個人的にやや不満は残るけれど、先月もそこそこ読めたかな。ここ最近、夜勤が結構大変で読書が捗らないのが、もどかしい。しかも今月は夜勤の数が少ないし…
2023年4月の読書メーター
読んだ本の数：16冊
読んだページ数：6101ページ
ナイス数：208ナイス
https://bookmeter.com/users/4147/summary/monthly/2023/4
■里見�� 小津映画原作集-彼岸花／秋日和 (中公文庫, さ55-2)
表題作は、どうしても映画と比べてしまうのは、致し方ないというところか（笑）。それはともかくとして、里見��という作家の独特の文体や、漢字の充て方、一読しただけでは、やや分かりづらい謎かけに近い含みを仕掛けるところなど、独特の魅力を改めて痛感。以前、別の作品集で読んだ「縁談窶」も、再読してみると、新たな味わいが得られるのとともに、初読の際には気づかなかった、最後の文章で示唆されるバッドエンドにちょっと寒気がした。また、巻末の里見による小津への追悼が泣かせるのと共に、二人が過ごした鎌倉にまた行きたくなった。
読了日:04月28日 著者:里見 ��
https://bookmeter.com/books/20961556
■海流のなかの島々（下） (新潮文庫)
ウーム…魅力的な作品であることに間違いは無いのだが、著者が生前、自分が望む形で世に出なかったということが色々な意味で瑕疵となった残念な作品という印象がどうしても拭えないというのが正直なところ。特に各部のつながりが見えにくく、唐突に場面と主人公の境遇が極端に変わっているのに違和感を覚えるのが、個人的に何とも残念。それぞれの部に否定し難い魅力があるだけに尚更…また、そうした欠点を補うために、もっと充実した注釈や解説が必要だと思われるのに、そこも不十分なのが、何とも…より豊富な資料に基づいた新訳が出ないかな…
読了日:04月27日 著者:ヘミングウェイ
https://bookmeter.com/books/528623
■スピノザ往復書簡集 (岩波文庫)
昔から読まねば…と思いながらも、なかなか読めなかった一冊。一応読了したものの、理解の程はあやふや。殆ど字面を追っていたという感じ。ただ、この当時にあって、相当に危険な思想をスピノザが説いていたこと、その危険性が故に、体制側から目をつけられていたのにも拘らず…というか、むしろしれ故に多くの支援者や理解者を得ていたという事実に、心温まるものを覚える。また、この当時における書簡が持つ意味の重たさを再認識。交通網が発達していない時代に交わした異国間の書簡が時代を超えて読み継がれているという事実に改めて驚愕。
読了日:04月27日 著者:
https://bookmeter.com/books/18872
■コーチング・バイブル(第4版): 人の潜在力を引き出す協働的コミュニケーション (BEST SOLUTION)
ごく最近、中間管理職に就いたため、手に取ることに。一般的に馴染みのないカタカナ英語に注釈がついていないなど、ツッコミどころは散見されたが、職場で人を育てる上で、何が大切かということは大いに学べた気がする。あまりに理想主義的に過ぎるとも思えるが、逆にこれくらいハードルを高めに設定することで、よりよい結果を生み出せることになるということか。読み進めていく過程で、実際に職場の人間の顔や現場が幾度となく脳裏をよぎったということは、かなり実践的な価値がある証拠かもしれない。以前受けたコーチングをまた受けたくなった。
読了日:04月25日 著者:ヘンリー キムジーハウス,キャレン キムジーハウス,フィル サンダール,ローラ ウィットワース
https://bookmeter.com/books/15841871
■往復書簡 限界から始まる
終始お二人による世の男達への恨み辛み罵詈雑言で埋め尽くされるのかと思いきや（もちろんそれもあるのだけれど）、それよりも、上野の鈴木に対する助言や教育的指導とも思われる発言が目に付くのに驚き。また、先に読んだ『ニッポンの〜』に比べると、鈴木の発言がかなり内省的であるのも印象的。また、一男性として耳に痛かったのが、鈴木が幾度となく繰り返す「男ってそんなもの」という発言。自分はそういう男と一線を画しているとそれなりに思っているし、そう言明したいけど、それって、女性からしたら、欺瞞にしか見えないかも…とか。
読了日:04月22日 著者:上野 千鶴子,鈴木 涼美
