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2021年06月08日17:42
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「目が肥えた懐疑主義者は、竹内久美子のトンデモっぷりをお見通し」後編
※以下の日記の続きです。
2021年6月08日の日記
『「目が肥えた懐疑主義者は、竹内久美子のトンデモっぷりをお見通し」前編』
https:/
2021年6月08日の日記
『「目が肥えた懐疑主義者は、竹内久美子のトンデモっぷりをお見通し」中編』
https:/
（承前）
竹内久美子のトンデモはまだまだ続きます。
お次は疑似科学として鉄板ネタの「血液型占い」を肯定しちゃう竹内久美子さん。
P.164
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血液型というと、「血液の型でしょ。それが性格と関係あるなんておかしい。そんなこと言うのは日本人だけで、世界からバカにされている」などと言う人がいる。
しかし、私は言いたい。
血液型(ここではABO式血液型のことを指す)は免疫の型である。つまり病気に対する戦い方の違いであり、得意不得意な病気があるのだ。そうと知ったうえでも、関係ないといえますか？
―――――――――――――――――
…じゃあ血液型と性格の相関を支持するデータがなかなか出てこないのは何故ですか？
竹内久美子さんにはこの言葉を捧げます。
理論が美しいかどうか、あなたがどれくらい賢いかは大事ではない。事実が伴っていなければ全ては間違いなのだ
―リチャード・ファインマン（2回目）
大事なことなので2回言いました。
血液型占いの話はさらに続きます。
P.165
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得意、不得意の違いがあるのなら、行動パターンにも違いがあって当然のはずで、そんなところから性格にも影響が及んでいるのではないかと思うのだ(ある血液型なら絶対にこう、というのではなくこれらはあくまで傾向である)。
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…その傾向とやらが一向に検出されない件。
巧みにデザインされた実験と統計的手法が、自分でも思いもよらなかったヒトの傾向をあぶり出すことは竹内久美子自身がその手の研究を頻繁に紹介していて、熟知してる筈なのにねぇ…
あと「あくまで傾向です」というのは他の科学者ならちょっとくどいくらい強調するのが普通ですが、竹内久美子は滅多に言及しません。
まぁこの人、タイトルや帯でおおげさ＆センセーショナルに書くことで人気を得てますからねぇ…
この人の「あくまで傾向です」は、炎上しそうな意見を主張する人が「※個人の意見です」とか最後に添えることで責任を回避しようとするのと同種の行動なのかもしれませんね。
血液型占いの話はさらなる問題を呼び込みます。
P.167
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A型に対する疑問は、皆が長寿をいいことと捉えるから生ずるのである、動物は長く生きればいいというものではない。自分の遺伝子をいかによく残すかという論理のもとで生きている。ということは、最も効率よく自分の遺伝子を残すタイミングで死ぬ、ということも重要なのだ。「姥捨て山」のように、極限状態においては、子や孫の食い扶持を奪ってしまうだけの存在は、無意味である。
ガンとは主に中年以降に発症する病気であり、子がちゃんと育ったあとに死ぬためのプログラムとも言える。つまり最もガンに弱いA型とは、一番良いタイミングで死ぬことができるタイプというわけなのだ。
こうしてA型の人間は自分の遺伝子のコピーを効率よく残す。と同時に、A型の遺伝子もよく残している、ということではないだろうか。
たとえ「死ぬにはまだ早いのに」と言われるタイミングであったとしても。
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なんか「『姥捨て山』も戦略的にはアリ」みたいな話をしてるけど…
「全ては遺伝子の利益」という『遺伝子選択説』を唱えたG.C.ウィリアムズ（この本にも登場してます）は、むしろ「閉経後もおばあさんが子や孫の世話をすることで有利になる」という、『姥捨て山』とは真逆の『おばあさん仮説』を考えた人でもあるんだよなぁ…。
そして、そんなに早死にすることが有利なら、みんなA型になるのでは？
