mixiユーザー(id:36005118)

2021年05月02日22:33

72 view

複数のプラットフォームが配信権を購入すれば、チリも積もって制作費をリクープ

長いけど、良い記事。
配信環境が整ったのが大きいように感じるけど、違法配信に対する牽制にもなるし、安く契約しても塵積で額になるのか。
別の所<https://logmi.jp/business/articles/323948>で『トニカクカワイイ』の畑健二郎先生が「(パッケージ販売は)1巻、コレクター用に作って終わり。」「(アニメ業界が)究極、日本市場を、もう今後はあんまり見てないかも。」と言っていたのも頷ける。

出し惜しみしないのが稼ぐコツ!?『鬼滅』ブームの裏に20社配信あり──アニメが配信されまくる理由
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=53&from=diary&id=6505300
──2018年、アニメ市場において、配信売上がパッケージ売上を上回った。『鬼滅の刃』は、Netflix、Amazonプライムビデオをはじめ計20社のプラットフォームで配信が行われていたことが接触機会を増やし、ヒットにつながったと言われている。アニメと配信サービスの蜜月のカラクリを紐解いてみたい。(月刊サイゾー3月号より一部転載)
 今や国民的ブームとなった『鬼滅の刃』。アニメ映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』は、『千と千尋の神隠し』を抜いて日本歴代興行収入第1位を飾り、2月1日時点で興行収入は368億円を突破した。
 2019年4月のテレビアニメ放送開始時には好事家の間で注目を集めていた程度だったが、放送が始まるとその出来映えからツイッターなどのSNSを中心に口コミが広がり、20年に入ると爆発的な人気を獲得。その過熱ぶりは、原作単行本の累計発行部数が同年2月の4000万部から7月には2倍の8000万部、そして10月に1億部を突破、12月にはとうとう1億2000万部に到達――といったデータからもうかがい知れるだろう。
 19年9月末のテレビアニメ最終話終了後に劇場版の制作が発表されていたとはいえ、通常のアニメであればテレビというマスへの露出が終わった段階で、作品の人気は落ち着く傾向にある。だが近年は『鬼滅の刃』を筆頭に、『ゆるキャン△』や『Re:ゼロから始める異世界生活』など、放送終了後も人気が根強く持続する作品は少なからず散見される。なぜそうした“後伸び”が可能になっているのか。


後追い視聴がすぐできる環境を準備した『鬼滅』

 すでに数多くのメディアや評論家が『鬼滅の刃』ヒットの要因としてこぞって挙げているのが、“ネットでの動画配信”だ。同作を手がけたアニプレックスの高橋祐馬プロデューサーは「日経クロストレンド」のインタビューにて、「(引用者注:テレビ放送開始時から動画配信サービスと)契約できるところすべて、約20社と契約した」と答えている(20年10月7日掲載「『鬼滅の刃』ブームの裏に、アニメ化と計算尽くしのファン獲得策」より)。
 SNSを介して作品の評判を知った層がNetflixやAmazonプライムビデオほか、さまざまなプラットフォームで後追い視聴するのを可能にした配信戦略が、今回の歴史的ヒットの推進力になったといわれている。付け加えれば、新型コロナウイルス感染拡大に伴う巣ごもり需要によるVODサービスのアクティブユーザー増加も理由として挙げられることが多い。
 現在、VODサービスの隆盛によってアニメ業界のビジネス構造が変わってきているというのは、耳ざとい読者であればすでに聞いたことがあるだろう。本稿ではアニメビジネスの概要を押さえつつ、VODサービスがアニメ業界にもたらす新たな潮流について紐解いていこう。
 テレビアニメは1960年代の黎明期に玩具産業を中心にして勃興し、80年代以降はVHSやDVDといったビデオグラムを主な収益源として発展した。並行して、95年放送のテレビアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』をきっかけに、テレビアニメビジネスでも複数の出資社が資金を出し合い、出資比率に応じた収益やソフト販売権、グッズ化権といった権利を分配する製作委員会方式が広く採用されるようになり、今でもメインストリームを占めている。
「製作委員会の中で出資比率が大きい主幹事会社を務めるのは、映像ソフトメーカーになる場合が多い。作品の収益の柱となるパッケージ化権を保持するのも、主にはソフトメーカーになっている」とはアニメ業界関係者A氏の言だ。
 2002年にはバンダイナムコグループによるアニメVODサービス「バンダイチャンネル」も登場するが、当時まだアニメ業界は“円盤ビジネス”の真っただ中。ネットでアニメを見る習慣はまだまだ一般的ではなかった。
 日本において、テレビアニメのネット配信が一般化するきっかけとなった作品として、「06年放送のテレビアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』の存在はあると考えられます」と説くのは、『誰がこれからのアニメをつくるのか?』(星海社新書)の著者であるジャーナリスト・数土直志氏だ。
『涼宮ハルヒの憂鬱』は、時同じくして登場したYouTube(05年)やニコニコ動画(06年)を通じてファンによるダンス動画などが拡散し、大ブームに。同時にアニメ本編の違法配信も急増することとなった。
「合法性はさておき、ここでアニメファンは、ネットでアニメが手軽に見られることに気づきました。一方、違法配信が蔓延する状況に危機感を抱いたアニメ業界は、急速に配信環境を整備していきます。ただし、この時期のネット配信にビジネスとしての期待は小さく、07〜10年頃まで関係者の口からは『配信は全然金にならない』といった声もよく聞かれました。当時は、違法配信に対する牽制といった意味も強かったのです」(数土氏)
 奇しくも『ハルヒ』ブーム前夜であった05年、アニメビデオパッケージ売上は1388億円とピークに達し、ここから下降線をたどる(一般社団法人日本動画協会「アニメ産業レポート」より)。ネットで動画を見るのが当たり前の時代が到来した。
 12年にはNTTドコモとKADOKAWA共同出資のアニメ専門定額制動画配信(SVOD)サービス・dアニメストアが開始。10年代前半は、テレビ放送と並行してdアニメとニコニコ動画で配信を行うアニメ作品が目につくようになる。さらにU-NEXTやTSUTAYA TVといった日本の動画配信プラットフォームもSVODに舵を切り始めた。
 そして15年9月、NetflixとAmazonプライムビデオが日本でサービスイン。ここでアニメをめぐるネット配信の潮目は再び変化を迎える。
「2社はいずれも、日本国内ではかなりサプライズ的なローンチという印象でした。そこから1〜2年かけて各社とさまざまな企画を調整していったのだと推測できます」(前出・数土氏)
 かくして17年頃には、アニメの複数プラットフォームでの同時配信は当たり前の光景となった。そして、アニメビジネスを支えていたパッケージ販売に取って代わるように配信収入は右肩上がりで成長。18年の売り上げは595億円と、同年のパッケージ売上(587億円)を追い抜くまでになった。


