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2021年02月24日00:21

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「パレード」(愛知県芸術劇場)2/13

2017年の初演も見ましたが、今回の再演はあの頃とは世の中もずいぶんと変わってしまって、ますます、今これを上演することの意味が明確に強く打ち出されているように思いました。本当に、無事に幕が開いて、名古屋にも来てくれて、観劇できて良かったと心から思います。
南部アメリカの、人種問題、冤罪、いろんな人の思惑が色々入り乱れて、ユダヤ人のレオが犯人に仕立てられていく中で、ユダヤ人への差別的な人々の思いと同時に、そのレオにだってどこかに感じた差別的ななにか。きっとみんな意識無意識に持っているのかもしれないと思ったら、誰もがあのどちら側にもなり得るんだろうな、と怖い気持ちになります。たぶん、あのなかのみんな、誰もが自分が正しいと思って行動してるんだもの。正しいと正しいがぶつかりあって、こんなにも分かり合えない溝があるって、わかっていても突き付けられるとなんだかすごく重い気持ちになります。
冒頭の大きな木のシルエットが赤い背景に浮かび上がるのが怖いくらいに美しくて、不安をかきたてます。そして賑やかなパレードに降り注ぐ色とりどりの紙吹雪は、ステージの床をすっかり埋め尽くすほどにものすごい量。そういう色彩にあふれた場面と、事件のあらましを語る場面なんかではモノクロで空間の一部をきりとるような光の使い方が対照的。そうして、色と光がとても鮮やかな印象をもって物語をいろどるのが心に深く刺さります。
そうした重すぎるテーマの物語を歌うメロディーは美しいんだけど、ものすごく難しそう。それを確かな歌唱力で歌い上げていく役者の皆様の歌声がとにかく素晴らしい。

石丸幹二さんの神経質で勤勉なレオと、堀内敬子さんのお嬢さんが少しずつ強くなっていくルシールの夫婦が少しずつ絆を深めていくのが素敵でしたけど、結末が結末なだけに、なんともやりきれない気持ちになります。ピクニックのシーンとか、あんなに幸せに寄り添う二人なのに、そのあとが衝撃的すぎて、幸せなシーンから暗澹たる気持ちになってしまいます。でも、ラストシーンのルシールの毅然とした表情に少し救われた気持ちになりました。
犯人を仕立て上げていく石川禅さんの検事も、人々の気持ちを巧妙に煽動していく今井清隆さんも、新聞記者の武田真治さんも、それぞれの思惑で動いている大人のいやらしさが実に見事に出ていました。そんな中で、殺されたメアリーのことを唯一純粋に悲しんでいるフランキーの一途さが際立ちました、内藤大希くんってこんなまっすぐな雰囲気が可愛くて良いですね。

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