そうでないというコトは、つまり多型が保たれているというコトは、A型であることは「特別 有利でも不利でもなく、中立」であるか、「多数になると不利になって減るが、少数になると有利になって数が増える、という頻度依存」かでしょう。
したがってA型が特別に有利というコトはないんじゃ…
こう言うと
「いや、A型は他の血液型と同等に有利だから残ってきたのだ、『有利だから生き残ってきた』ことに変わりはない」
と反論したくなるかもしれません。
でも、それならA型にガンに弱いという不利性を補うどんな有利性があるのかを示さないと意味がありません。
しかし竹内久美子が言っているのは「早めの死には何か長所があるのだろう」というだけ、肝心の説明は『子や孫の食い扶持を奪ってしまう』だけです。
「何か長所があるのだろう」で説明を済ませたつもりになるくらいなら、「きっと神様には何かお考えがあるのだろう」で済ませても同じやんけ…
『子や孫の食い扶持を奪ってしまう』については、以下の日記を参照。
2020年10月09日の日記
『チコちゃんに叱られろ：前編』
https:/
2020年10月09日の日記
『チコちゃんに叱られろ：後編』
https:/
↑…という訳で、死そのものを「積極的な適応」と考える必要は無いのです。
…ところが竹内久美子は本書の別の場所では一転、
『社会の役に立っているおばあさんを�爐个个↓瓩噺討屬福�(小見出しより)
と言い出します。
P.203
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「閉経したのにまだ何十年と生き続ける人間のおばあさんって有害以外の何物でもないんじゃね」みたいな意見を最近、小耳にはさんだので言いたい。
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…それ言ったのはバリバリ保守派の石原「障子ちんこ」慎太郎元都知事ですね。
存分に叱っておいて下さい。
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人間のおばあさんにとって、直接自分が繁殖するよりも孫の面倒を見るほうが自分の遺伝子がよく残る。だから、あえて閉経するようになったのだ。この件は「おばあさん仮説」として説明されてきたが、最近では「おばあさん効果」と呼ばれるようになっている。もはや仮説ではなく、おばあさんにはちゃんと存在意義があって、効果があるというのだ。
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先述のG.C.ウィリアムズによる『おばあさん仮説』、ちゃんと知ってるのに何であんなコト書くかな〜…
P.205
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このように閉経した祖母には大いなる存在価値がある一方で、祖父にはほとんど存在価値がない。シャチでも人間でもである。
ただし人間の場合には、祖父が村の長老であるとか、何らかの分野で大きな影響力を持った存在であれば話は違ってくる。存在価値があるのだ。
ともあれ、シャチも人間もオスの方が寿命は短いが、その理由の1つが、祖父としての存在価値があまりないということにあるのだ。
おばあさんには存在価値がはっきりとある。ばばあ呼ばわりするやつは反省しなさい！
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…コレ一見「良い話」ですが、よく考えると問題ですよ？
『おばあさんには存在価値がはっきりある』
と言う一方、
『祖父が村の長老であるとか、何らかの分野で大きな影響力を持った存在』
でなければ祖父には
『存在価値があまりない』
って言うてしもてるやん…
コレ、またしても「どうである」（事実命題）から「どうであるべき」（価値観）は導出できない、という『ヒュームの法則』に抵触してしちゃってますよね？（自然主義的誤謬）
結局、存在意義を杉田水脈あたりの言う『生産性』のあるなしで語っちゃってるんだよな〜…
じゃあもし何らかのマイノリティに進化的な適応や社会生産性を見出せないなら、存在意義がないんですかね…？
それなんて優生思想？
障害者を殺しまくったナチスとどう違うの？
え、この「存在意義」はあくまで生物学的な話で社会的な話じゃない？
でも竹内久美子は「傾向に過ぎない」の話と同様、その辺が曖昧なままで読者に注意喚起もしませんし、何よりご本人に両者の区別がついてないことは「まえがき」の時点で確定ですからね…。