https://bookmeter.com/books/18196049
■海流のなかの島々（上） (新潮文庫)
ウーム…魅力的な要素もあるけれど、死後発表されたという事実だけでなく、他の著作にはない要素が目について、どう表すればいいのか迷うというのが正直なところ。これまで読んできた主な作品と訳者が違うというのも大きいのか、著者独特の簡潔で躍動感溢れる文章ではなく、どこかキレに欠けるという印象がして、若干読むのが辛かったし。本巻の山場ともいうべき、主人公の次男と巨大な魚との釣りでの格闘は、釣りをしたことのない僕でも、リアルな臨場感を覚え、殆どダレることなく読ませたのはさすが。ただ、その後の顛末には、心が痛んだけど。
読了日:04月20日 著者:アーネスト・ヘミングウェイ
https://bookmeter.com/books/470969
■スピノザ 人間の自由の哲学 (講談社現代新書)
スピノザに関する著作を読むたびに、その数奇で不明な要素があまりに多い人生と著作を巡る複雑な事情に何とも言えない思いに駆られる。とりわけ、その名を口にするのも憚られるような存在であったのにも関わらず、葬式には大勢の人が集まったというエピソードは、その思想は一部で強く忌避されるののにも関わらず、本人は人好きのする性格で、訪問者に事欠かなかったという事実を端的に象徴しているように思われる。また、リベラルで比較的言論の自由が保障されているという状況が、いかに危ういものであるかという指摘は今日ますます重たい。
読了日:04月18日 著者:吉田 量彦
https://bookmeter.com/books/19369253
■大きなハードルと小さなハードル (河出文庫)
決して共感できるわけではないのに、なぜか強い求心力を覚えて、読み返してしまう作品。思えば、近代の日本文学作品の中で最も多く読み返しているのではないか。肥大したエゴを持て余し、自分も周囲も傷つけてしまう主人公の一人英雄。恐らく「こんなはずではなかったのに」というヒリヒリとした焦燥感を抱えているはずのその姿に、どこか憎めないものを感じてしまう。英雄を主人公とした一連の作品が、作者が自死を遂げた後に、発表されたという事実を鑑みると、余計にこれらの作品に注いだ作者の思いが、リアルに伝わってくるような気がする。
読了日:04月16日 著者:佐藤 泰志
https://bookmeter.com/books/3309877
■タイタンの妖女 (ハヤカワ文庫SF)
これまでヴォネガットの作品をそれなりに読み込んできたと思っていたのだが、本書に関しては、ちょっと首を捻らざるをえない感じがある。決してつまらないというわけではない。読み応え読み所のある魅力的な作品であることは理解できる。しかし、やはり話の流れがいささか突飛過ぎて、ついていくのが難しいというのが正直なところ。ただ、この作品の読み方について、巻末で爆問の太田氏が秀逸かつ示唆的な解説を寄せているので、あえてそちらを先に読んでから、本編を読むのもありかもしれない。後、様々なパロディの要素があるので、解説が必要。
読了日:04月15日 著者:カート・ヴォネガット・ジュニア
https://bookmeter.com/books/562294
■死に方がわからない
独身、子なし、身近に頼れる親族がいない…というまさにないない尽くしのミドフィフにとって、バイブルと言っても過言ではない一冊かも。ただ、僕は著者のように、死後なるべく人に迷惑はかけたくないタイプではなく、自分の死後は野となれ山となれタイプなのだが。その実、僕だって、できることなら人に迷惑をかけずにひっそりと死にたいが、しかし、実直に自分の死と向き合い、綺麗に後片付けができるようにするのに、多大な労力と財力が必要だということが分かれば、どうしたって、死んだ後は知らないよ？とならざるをえない気がするのだが…
読了日:04月12日 著者:門賀 美央子
https://bookmeter.com/books/20014024
■未成年３ (光文社古典新訳文庫 K-Aト 1-25)
一般的には失敗作と評されがちな本作だが、こうやって読み返してみると、他の五大長編に匹敵するくらいの魅力に富んだ作品なんだな…と痛感。正直アンナとカテリーナの関係など、今一つ理解不足、読み込み不足感が否めないが、逆に「改めてまた読み返したい」という吸引力になっているのだから、恐るべし。前巻の感想でも述べたように、本作品は一読しただけでは、その面白さがなかなか理解できないとう性質が故に、読者は長い付き合いを必要とされるのかも。本作の最大の肝であるヴェルシーロフの「分身」のエピソードは特に読み込みが必要。
