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2022年12月01日11:17

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原発雑考第413号の転載   COP27の結果、原発回帰の大号令(2)など

原発雑考第413号の転載です。

2022・12・5
発行 田中良明
転載自由
連絡先 豊橋市富士見台二丁目12-8 E-Mail tnk24@tees.jp


COP27の結果

 各国政府が温暖化問題を話し合うCOP27が終わった。
 COP27の主要な課題は、産業革命前に較べた世界平均気温の上昇を1.5度に抑えるための温室効果ガス(GHG)の排出削減の強化と、途上国を中心にすでに生じている気候変動による損失と被害への対処だった。
前者については、世界のGHG排出は増加し続け、各国がこれまでに約束した削減目標では地球平均気温は1.5度どころか2.5度上昇することになるという専門機関の報告があったにもかかわらず、各国に削減目標を上積みさせるような合意は得られなかった。
 後者については、気候変動による損失と被害に対処するための基金の創設が合意された。ただし、具体的内容は今後の検討に委ねられたので、どれだけ実効性のあるものになるかは不明である。
 とはいえこの基金の創設は、今日に至るまでの歴史においてGHGの大部分を排出してきた先進国に温暖化の圧倒的な責任があるという先進国責任論を根拠にしている点で画期的な意味を有する。これからは気候変動による損失と被害の救済だけでなく、途上国のGHG排出削減にたいしても先進国がこれまでとは次元の異なる資金的、技術的支援を行うべきだという声が強まるだろう。途上国にはこの支援を有効かつ透明性をもって活用することが求められる。それは難事であるが、それが担保されれば、先進国はこの支援の要求を拒否することはできない。先進国に温暖化の圧倒的な責任があることはなんびとも否定できない明白な歴史的事実であるからだ。
COP27で日本に関して報道されたのは、いまでは恒例となった化石賞受賞だけだった。GHG累積排出量世界6位のGHG排出大国である日本の政府はこの会議でなにをしていたのだろう。
 COP27は必要とされたことに較べて達成されたことが少なすぎた。こんなことはこれで最後にしないと、気候変動による地球の破局は回避できない。


原発回帰の大号令(2)

 岸田内閣の原発回帰の表向きの理由は、脱炭素化と電力安定供給・エネルギー安全保障に原発の活用が不可欠だということである。その具体策が、従来から進められていた既設炉の再稼働に加えて、革新軽水炉と称される大型軽水炉(実体は海外で建設実績のある欧州加圧水型炉=EPR)の建設と既設炉の運転延長である。
 新設原発については、当初は大型軽水炉ではなく、次世代革新炉と称する一連の新型炉の建設が指向されていた。小型モジュール炉、高速炉、高温ガス炉、核融合炉である。しかしこれらの新型炉は技術が未完成だったり、高コストになることが確実だったりして、実用化には程遠いことが明らかになった。そこでやむなく革新軽水炉と称してEPRを持ち出したのである。一度はためらった大型軽水炉への回帰である。
 しかし本誌402号「脱炭素時代の原発」、405号「ウクライナ危機から考えるエネルギー安全保障」、408号「ウクライナ戦争と原発」でも指摘したとおり、脱炭素化と電力安定供給・エネルギー安全保障に原発は不可欠だという主張は、少なくとも既存の原発やEPRなどの大型軽水炉についてはまったく当たらない。そのことを踏まえたうえで、ここではEPRについて簡単に説明しておく。
 EPRの特徴の一つは、コアキャッチャー(炉心溶融が生じた際に溶融した炉心を受け止めて冷却し、格納容器外に流出しないようにする設備)の設置など、安全性が既存の原発に較べてある程度向上していることである。
 もう一つの特徴は、建設費が高くなり、それによって発電コストも高くなることである。この点についてはイギリスで建設中のヒンクリーポイントC原発の事情を本誌361号で紹介した。イギリス政府はこの原発の電気を発電開始から35年間14.5円/kWhで買い取ることになっているが、建設費増加によってさらなる負担を求められることになりそうである。ちなみに高いといわれている日本の太陽光発電の2023年の買い取り価格は、住宅用で16円/kWh、事業用で10円/kWh以下である。しかも太陽光発電の発電コストはこの先も年々下がっていく。それに較べヒンクリーポイントC原発に代表されるEPRの発電コストは高すぎ、脱温暖化社会の電源として明らかに不適である。 
 既設炉の運転期間については、現行法規で最長40年、特別の理由がある場合には規制委員会の安全審査を受けて1度だけさらに20年延長することができることになっている。この運転期間規制について、特別の理由がなくても延長の申請ができるようにすることと、運転期間のさらなる延長が検討されている。前者については、現状すでにそういう扱いになっているが、それをルール化しようとするものである。後者については、それぞれの原発の運転期間の計算において安全審査などで運転停止していた期間を除外する案(除外案)と、運転期間の上限を撤廃し、安全性が確認されれば無期限に運転可能にする案(上限撤廃案)が検討されている。
 報道では、上限撤廃案は世論の反発が大きいことから、除外案が有力だとされている。仮にそうだとしても、いずれ上限撤廃を持ち出すだろう(初めから上限撤廃を強行する可能性も排除できない)。特別の理由がなくても延長申請ができるようにすることを含め、運転期間規制の骨抜きを狙ったワンセットの策動と見なすべきである。
 なお、運転停止期間を運転期間から除外する理由は、運転停止中は運転による原子炉の劣化がないからその間は原発の安全性が低下しないということである。しかし原発には運転されていなくても劣化が進む設備や部品はいくらでもある(関電原発の運転期間延長審査の際に問題になった、経年化による電気ケーブルの絶縁低下など)から、これはまったく理由にならない。
 そもそも運転期間規制がなぜ必要なのかといえば、規制委員会も認めているように安全審査に合格したとしても絶対安全とはいえないからである。審査に過誤がある可能性は常にあるし、審査時には知られていなかった危険性が顕在化して事故に至る可能性も否定できない。そこで、安全審査と運転期間規制という二重の関門を設けて事故発生の危険性の軽減を図っているのである。ひとたび事故が起きれば取り返しのつかない事態になる原発についてはそこまでの安全確保が必要だということである。運転期間規制が骨抜きされれば、原発の安全確保システムの根幹が揺らぐことになる。
 政府がEPR建設と既設炉の運転期間延長を並べて提起したのには電力会社対策という意味もある。電力各社はどこも再稼働準備にすでに数千億円を投じており、再稼働と運転期間延長を切実に望んでいる。しかしEPR建設には西欧での実績を見れば慎重にならざるをえない。運転期間規制緩和は電力会社をEPR建設に同意させる餌である。しかもそれだけでは電力会社を納得させるには不十分なので、原発の電気を使っていない消費者を含むすべての消費者にEPR建設費を負担させるというとんでもない計画まで準備されている。
 こういう暴走的原発回帰政策にたいしては、社会全体の再エネ転換が後回しになり、2050年の脱炭素化の実現が危うくなるとの懸念が、政府内でも環境省などで強まっているという(朝日新聞11月12日)。


