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2021年03月23日21:22

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回想

 俺が医学部入ったのは23歳の時。
 つまり高校卒業後5年経過していた。
 その間は純粋浪人ではなく、一時期東京理科大に通っていた。
 
 2浪して医学部に入れなかった俺は当時さすがに3浪の選択はなく、医学部の夢を諦めて理科大の物理学科へ入学することになった。
 医学部不合格になった時は、「ああ、やっぱりだめだったか」と割とサバサバしていて、もう別の道へ進もうと腹をくくり、でも心の片隅で卒業後に再受験の道もあるかな、なんてぼんやりと考えてはいた。

 理科大入学までの時間、俺は夏目漱石の坊ちゃんを読んでいた。
 主人公の坊ちゃんは東京物理学校を卒業して、愛媛県松山市の中学校に数学の教師として赴任する物語。
 知ってる人も多いと思うが、東京物理学校は東京理科大の前身。
 そんなわけでなんだか無性に坊ちゃんを読みたくなったのだ。
 一気に読み終えた俺は
 「ああ、俺は4月から理科大生になるんだなあ」
 そんな自覚が芽生えたのを思い出す。

 そんな感じで過ごしていたんだが、一度だけこんなことがあった。
 
 入学前のある日、暇だった俺はいつものように渋谷までブラブラ歩いていたんだが・・・
 その途中で突然、
 「あ、俺は医学部に落ちたんだ。医者になる夢は叶わなかったんだ」
 そんな感情が、ホントに突然湧き上がってきて、ジワッと涙が出てきたことがあった。
 
 医学部落ちて泣いたのは、後にも先にもこの時だけである。

 ・・・勤務医引退まで、あと8日。
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