読了日:04月11日 著者:ドストエフスキー
https://bookmeter.com/books/20535224
■あの頃、忌野清志郎と ――ボスと私の４０年 (ちくま文庫 か-85-1)
自分の趣味や好きなことを仕事にするもんじゃないとよく言うけど、この人は自分の好きなバンドを仕事にして、そしてつかず離れずずっと、そのバンドのヴォーカリストに関わってきた。バンドの初期から低迷期、その後のブレイク、そして絶頂期を迎えやがて終焉を迎える…その一部始終を、一スタッフの口から語られるというのは、当人たちによるものとはまた違った、独特の重みとリアルさがある。ましてやもともと熱心なファンだっただけになおさら…また、著者の軽妙さと甘酸っぱさ、適度なウエットを含んだ文章が非常に魅力的で嫉妬を覚えるほど。
読了日:04月10日 著者:片岡 たまき
https://bookmeter.com/books/20762289
■カート・ヴォネガット全短篇 4 明日も明日もその明日も
全短編集もとうとう最終巻かと思うと、一抹の感慨が（？）。個人的にとりわけ味わい深かったのは、以前も読んだ「ヘルツホルムシリーズ」。このシリーズ、もっと長期的に続けてくれてもよかったと思うのだが、数作に留まったのは実に残念。このシリーズストーリーもさることながら、密かな隠し味となっているのは、主人公が率いるブラスバンド部が奏でる音楽を表す擬声語。これが作品に独特のユーモア感をもたらす実は重要な要素になっていると思う。原文と照らし合わせてみるのも妙かも？後、終盤の人口増加社会を描いた作品には複雑なものが…
読了日:04月07日 著者:カート ヴォネガット
https://bookmeter.com/books/13529290
■白い人・黄色い人 (新潮文庫)
キリスト教を信仰しているからといって、ましてや司祭職に就いているからといって、それは決して聖人君子であることを意味しない。むしろ罪深いからこその信仰なんだというごく当たり前のことに気付かされる。とりわけ、「黄色い人」のデュランの、元司祭であったことが疑わしくなる程のゲスぶりを目にすると、嫌悪感を覚えるのと共に、果たして自分に彼を糾弾する資格があるのか？という問いを自らに突きつけたくなる。本書が出て、七十年近くになるが、それから日本におけるキリスト教のあり方はどれ程変わっているのか？本書自体が大きな十字架。
読了日:04月04日 著者:遠藤 周作
https://bookmeter.com/books/546193
■未成年2 (光文社古典新訳文庫 K-Aト 1-23)
新訳にて再読…にもかかわらず、初読の際の記憶が殆ど抜け落ちている（笑）。それはともかくとして、旧訳では、今一つつかみきれなかったストーリーが、本訳ではかなりはっきりとつかめるようになったのは収穫。ただ、訳者解説にもあるようにかのヘルマン・ヘッセも初読では、内容をつかみきれなかったというエピソードを紹介しており、再読の重油性を説いているのが印象的。今の時点で更なる再読の必要性を感じているというくらいだから、本書に秘められた豊饒性はまだまだ汲み尽くすには程遠い。父と子の複雑な愛憎関係がとりわけ印象的だったか。
読了日:04月03日 著者:ドストエフスキー
https://bookmeter.com/books/19792475
■ケアする惑星
取り上げられている本に既読のものが多かったと言うことを抜きにしても、非常に興味深く、発見の多い一冊だった。いみじくも、世間がますますきな臭くなり、愛国や防国の名の下に、国民総動員体制へと傾れ込むことが懸念されている昨今。本書が提唱する、ケアの姿勢や精神、グローバリズム的世界観への警戒、マチズモ及びミソジニー的な価値観を見直す姿勢というのは、注目に値する。個人的に驚かされたのは、最終章で取り上げられたオースティンの『レイディ・スーザン』。こんなある意味破天荒な主人公を、オースティンが初期に書いていたとは…
読了日:04月02日 著者:小川 公代
https://bookmeter.com/books/20579147
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