雑 記 帳

 11月は暖かな日が多く、そんな日にはよくアシナガバチを見かけた。夏の終わりに生まれ、秋に交尾し、春に備えて越冬中の新女王蜂が暖かさに誘われて冬眠場所から出て来たのだ。俳句にはこのような蜂を指す「冬の蜂」という季語がある。中村汀女の「留守の窓どこも日当たる冬の蜂」の蜂はまさにこの新女王蜂であるが、杉田久女の「我作る菜に死にてあり冬の蜂」は、寿命が尽きて秋に死んだ働き蜂や雄蜂の死骸が野菜の葉の中に残っていた情景を詠んだものであり、この蜂は新女王蜂ではない。では、歳時記によく載っている村上鬼城の「冬蜂の死にどころなく歩きけり」の蜂はどちらの蜂なのだろう。
小雪(今年は11月22日)も過ぎてから庭のカリンの枝に赤とんぼが止まっていた。いずれ「冬のとんぼ」という季語ができるかもしれない。
 家の前の公園の、私の書斎からよく見える場所にナンキンハゼの大木がある。40年近く前に公園の樹々があまりに貧弱だったので移植した幼木が育ったものである。このナンキンハゼが今年はこれまでになく見事に紅葉した。
 ナンキンハゼの紅葉は、大きく広がった枝の葉々が緑、黄、紅、さらに深紅までグラデーションになり、それに無数の白い実がアクセントを付ける。風が吹くと深紅の葉が散って全体の紅葉度合いが少し逆戻りし、そこからまた紅葉が進み、これを繰り返して葉がだんだん少なくなっていく。
 今年も高いレベルでこのプロセスが進んでいたのだが、葉がまだかなり残っている段階で剪定されて丸坊主にされてしまった。枝が伸びすぎの感もあったので剪定はやむをえないが、もう少し時期を考えてほしかった。
今年は秋口に雨が多く、雑草がよく伸びた。万場緑地もそうで、11月初めには丈が1メートル近くになった草がいたるところで群生する状態になり、子どもたちを遊ばせるために広っぱや遊具のまわりを自分たちで草刈りする人たちが現れた。業者による草刈りを待っておられなかったのである。私たちの公園ネコ保護グループも餌場への通路を確保するために数カ所で草刈りした。
万場緑地のネコ 第36話 10月後半からタヌキが目撃されるようになったが、昨年に較べると数はかなり少ない。置き餌をしないことを中心にタヌキを呼び込まない対策をやりつづけた効果が出たようだ。11月中旬にアライグマ出現かと思わせる事件があって、一時緊張した。アライグマは気性が荒く、出没するとネコが怖がって餌場を放棄することがある。さいわいアライグマでないことが確認されて、一安心した。

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