映画『ベニスに死す』を観た。
(1971年 伊・仏 監督:ルキノ・ヴィスコンティ
出演:ダーク・ボガード シルヴァーナ・マンガーノ ビヨルン・アンデルセン)
巨匠ヴィスコンティの晩年の名作、らしい。ヴィスコンティ作品はまだ観たことがなかった。長い、退屈しそうってのがその理由。
予想通り、始まって10分程度で眠くなる。そのまま、前半をうつらうつらと寝てしまい…(笑)後半はなんとか観たものの、「何じゃこりゃ、おっちゃんが美少年にストーカーする話やん」っていう薄っぺらい感想に終わってしまう(^_^;)
でも何日か経って、耽美な映像とマーラーの音楽と、切なさ満載のラストシーンをしばし思い返していることに気づいて、もう一度観てみようという気になった。
なるほど、前半に物語全体のキーとなるシーンがあったのねー。
ははーん、ただのストーカー話ではなかったようで…(笑)
この作品は、セリフがとても少ない。主人公のグスタフ(ダーク・ボガード)は休養のために訪れたベニスで、少年タジオ(ビヨルン・アンデルセン)の美しさに衝撃を受ける。映画の中では終始、グスタフの視線がタジオを追いかけ続けるのだ。彼らは言葉を交わすことはなく、マーラーの音楽が彼の心を語るかのように効果的に鳴り響く。
ヴィスコンティは、とても完璧主義な人だったらしい。1910年代の建物や衣装、小道具に至るまで忠実に再現した。中でも、女性の衣装はとても美しくて見ていて飽きない。帽子もまた豪華だこと!でも、ずっとかぶりっぱなしでしんどくないのかな。
そして、やっぱり見逃せないのが美少年ビヨルン・アンデルセンの美しさ。池田理代子や里中満智子なんかの少女漫画の中の美少年がそのままこの世に現れた感じが何ともいえないのよねー。だけど、彼の美しさは容姿のみで、マネキンっぽい冷たさを感じる。自らも同性愛者だと公言してはばからなかったヴィスコンティの趣味かしら?
彼の美しさもそりゃー見事だけど、彼の母親役のシルヴァーナ・マンガーノの女性としての美しさも見どころだと思うのだけど…。ま、女性の私が言うのもナンですが。
「美というものは、努力によって創り出される」という信念を持って生きてきた一人の芸術家が、生まれながらにしてなんの努力もなく美を纏った少年に出逢った。どうしようもなく少年に引き寄せられつつ、どうすることもできないグスタフ。老いと、孤独と、病に冒されてゆく焦りと…。
ラストのあまりにも美しい情景と、主人公の恍惚とも哀しみともとれる心情は、とてもとても印象的だった。…同時に、暑さによってグスタフの化粧が溶けて黒い汗が流れてるのがちょっと気持ち悪かったけど…(笑)
賛否両論あるのでしょうが、とても芸術的な作品、かなー。
こうなったら、『山猫』も観てみようかしら!
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