安ければ1話10万円で配信契約を結ぶ場合も

 アニメビジネスの屋台骨として熱い視線を集める配信収益だが、そのカラクリはあまり知られていない。前出のA氏は、次のように耳打ちする。
「アニメにおける配信権は、それまで収益の要だったパッケージ権と並んで今や稼ぎ頭。製作委員会の中でも企画した会社、その多くは出資比率の高い主幹事会社が配信権を握っていることがほとんどです。この配信権を各プラットフォームに販売して手数料を得ることで、配信権を持つ会社は収益を得ています。
 2〜3年前までは視聴された回数に応じてプラットフォームの支払う金額が変動する従量制もありましたが、今は基本的に1話につき数十万〜数百万円で一定期間、といった配信契約になっています。配信権の相場はピンキリですが、安ければ1話10万円で数カ月契約といったこともざらにあります。それでも複数のプラットフォームが配信権を購入すれば、チリも積もって制作費をリクープすることが可能になる。
 配信の契約期間はまちまちで、それによって当然金額も変わってくる。プラットフォームごとにその金額には差があり、NetflixやAmazonプライムビデオといった会員数の多い有力サービスは視聴される回数も多いため、その他のサービスと比べて何倍もの金額で配信権を購入しています」
 映像ソフトメーカーが主幹事を務めているケースも多い。近年では『鬼滅の刃』を手がけたソニー傘下のアニプレックスをはじめ、バンダイナムコアーツ、エイベックス・ピクチャーズ、ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント、NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン、ポニーキャニオンといった企業には軒並み配信担当部署が設立され、担当者がプラットフォーム側との金額交渉を行っているそうだ。
 さらに、アニプレックスを擁するソニーは、20年12月にアメリカの最大手アニメVODサービス・クランチロールを11・75億ドル(約1222億円)で買収。この背景には、有力な配信プラットフォームを自社グループで保有することで、他プラットフォームとの交渉を有利に進める目的があるとも目されている。つまり、例えばNetflixが会員数を盾に配信権の購入額を買い叩いてきた際に、「それなら売らずに自社でのみ配信する」というカードを切れるのだ。
 ただし、必ずしも映像ソフトメーカーだけが配信権を持つとは限らない。近年ではドコモ・アニメストアといった配信会社が製作委員会に名を連ねる作品もあり、その場合は当然、その会社が配信権を持つことになる。
 前述の通り、NetflixとAmazonプライムビデオによってアニメの多チャンネル配信は一般化したが、VODサービス、中でもNetflixはアニメ業界に別の角度からもインパクトを与えている。
 18年1月、Netflixはオリジナルアニメ『DEVILMAN crybaby』(全10話)の配信をスタート。テレビ放送や劇場公開のない、SVODプラットフォームによる独占配信を前提としたオリジナルアニメがビジネスとして成り立つ、ということが日本のアニメ業界からは驚きを持って迎えられた。
 Netflixはその後も『B:The Beginning』『A.I.C.O. Incarnation』といったオリジナルアニメを独占配信で展開していくが、特に注目されたのはその製作費だ。日本のテレビアニメ1話の製作費は一般的に2000万円前後、深夜アニメ1クールで約2億円程度といわれている。
 これまでのビジネスモデルでは製作委員会が持ち寄っていた製作費をNetflix1社でまかない、さらには一般的なアニメの何倍もの予算を提示しているらしい、と話題になった。この“黒船”が日本のアニメビジネスの構造を変化させ、ひいては薄給や過重労働が叫ばれるアニメ制作現場の労働環境も改善するのでは? といった期待の声も上がった。
「確かにNetflix1社出資の場合、同社は製作費の全額程度は支払っていると思います。しかし、一口に“Netflixオリジナルアニメ”といっても、実は1社出資でなく、製作委員会が組織された上で配信権を独占的に購入しているパターンも含まれているのです。どの作品が1社出資か独占配信かという区分について、Netflix側は公表していません。
 また、Netflixオリジナルとなると制作費がすぐにリクープできる一方、企画として選ばれる作品は全世界的に人気のあるSFジャンルなどに偏る傾向があります。そのため、アジア圏で人気が高く、キャラクタービジネスも重視されるアイドルアニメなどは、複数のプラットフォームで配信をしたほうが将来的なビジネスにつながるはずです」(前出・数土氏)
 アニメ業界関係者・B氏も「Netflix独占配信は、良い作品を作ってグッズなど関連ビジネスも含めて盛り上がりが醸成されてスタジオの名が売れて……という従来のやり方とはかけ離れているので、あまり乗り気でない制作会社もいる」と釘を刺す。
 ともあれNetflixは、18年にプロダクションI・Gやボンズといった国内の有力アニメスタジオと包括的業務提携契約を結び、20年にはCLAMPやヤマザキマリ、冲方丁らクリエイター6組とパートナーシップを締結するなど、現在もオリジナルアニメ製作に意欲を見せている。
 なお、並べて語られることの多いAmazonプライムビデオは、オリジナルアニメを日本のアニメスタジオが制作した事例はあるものの、Netflixほどの大胆な動きは見せていない。独占配信も、劇場版アニメのスピンオフとしてオリジナル作品が多少見られる程度にとどまっている。どちらかといえば『ドキュメンタル』など、バラエティ方面に注力しているといえるだろう。


