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2021年05月01日20:32

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116-11話-2終 詩・短編を書いてみた(第1953回)

【養子の魔王様】
116-11話「龍の首輪を持った少女」
【あらすじ】
ある日のこと。
僕が魔城の庭で用事を済ませていると。

人が乗った小さい龍が降りてきた。

『何だ、あれ?』


そのような龍を初めて見た僕は
敵が攻めてきたのかと思い
警戒しながら近づいく。

すると――。

『すみません。こちらにミカエルさんはいらっしゃいますか?。荷物を届けにきました』
『え、荷物…?』

予想外の言葉に戸惑う僕。

すると
僕の後ろから『すみません』と言いながら
ミカエルさんが駆け足で近づいてきた。

『お忙しい所ありがとうございます』
『いえ、こちらこそご利用ありがとうございます』

二人はそう言葉を交わし
ミカエルさんが彼から荷物の受け取った。
その後
龍に乗った人は
その龍の背中に乗って飛び去って行った。

あれは一体…。

『ミカエルさん。あの人は何なのですか?』
『あの方々は「リュウビ族」と言います』

リュウビ族…?

ミカエルさんから教えてもらった。

かつて魔界には
火を吹いたり
空を飛べたりする龍が
今よりも沢山いたという。

そして戦争の際。
その龍を兵器として扱おうと考えた前魔王が
敵のみに攻撃するように調教させようと指示し
生まれたのが魔王直属の攻撃部隊「リュウビ部隊」である。
しかし
戦争が終わり
役目を失った彼らは自ら城を離れ
とある場所に「ミアナ」という町を作り
今は物資の運搬などをしながら
「リュウビ族」と名乗りながら
生活しているという。

そんな人達がいるのか…。

そう思っていると
ミカエルさんが『会いに行ってみますか?』と言う。

『えっ!?。行けるんですか?』
『はい。リュウビ族には少し用事があるので。そのついでに王子も見識を広げてみるのも良いと思います』

こうして
僕はリュウビ族のいる
ミアナへ向かうことになったのである………

―――――――

後日。
僕はミカエルさんと一緒に
迎えに来たリュウビ族の龍に乗り
彼らが住む町へと向かう。

幾つかの山を越え
少しお尻が痛くなった頃
山岳に囲まれた小さな町が見えてきた。

あれがリュウビ族の住む町のようだ。

僕達は端にある町の玄関口へと降りる。
町は自然の中に作られたような感じで
人よりも生き物が好みそうな雰囲気だ。

龍から降りると
この町の人が数人近づいてきた。
どうやら偉い人のようだ。
ミカエルさんは彼らと少し話した後
僕の方を向いて――。

『では王子。私は用事を済ませてきますので、それが終わるまで自由に散策されてはいかがですか?』
『え、いいの?』

ミカエルさんはさっきの人達から一人。
若い人を案内人として僕に付けてくれた。

僕はミカエルさんと別れ
案内人と共に町の散策を始めた。

町は売店や役場など町として当たり前の物が存在し
違うとすれば
大小の龍が町のあちこちにいること。

きっと
彼らの生活を支えている所だろう。

そのような感じで町を見て周り
散策を終えようとした
その時だった。
僕は建物と建物の間に
人が通れる抜け道のような獣道を発見した。

それを案内人に尋ねると。
道の方向から「龍の寝床」に通じてるかもしれないという。

龍の寝床…。

その場所が気になった僕は
案内人の許可をもらい
龍の寝床へ行ってみることにした。

その道をしばらく進むと
僕の世界でいうところの「コロッセオ」のような外観の建物が見えてきた。
そして
その建物の穴の1つ1つに
大小様々な龍が
寝床として使っている光景は
まさに圧巻だった。

凄い…。

胸の高鳴りを感じながら
建物を見渡していると
龍に付いた鎖のリードを持った
少女を見つけた。

僕は案内人さんに彼女のことを聞いた。

彼女の名前は「ララティーナ」。
戦前から続く龍を調教して
管理する「龍守り」の家系の生まれで。
その実力は歴代最高と言われており。
彼女にかかれば
どんな龍でも調教させてしまうらしい。

ただ
彼女は大の人嫌いで。
リュウビ族の人達も
彼女との交流はほとんど無いという。

『そうなんですね…』

僕は案内人に向けていた視線を彼女に戻す。
すると
彼女はこっちを見ていた。

僕達に気づいているようだ。

僕は彼女に手を振る。
しかし
でも少女は表情1つ変えず
奥へ消えていった。
雰囲気だけだが
人嫌いというのは本当らしい。

『ララティーナさんと話せないですか?』

僕は案内人に尋ねたが
彼は首を横に振った。

どうやら
彼女と話す以前に
あの建物に入るには
この町の長老の許可がいるらしい。

残念だなぁ…。

そう諦めようとした時
どこからか人の談笑する声が聞こえてきた。

僕達は咄嗟に身を隠す。

一体誰だ…?