ていうか『社会の役に立っているおばあさんを�爐个个↓瓩噺討屬福抔世Δ討靴發討襪掘�
そんな竹内久美子ですが、たまには良いことも言います。
P.180では「種の存続」という概念が間違っていることにちゃんと言及（まぁ常識ですが）。
そういえば２０２１年５月２０日、自民党の会合で簗和生衆院議員がＬＧＢＴについて「生物学上、種の保存に背く。生物学の根幹にあらがう」という趣旨の発言をして問題になってましたね。
がっちょり叱っておいて下さいね。
さらに竹内久美子は自らのうつ病との闘いについても触れています。
P.199
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ここでは私の17年にも及んだうつ体験を語り、参考にしてもらえたらと思う。十七年のうち十年で九〇%ぐらいまで回復。完治までにもう七年かかった。
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1988年に初めて出版した本が話題となり、ちやほやされ続けるのが嫌でパニック障害に、やがてうつ状態になったそうです。
これには純粋に同情を禁じえません。
P.202
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ともあれ、その後、私が九割方までに回復するのに十年もかかったの、発症以前から存在したある恐怖のためである。
学界からの攻撃だ。
学界という世界は実に狭く、誰かが一般向けに優しくかみ砕いた本を書いただけでもぼろくそに批判される。編集者が少しでも本を売ろうと、タイトルや帯の文句に工夫をこらしただけでも「そんなに金が欲しいか」「学問で金儲けするのか」などと批判される。ましてや学界と縁を切り、何の肩書きもない私が売れる本を書いたなら……(ちなみに恩師日高敏隆先生は一貫して応援してくださった)。
事実、数えきれないほどの嫌がらせにあい、竹内のものはニセ科学だなどといううわさを流された。一方ですべてを理解してくれる賢明な読者、老舗出版社と優秀な編集者に恵まれたが、超豆腐メンタルで若輩者の私はいちいち傷ついていたのだ。
あの頃、今のような精神状態で、「学界？ それがどうした」の時を持つことができたなら、3倍位のスピードで執筆できたのにと思う。もう二度と戻らない三十代、四十代だけど。
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…と思ったら、いきなり人のせいに…
一般向きの本を書いてる学者なんていくらでもいるでしょ…それこそ竹内久美子が執拗に攻撃してた長谷川眞理子を含め。
その人たちも同じくらいアレコレ言われてるかというと、そんなことないでしょ…
竹内久美子が批判されたのは、箸にも棒にもかからないトンデモだったからでしょうが〜！
しかも反省するでもなく、同じ芸風を続けてるし。
…あ〜、『学界？ それがどうした』って思てはるんやねぇ…やっぱり。
正当な批判に『いちいち傷ついていた』のなら、竹内久美子先生はこのエントリはご覧になられない方が良いかもしれません。
でもコレ過去形だし、今は面の皮が厚くなってるから平気なのかな？
そして、竹内久美子のこういった被害妄想が最も出ちゃってるのが↓ココ。
P.120
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それなのになぜ左翼、特に男は平等を声高に主張するのだろう。私が見るところ、彼らの言う「平等」とは、どう考えても自分にも平等に女を与えろ、という意味である。モテない自分にも女を回せ、と。
さらに左翼男の特徴として、互いに連携し、声が大きいということがあり、それらのしつこさによって、いろいろな組織を乗っ取ろうとする傾向がある。実を言うと、一九八二年に京都大学理学部の日高敏隆先生(私の恩師である)とその弟子たちが尽力し、(日本動物行動学会)を設立したのだが、いつの間にか�狷�本型リベラル�瓩力�中に乗っ取られてしまった。
日本型リベラルとは、共産主義が失敗に終わったことが判明した今でも、その思想にしがみつき、思想の為なら捏造・改竄・隠蔽・研究妨害もいとわない人々。「日本型」と称せられるように日本に独特である。
日本型リベラルは間違いなく左翼の一部である。政治の世界や文系の研究分野ではよく知られているが、理系分野にも存在するのである。
「日本動物行動学会」も、やたら声が大きく、発言も活発で、実にしつこく、連帯を旨とする学会内の日本型リベラルに乗っ取られてしまったというわけなのだ。
こういう左翼男のモデル、あるいはルーツとなるような動物がいないものかと探していたら、これだというものに行きついた。