映像ソフトメーカーは総合化しなければ先が暗い

 ここまで見てきたように、アニメビジネスにおいてネット配信が存在感を増していく中で、映像ソフトメーカーの先行きは明るくないようにも思える。前述の通りパッケージ市場は縮小を続けており、ここからの劇的な回復は見込めないだろう。配信権を握ったとて、その衰退の穴埋めをできるほど配信市場はまだ大きくない。
 さらに、Netflixとアニメの制作者が直接つながれば、これまで配信権の交渉窓口を務めていた映像ソフトメーカーを飛び越して、プラットフォーム側がそのまま配信権を独占的に有することとなる。アニメ業界に対するNetflixの動きは配信プラットフォームの中でも特殊だといわれているが、それでもその動向は決して無視できるものではないだろう。
「映像ソフトメーカーは今後、生き残る企業と生き残れない企業に分かれていくはずです。現在のアニメビジネスは作品の映像そのものだけでなく音楽やゲーム、ライブイベントにコラボ展開と多様化しています。関連事業が拡大するに伴い、製作委員会における映像ソフトメーカーの出資比率も低下傾向にあります」(前出・数土氏)
 確かに、関連商品売上は5000億〜6000億円程度で安定して推移しており、ライブ関連売上も右肩上がりだ。2019年時点では844億円と、配信売上を大きく上回っている。
 こうした状況を踏まえて、数土氏は製作委員会の二極化を指摘する。映像ソフトメーカーの出資比率が減った分をアニメ関連の専門学校や小規模なグッズ会社、イベント会社などの新興企業が埋め合わせ、10社を超える企業によって製作委員会が構成される作品がある一方、『鬼滅の刃』でアニプレックスが原作を持つ集英社と制作会社ufotableの3社だけで座組を組んでいるように、最小限の企業で企画・製作を行うケースも増えてきているという。
「この流れにおいて、まさにアニプレックスは生き残る企業の筆頭といえます。同社は映像ソフトメーカーの枠を超え、配信権や海外販売、イベントや音楽も展開するなどビジネス領域と収益の多角化を果たし、“アニメ”というプロジェクト全体をマネジメントする会社となりました。また、18年に音楽会社のランティスを吸収合併してできたバンダイナムコアーツ(旧バンダイビジュアル)も、音楽やステージ分野での自社展開を拡大していくでしょう。今後、こうしたアニメビジネスの総合化に対応できない映像ソフトメーカーは、その進退を決断する時がやってくるはずです」(同)
 はたして配信売上はパッケージ売上の下落をカバーするほどに成長し、製作会社各社は新たな活路を見いだしていくことができるのか。いずれにせよこれからのアニメビジネスは、『鬼滅の刃』よろしく産業の“柱”となったSVODサービスが鍵を握っていることは確かだ。


(文/中込めめ)
1 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する