その声は徐々に大きくなっていき
このエリアに入ってきた。

僕は胸の鼓動を感じながら
ゆっくりとその姿を見る。

そこにいたのはミカエルさんと
ここに来た時にミカエルさんと話していた若者。
そして
髭の生えたご老人の3人。

『あのご老人は…?』

案内人さんに尋ねる。

彼は『長老です』と教えてくれた。

あの人が長老…。

確かに身体は年相応だが
何かを極めたかのような雰囲気を感じる。

ただ、どうしようか…。
とても出れる状況でもないし…。

そう思った時
突然
長老が僕達の方を向いた。

僕と完全に目が合っている。

そして
何故だろう…。
その目から視線を離すことが出来ない。

その状況に気づいたミカエルさんが
長老の視線を追い
僕達を見つけた。

『お、王子!?。どうしてここに…』

僕達は隠れていた場所から出て
ミカエルさんらに
偶然ここに来てしまった事を説明した。

その説明に
ミカエルさんらは納得してくれて
その流れで
隣にいる長老の事を紹介してくれた。

長老の名前は「マルクス・スタンフォード」
リュウビ族を束ねる長老で
ミアナ町の首長をしているという。

僕は長老に頭を下げて挨拶をした。

長老はそんな僕を
気に入ってもらえたのか
僕を受け入れてくれた上に
皆と同行することも許可してくれた。

『では、君は帰ると良い。町の案内、ご苦労だった』

長老にそう言われた案内人さんは
頭を下げて町へ帰り
付き添いの若者は
入り口の見張りを始めた。

『では、参りましょうか』

長老は龍の寝床に向けて歩きだし
それに着いていくように
僕とミカエルさんも龍の寝床の中へと入った。

『お〜い、ララティーナ』

長老がそう呼ぶと
奥からララティーナが出てきた。

最初に見た時は気づかなかったが
僕は彼女を見て驚いた。
龍を調教する人とは思えないほど
姿は小柄で
とても
この仕事を担えるようには見えなかったからだ。

何で彼女が龍の調教を…?

そんな疑問を抱いていると
長老がララティーナに言う。

『ララティーナ。例の龍の調教は済んでおるか?』
『はい…。出来ております』

彼女は弱々しい声でそう答え
この奥から鎖に繋がれた龍を連れてきた。

その龍は随分と大人しそうである。

その龍を見て
長老は驚きと喜びの声を出した。

『おぉ…。あの暴れ龍をここまで大人しくさせるとは…。やはり、ララティーナに任せて正解だった』

長老はララティーナから龍に繋がれている鎖を受け取り
誇らしそうに龍の首を撫でている。

彼女の技術は本当に凄いようだ。

僕は声を掛けようと
ララティーナに視線を向ける。

彼女は寂しそうな目をしていた。
表情は変わってないが
そう見えたのだ。

『では、ララティーナ。ミカエルさんの頼まれた物は出来ておるのか?』

長老の質問に
ララティーナは目を伏せる。

『申し訳ありません。実はまだ出来ておりません』
『そうか…。君にしては珍しいな』
『……』
『まぁ、いつも頑張っておるのだ。そんな時もあるだろう』
長老はミカエルさんに顔を向ける。

『という訳なのだが…。ミカエルさん、もうしばらく待って頂いてもよろしいか?』
『私は構わないですよ。焦って出来る物ではないですから』『そう言ってもらえると有難い。では、我々は宿の準備をさせて頂きますので、皆さんもそちらに…』

僕とミカエルさんは長老にお礼を伝え
その宿で休むことになった。

その日の夜。
その宿で休んでいる時。
あらためて
僕はミカエルさんにここへ来た理由を尋ねた。

ミカエルさんが
ここに来た理由は「龍の卵」を手に入れるためだという。

龍の卵とは
母親のお腹で温めれば
その子供が生まれる物なのだが。
それ故に
膨大な魔力エネルギーが
その卵に込められているという。
それを摂取すれば
あらゆる身体の不調が消し飛ぶと言われているほど。
また
「龍の卵」は別名「魔力の卵」とも言われていて。
エネルギー変換をして
1つ摂取すれば
大魔術を何度も使える程の魔力が
込められているという。