―――――――――――――――――
『日本型リベラル』は『政治の世界や文系の研究分野ではよく知られている』そうですが、「日本型リベラル」でぐぐっても出てくるのは殆どが竹内久美子とその原稿が載っていた『正論』絡み…他の用例はあまりありません。
全然『よく知られ』とらんがな！
あと
『「日本動物行動学会」も、やたら声が大きく、発言も活発で、実にしつこく、連帯を旨とする学会内の日本型リベラルの連中に乗っ取られてしまった』
って…
そりゃ学会内の保守派は声が小さく、発言も不活発で、粘りもなく、連帯もしなかったってだけなんじゃ…？
あと常識や伝統に縛られず、新しいアイデアを受け入れる科学界にはそもそもリベラルが多いんじゃないですかね。
この辺の話は以下を参照。
2018年5月25日の日記
『トンデモさん・ミーツ・ネトウヨさん【完全版】』
https:/
ちなみに↑ココで取り上げている『別冊正論31「日本型リベラル」の化けの皮」』に収められた竹内久美子の「動物学で日本型リベラルを看ると―睾丸が小さい男はなりやすい!! 政治から学界まで本能の為せるワザ」では「日高敏隆と左派のI氏が、シンメトリー研究も、人間について研究することもまかりならん、と妨害してきた」的な話が載っており、先ほど恩師として感謝していた筈の日高敏隆も『日本型リベラル』扱いされています。
どういうこっちゃ〜？
で、『こういう左翼男のモデル、あるいはルーツとなるような動物』とされたのがサイド・ブリッチド・リザードというトカゲなのですが…
P.123
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確かにオレンジオスはハレムを構えるし、イエローオスはメスのふりして間男をする（ジャニーズ系の色男？）。どちらも華やかで面白味がある。
一夫一妻のブルーオスは、この中では一番地味で面白みに欠けると言えるのではないだろうか。私がハッとしたのは、ブルーのオスたちはイエローのオスたちに妻を寝取られないよい、お互いに連携し、防衛しているということである。一番魅力に欠け、面白みのない連中が�猩�携�瓩靴銅�らの戦略がおかされないようにしているのだ。
あれっ、どこかで見たような……。
―――――――――――――――――
…特定の人々を腐すのに動物になぞらえ、しかもその動物を「面白みに欠ける」などと主観的な価値観で捉える…
それがこの人が動物行動学から学んだことなんですか？
それって「このゴキブリ民族が！」とかとどこが違うの？
さて、長々と語ってきましたが、この本、読んでて気付いたことがあります。
それは紹介されている研究にロビン・ベイカーのものがやたらと多いということ。
ロビン・ベイカーは『精子戦争』で知られ、ニューカッスル大学、後にマンチェスター大学で教鞭を取り、その後は引退して著述や講演を行っている人です。
その有名な説は本書でも紹介されています。
P.103
―――――――――――――――――
イギリスのロビン・ベイカーによれば、精子競争というよりは精子戦争であり、精子には卵の受精役の「エッグ・ゲッター」と、他の男の精子を頭突きや化学物質を放って殺す役の「キラー」、他の男の精子の行く手を阻む役の「ブロッカー」があるという。
エッグ・ゲッターはそう数は多くなく、数百くらい。キラーとブロッカーは大変数が多く、、ブロッカーは老いた精子であり、違いの尻尾を絡ませてネット状となって行く手を阻むという。
―――――――――――――――――
しかし、この説はほぼベイカー自身の本と、それを引用したらしき通俗的な本でしか見かけず、まともな生物学者の本で肯定的に扱われることはまずありません。
かつてベイカーから教えを受けていた高名な鳥類学者のティム・バークヘッド（本書でも紹介されています）による『乱交の生物学 精子競争と性的葛藤の進化史』では、これらの話は完全に否定されています。
同書によれば…
「頭をぶつけ合う精子の映像」は疫学者によればすでに死んでいるものだし、それを「異なる男性の精子」とする根拠も不明。
より洗練された実験でも、精子は異なる男性の精子と殺し合ったりはしていませんでした。
「エッグ・ゲッター」とされる大型の精子は、通常の染色体組が倍になった欠陥品で、正常な胚を形成することはきわめて難しいことが以前から指摘されていたそうです。
さらに、ベイカーの研究手法は相当なトンデモだった様です。
ここでは2つだけ引用しておきます。
『乱交の生物学 精子競争と性的葛藤の進化史』
P.48
―――――――――――――――――
