいたでしょうか。大きな教室だったのです。つまらない授業でした。
そして次の週、行ってみたら、まだ誰も教室にいません。まあちょっと早く着いてしまったので、一番乗りなのだ、とそう思っていました。が、いつまでたっても誰も来ません。不安になって、事務室に行ってみると、確かに今日は古文の授業があるそうです。
不思議に思いながら教室に戻り、一人寂しく待っていました。
そしたら、先生が来てしまいました。
生徒は僕一人です。ありゃまーー。やってしまいました。さっさと帰ればよかった。大失敗です。
僕は古文って大の苦手だったのです。とにかく全然分からない。なので、その日にやる箇所を図書館で調べて、現代語訳を丸写しして行ったのでした。いんちき。
そしたら一対一の授業です。もう地獄です。
しょうがないからノートを出して、先生と差し向かいで訳していきました。訳すって言っても、丸写ししてきたのを読むだけです。まさか一対一になるとは思っていないから、いい加減な準備しかしていないのです。適当に下手に訳すとかさえしていない、本当に丸写し。
なので、多分相当に秀才に思われたのでしょう。実に細かいところにダメ出しをしてくるのです。訳す上での微妙な間違いを、(僕の間違いじゃないのですが) 細かく指摘してくる。
僕もはじめからノートなんて出さなければよかったのですが、そんなこといっても後の祭りです。もう先生の言う通り、ノートを直していきます。どうやってこの場を逃れたらいいのか分からない。
で、何とかその苦痛に満ちた1時間を乗り切りました。
最後に先生は 「うーん、来週も一対一かもしれんな、ちゃんと来てくれよな」 みたいな事を言いました。先生にしてみれば、そう言うしかないでしょう。
僕にしても、「はい先生」 以外に言葉はありません。
もちろん二度と行きませんでしたけど。
結局すぐに辞めてしまって、塾自体もそのうちつぶれてしまいました。
そりゃそうだよね。
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