僕は『何に使うの?』と聞いてみた
しかし
ミカエルさんは
それを何に使うかは教えてくれなかった…。

それから僕とミカエルさんは
「龍の卵」が出来るのを待っていたのだが
数日が経っても
ララティーナからの連絡はなかった。

その事に
『さすがにおかしい』と思った長老は
アポ無しで龍の寝床へ訪れた。
すると
ララティーナが「龍の卵」を隠していた事が発覚したのだ。
長老はすぐにララティーナを
自分の屋敷に呼びつけた。

その話を役人から聞いた僕とミカエルさんは
長老の住む屋敷へ向い
二人がいる部屋へ
メイドさんに入れてもらった。

その部屋で彼女は
長老から叱責を受けていた。

長老は『何故だ!』『どうしてだ!』など声を荒げて
彼女を問い詰めている。
しかし
彼女はうつ向いたまま一切答えないまま。

その表情はまるで
不甲斐ない自分に嘆いている。
…というわけではなく
ただ時が過ぎるのを待っているかのようだった。

少しして長老の感情が落ち着き
ララティーナは龍の寝床へと帰された。
彼女がいなくなった後。
長老はため息を1つ吐く。

『すみません。お見苦しい所を…』

そう言って謝る長老。

僕達は長老に詳しい話を聞いたが
聞いた話以上の情報は分からなかった。

一体、何があったのか。
こればかりは
彼女に聞いてみないと分からないだろう…。

そこで僕は
長老に『彼女と話をさせてください』と申し出た。

それが予想外だったのか
長老は戸惑う表情を見せる。
僕は『何か理由があると思うんです』と言ってお願いすると。
長老はミカエルさんを見て
少し考えた後
その許可をくれた。

僕はお礼を伝え
ミカエルさんと一緒に
ララティーナのいる龍の寝床へ向かうのだった…。

龍の寝床へ到着して
その中に入ると。
ララティーナが
龍の側で優しい顔をしながら
その龍を見守っていた。

よく見ると
その龍のお腹の下には卵があった。

それを見て僕は
なぜ彼女が卵を隠したのか。
多分だけど
その理由が分かった気がした。

きっと彼女は卵を守りたかったのだろう。

僕はミカエルさんを見る。
ミカエルさんは頷いた。

どうやら僕と同じ気持ちのようだ。

僕は声を掛けた。

『こんにちは…』

その声に
ララティーナは驚き
敵意むき出しの表情を僕達に向ける。

僕はすぐに敵でないことを伝えた。

『ち、違うんだ…!。僕達はその卵を奪いに来たんじゃないんだ。君とお話をしたくて…』
『お話…?』

ララティーナの警戒心が
ほんの少し弱まる。

僕はその一瞬を見逃さず
彼女を刺激しないように
お話を聞いてくれるかの交渉を行った。
すると――。

『その男は出て行って』

ララティーナは
ミカエルさんを指差してそう言った。

恐らく
ミカエルさんが依頼主だからだろう。

僕はミカエルさんに
ここの入り口で見張りをお願いし
ミカエルさんは『分かりました』と頷き出ていった。

二人だけになった空間に沈黙が漂う。
すると――。

『で、話したい事って何ですか?』

ララティーナに突然そう言われ
僕は単刀直入に聞いてしまった。

『……その卵を報告しなかったのは、守りたかったからなの?』

ララティーナは少し動揺を見せるが
答えてはくれない。

その後も
僕は質問をしてみたが
彼女は曖昧な返事しか返してはくれなかった。

その時だった。
ララティーナの側にいた龍が首を上げる。
そして
自分のお腹で温めていた卵を気にしだした。
その様子にララティーナも焦り始める。

何だ…?

よく龍の腹部を見ると卵にヒビが。

もうすぐ赤ちゃんが誕生するんだ!

僕はララティーナに
『何か出来ることはないか?』と聞いた。

彼女はその申し出に驚きながらも
僕に指示をしてくれて
彼女を手伝った…。

それから数十分が過ぎ。
卵から孵った龍の赤ちゃんは無事に
その母親の母乳を飲み
今は落ち着きを取り戻し
その龍は子供をあやしている。
それは人と変わらない母の姿で
僕は心がほっこりとしてしまう。

その時だった。
彼女が『ありがとう…』と呟いた。
僕は『どういたしまして』と返して

あらためてあの質問を聞いてみた。

『その卵を隠したのは、やっぱり、この子を守りたかったからなの?』

ララティーナは長い沈黙の後『そう』と答えた。

僕は質問を続ける。
『それはなんで?』
『……同じ、命だから…』

彼女はそう言って
龍を守ることにした出来事である
自分の生い立ちを話し始めた…。


数年前。
この町で産まれたララティーナは
幸せな人生を送るはずだった。
しかし
彼女が産まれた数年後に
彼女の親族の後継者争いによって
彼女の親が殺されてしまった。
その後
彼女は龍の寝床に捨てられ
泣いていると龍の主が現れた。