一九七二年にロビンはマンチェスター大学に移り、それまでの昆虫の移動についての研究をふまえて、ヒトのナビゲーションについての研究を始めた、我々は皆、頭の中に基礎的な磁気感覚を持っているのではないかというアイデアを検証しようとしたのだ。毎年、学部生が目隠しをされマンチェスター中をバスで連れ回された。最終的に解放された彼らは、自分の家の方向を指し示すように言われるのだった。彼らの船酔い症状と吐き気にもかかわらず。ベイカーはそれが可能だと強く主張した。しかし統計処理は混み合っており、ナビゲーション研究をしてる他の研究者は結果を納得するには至らないと判断した。これはかなり世間の注目を集めた。我々の頭蓋骨の中のどこかに小さな磁石があり、自らを調整して家までの道のりを教えてくれるというアイディアはメディア受けするものだったのだ。
世界中の懐疑主義者がベイカーの研究を繰り返したが、ベイカーが出した結果を追認したといえるものは誰もいなかった。ひるむことなくベイカーはこれら他の研究からの情報を再分析し、それらを合わせて自分のアイデアを支持する証拠だと主張した。この問題を解決し、今やヒトの被験者、特に熱心な学生から得ることのできるデータの価値に気づいたベイカーは、次に性とヒトにおける精子競争の問題に目を向けたのである。
―――――――――――――――――
同
P.51
―――――――――――――――――
ロビン・ベイカーは自信に満ちた発表を行った。しかしそれは科学的に証明することが難しいものだった。彼が提示した仮説はもし種間の相対的な睾丸サイズの違いが精子競争との関わりを予測するのなら(第3章参照)、個々の男性の睾丸サイズの違いから彼らの精子競争における成功を予測できるのではないかといううのだった。これを実証するため、ベイカーは十四人のマンチェスター大学の同僚を説き伏せ、カリパスで左の睾丸のサイズを測らせてもらった。次にこの男性の同僚である(明らかに彼らの睾丸サイズについては何も知らない) 二十人の女性に、この男性たちがもしチャンスがあるならペア外性交に奔るかどうかという程度を順位づけしてもらった。ベイカーは結果について報告した。そして、それは彼が予想した通り、睾丸サイズと男性のペア外性交への奔りやすさの予測との間に有意な正の相関があるというものだった。聴衆の反応はさまざまだった。ベイカーの大胆さに薄ら笑いを浮かべながら不信を表明する者もいれば、一部の方面からは率直な憤慨も寄せられた。
べイカーの取った方法はあまりにも単純素朴だったようだ。睾丸サイズを記録する際、彼は被験者の男性の身長を考慮に入れていなかった。それはつまり睾丸サイズを身長との関係で表していなかったということだ。他の動物種においては、より大きな個体がより大きな脳、より大きな心臓、そしてより大きな睾丸を持つということはきわめて明らかなことである。ベイカーがサンプルを取った男性は全て白人だったのだろうか。睾丸サイズには人種差があることが知られている。実際のところ、ごっちゃにされた変数のどれもがこの正の相関を説明するのだが、どれ1つとして考慮されたり分析されたりしてはいなかったのである。質疑応答の時間は、生殖生理学者たちがベイカーの説明に反論し始めるにつれ明らかに気まずいムードになっていった。セッションが終わったとき、一人の憤慨した生理学者は研究室まで私を追いかけてきたものだ。こんな科学のカリカチュアを見せるために、わざわざ大西洋の向こうから自分を連れてくるとは一体何を考えてるのだ、ということだった。
―――――――――――――――――
…ボロカスやんけ！
しかしベイカーは大衆的な人気を獲得します。
同
P.50
―――――――――――――――――
ただ単にそこに立ち、ほとんどの人があえて公共の場において議論しようとしなかったことについて我々に語るだけで、ベイカーの地位は高まった。
―――――――――――――――――
ちなみに同書の翻訳者・小田亮による「訳者あとがき」にはこうあります。
同
P.364
―――――――――――――――――
精子競争について扱った本で一般向きのものといえば、本書でも批判されているロビン・ベイカーの『精子競争』か、あるいはトンデモ本認定されている竹内久美子の著書くらいだ。
―――――――――――――――――
堂々の『トンデモ本認定』…！
それにしてもこのロビン・ベイカーという人…
…歯に衣着せず生殖について語ることで大衆の興味を引き、アイデア豊富だが実証は伴わないトンデモさんで、学界から外れて著述家へ…
あれっ、どこかで見たような……。
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