その姿に幼い彼女でも
死を覚悟したという。

しかし
龍との関わりが
彼女の遺伝子にまで染み込んでいたからなのか。
彼女はその龍に襲われる事なく育てられた。

その境遇だったからこそ
同じ仲間が傷つくのが
耐えられなかったという。

驚きの話だが
彼女が話しているのだから
疑うわけにはいかない。

僕は心に痛みを感じた。

『話をしてくれてありがとう。でも、それを僕に話してもいいの?。町の人間ではないのに…』

そう言うと
彼女は目をそらす。

『手伝ってくれたから…』

恥ずかしそうにする彼女に
少し笑ってしまった。

こんな顔もするんだと思って…。


その時
見張りを頼んだミカエルさんが戻ってきた。

『おや…。その赤ちゃんは…?』

龍の赤ちゃんを見つけてしまったミカエルさん。
僕は良い言い訳を考えていると
ララティーナが怒気を含めて言う。

『龍の赤ちゃんよ!。名前は「ライ」!。何か文句ある?』
『あ、いえ。私はありませんが――』

『まさか…。こんなことになっているとはね…。ララティーナ』

ミカエルさんの後ろに長老がいた。

『長老様…』
『君には失望したよ。それが君の答えだなんてね』
『あ、いや――』
『もういい。ただ今をもって、君に与えられた責任者の任を解く』
『えっ!?』

ララティーナが凄く動揺した。

解任される事は
彼女に与えられた
「龍の寝床」の管理者としての
全ての権限を失うということで。
そして
それは龍を守れなくなることと同じだからだ。

僕は反論した。

『ちょ、ちょっと待ってください!?。私がいなくなったら、誰がこの子達を見守ると言うのですか!?』
『それなら心配は入らない。来なさい』

長老に呼ばれて現れたのは
僕が初めて「龍の寝床」へ訪れた時に
長老とミカエルさんの側にいた若者だった。

彼の名前は「リャク」
ララティーナとは別の龍守りの家系の人らしい。

その人を見て
ララティーナは長老に抗議する。

『リャクに任せるというのですか!?。彼は龍の事なんか、何一つ分かっていないのですよ!?』

リャクが口を挟む

『それは酷い言われ方だなぁ。僕だって龍守りの人。コイツらの事はしっかり管理できる。それに、君がどう言おうと、もう解任されたんだ。出ていってくれないか?』

ララティーナは拳を握りしめながら
リャクと長老を睨む。

『どうなろうと知らないですよ』

そう言って
彼女は龍の寝床から出ていった。

僕はここをミカエルさんに任せ
ララティーナを追いかけた。

彼女は
僕が前に通った抜け道で
うずくまりながら泣いていた。

大粒の涙が僕の心を締めつける。

僕はララティーナに声をかけようとした。
しかし
どのような言葉をかけたら良いか分からない。

僕は少し隙間を開けて
彼女の隣に座った。

すると
彼女が涙声を抑えようとしながら言う。

『私…間違っていたのかな?』
『………龍達を守りたかったんだから、間違ってはないよ。きっと…』

靄のかかった言葉しか掛けられない自分に腹が立つ。

『ありがとう…。でも私、これからどうしたらいいのかな…。もうこの町に私の居場所は…』
『…なら、一度、僕らの所に来る?』
『アナタの所に…?』
『うん。色んな人がいるし、一人増えても問題ないよ。それに楽しいと思うよ』
『楽しい…?』
『うん。ララティーナと同じくらいの子達もいるし、話が合うと思うんだ。まぁ、もちろんララティーナが良ければ、だけど…』

ララティーナは考えた後
頷いてくれた。

その後
探しに来てくれたミカエルさんにも事情を話して
長老の許可も貰い
ララティーナは
魔王城へ連れていくことになった……。

ララティーナが魔王城にやって来て数日。
最初は緊張していた彼女も
子供警備隊とお話ししていくうちに
自分の母から教えてもらった歌を披露するなどして
少しずつ慣れてきたようだ。

僕はその姿に安堵し
連れてきて良かったと思えた。

そんなある日。
魔城の庭で彼女と子供警備隊が遊んでいると
突然
龍が庭に降りてきた。

子供警備隊は
その龍に武器を向ける。
しかし
龍から攻撃はなく
一点にララティーナを見つめていた。

その意味にララティーナが気づく。

彼女はすぐに僕とミカエルさんを呼び
こう言った。

『ミアナが大変なことになっている』と…。

僕とミカエルさんとララティーナは
その龍に乗り
急いでミアナへ向かった。

ミアナが見えてくると
僕はミアナの惨状に驚いた。

龍達が暴れ回り
まるで戦争のようだった。

ララティーナは急いで
まだ町で被害の少ない場所に
乗っていた龍を着陸させた。

偶然にも
そこは町の避難所だった。

町の皆がララティーナに駆け寄ってきて
『どうか龍を静めてください』と助けを求めた。

ララティーナは頷いて皆に言う。

『リャクはどこなの?』

僕らは皆に教えてもらった場所へ行向かう。
すると
そこでリャクは体を丸め
小さく震えていた。

ララティーナを問い詰める。

『一体、何があったの!!?』

リャクは彼女の顔を見て謝りながら
震える口で状況を語った。

リャクが責任者に変わって数日。
彼は世界中からの依頼を
次々に履行していった。
龍の皮膚や鱗の採取など。
ララティーナが自粛していた
龍を傷つける依頼を次々と…。

そして
あのライの肉を採取しようとした時
近くにいた龍の主が暴れ出し
それに追随するように
他の龍も暴れ出したという。

きっと
仲間を傷けるリャクが許せなかったのだろう。

『何てことを…』

ララティーナがそう嘆いた時
骨髄を刺激するような龍の雄叫びが
ミアナ全体に響いた。

ララティーナは『主だ…』と言って駆け出す。

『どこへ?!』
『龍の寝床!』

僕達も後を追う。

龍の寝床に到着すると
その頂上で我を忘れて
雄叫びをあげている龍がいた。

あれが、主か…。

その威圧感と身体の大きさに
僕の身体が震えだした。
その足を叩く。

しかし
それでも震えが止まらない。


それを見ていたのか。
ララティーナは『アナタ達はここにいて』と言って
一人で龍の寝床へ走っていった。

着いて行きたかったが
何も出来ない自分に悔しさが込み上げる。

するとその時
鳴き声が聞こえた。
その方向に視線を向けると
そこにライがいた。

僕はすぐに駆け寄る。
どうやら怪我などはないようだ。

でも、どうしてここに…。

そう思った時
ライが主を見ながら鳴き声を出した。

『行きたいのか?』

そう感じた僕はライを抱え
ミカエルさんと一緒に
ララティーナを追いかけた。

龍達が破壊した瓦礫などをすり抜け
頂上へ登る階段までたどり着くと
そこにララティーナがいた。

彼女は僕を見て驚く。

『何で来たの!?』

僕はライを見せた。

『そう。その子が…。分かった。一緒に来て。多分、私一人では無理だから』

僕らは階段を登り
龍の主の前に立った。

ララティーナは大きな声で言う。

『主よ!。どうか怒りを静めてください』

しかし
彼女の声は主には届かず
主は大きな前腕を彼女へと振り下ろす。
僕は彼女の身体を掴み
間一髪でそれを回避した。

ただ
このままではやられる。

『何か落ち着かせる方法があれば…』

そう呟くと
ララティーナは周りを見渡し
ライを見つめた。

『そうだ…!』

ララティーナは立ち上がり
主に向けて歌を歌い始めた。

その歌はまるで子守唄のようで
主だけでなく
僕達まで安らぎを与えてくれるかのよう。

主は次第に落ち着きを取り戻し
僕らとライを見た。
主はゆっくりと顔をライに近づけて
ライの顔を舐めた。

仲間を想う優しい目で。

その様子を見てララティーナは安堵し
主に『皆を落ち着かせて』とお願いをした。
すると
主は町中に雄叫びを響かせ
その声を聞いた仲間の龍達は
暴れるのを止めて
龍の寝床へ戻ってきてくれた。

こうして
ミアナは平穏を取り戻した。

その後
ミカエルさんは長老とリャクに対し
この事態の責任を取らせることの通達と行政処理を行い
僕はララティーナと彼女が指揮を執る龍達と一緒に
町の復興作業を手伝った。

龍の鱗や真っ白な羽を見つけたりして
意外と楽しかった。
全てが一段落して別れの時。
ララティーナと町の人は
僕達に感謝をしてくれた。

その中で一番嬉しかったのは
ララティーナの笑顔が観れたこと。

皆と一緒に笑っている姿は
等身大の女の子に思えたからだ。


『では、行きますよ』

龍の騎手の声と同時に
僕達の乗った龍が飛び立つ。

その気持ちの良い風を浴びながら
僕達は魔王城へ帰るのだった………。
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