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2021年02月01日09:32

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1月の読書記録

とりあえず6千頁行ったということで、一年のスタートとしてはまずまずかな。とにかく先月の頭は埴谷の『死霊』にかかりっきりだったという印象が…後、ナイスが300近く付いたのが嬉しい。この調子で今年も本を読んでいこう。

2021年1月の読書メーター
読んだ本の数:17冊
読んだページ数:6036ページ
ナイス数:295ナイス

https://bookmeter.com/users/4147/summary/monthly
■二百十日・野分 (岩波文庫)
隠れた味わい深い佳作というべきか。これまで殆どノーマークだったが、いざ読んでみたら意外な程楽しめた。「二百十日」は主人公二人の軽妙なやりとりが魅力。この辺りの言葉遣い息遣いは落語の影響が強いのだろうな…と思わされた。個人的には「野分」の方に惹かれるものがあったか。後の作品に通ずる近代インテリ青年が抱える鬱屈がかなりリアルに描かれているのが印象的。やや唐突な結末が残念だったが、著者としても不本意だったというから、さもありなん。道也と高柳との関係はもっと膨らませて描くことができたはず。加筆修正版があれば…
読了日:01月31日 著者:夏目 漱石
https://bookmeter.com/books/11226331

■旅のラゴス (新潮文庫)
こんな作品も書いてたんだ…とにかく著者の多彩な才能に改めて驚愕。千夜一夜物語を思わせるファンタジーな要素とSF的要素が入り混じったハイブリッドな世界というか。こういう何でもありな感覚というのは、後の世代にはなかなか育たなかった気がする。若かった主人公が、旅を経るに連れて年老い、自分の生まれ故郷に戻る…ありがちな話ではあるけれど、自分も年齢を経るにつれ、そういうストーリーが何とも言えず身に沁みるようになった(笑)。解説にもあるように、そこで話が終わらないのが胆。ラストが何とも言えない深かい余韻を残す。
読了日:01月29日 著者:筒井 康隆
https://bookmeter.com/books/575395

■風よ あらしよ
まるで大杉と野枝を実際に目にしているかのような躍動感とリアリティに溢れた記述に驚愕。本人達にとっては、ごく当たり前のことが、どうしようもなく世間とぶつかってしまう。そのことに憤りもしながら、逆に生きる糧にしているかのような二人の不屈な生き方を称賛したくなると共に、つい自らに問いかけたくもなる。「こんな生き方果たしてできるか?」と…その無惨な結末は予め分かっている。でも、何とかして、その不幸な結末から逃れさせてやりたい…読者の多くはそんな気持ちに駆られたのではないか?終盤の村木と魔子とのやりとりが切ない。
読了日:01月29日 著者:村山 由佳
https://bookmeter.com/books/16514708

■神学の技法: キリスト教は役に立つ
前々から読み返さねば…と思っていたが、ようやく再読。今回読み返してみて、カトリックに対してかなり辛辣なのが気になったが、初読の際にも同じような感想を述べていた(笑)。また、本書は繰り返し読む必要があることも改めて認識。今回は幾度となく傍線を引きながら読んでいた。イエスという実在したかどうか証明できない人間とその教えを信仰の対象にする。そしてその信仰を根拠づけるためにキリスト教神学は作られた。本来なら二重三重にも危うい性格を持つはずの神学が驚く程の知的営為を成し遂げてきたという事実に改めて驚愕した次第。
読了日:01月26日 著者:佐藤 優
https://bookmeter.com/books/12772714

■エセー〈4〉
結局、一体何の話だったのか?訳者が最も難関と謳っていたため、かなり身構えて読み進めたが、理解の程はともかくとして、文体は平易だったため、わりにサクサク読み進めることができはした。しかし、首尾一貫した流れがあるようなないようなという、かなり取り留めなのない内容という印象が拭えない。実際、章立てが全くないという原著に章立てを施すという試みもなされたらしいが、さもありなん。解説にもあるように、スボンを弁護すると題されていながら、スボンへの反論も見受けられるというのだから、その意図するところは不可解極まりない。
読了日:01月24日 著者:ミシェル・ド・モンテーニュ
https://bookmeter.com/books/620708

■エンガッツィオ司令塔
人前で読むのが憚られるようなこの表紙が示唆するように、エログロナンセンス色が強い短編集。断筆解除後一冊目の短編集というだけあって、勢いがあったのか。圧巻はやはり表題作。あそこまでのスカトロネタを大っぴらにやれる書き手は後の世代にはいないのでは?また、かなりの割合を占める七福神を主題にした一連の短編は、素直に楽しめたという感じか。こういう駄洒落をも盛り込んだナンセンス作品もある意味筒井の真骨頂。大阪のベタなノリを基調にしつつ、都会的なハイセンスも匂わせるのはさすが。後書きは、今日の自粛傾向への警告でもある。
読了日:01月20日 著者:筒井 康隆
https://bookmeter.com/books/510159

■邪眼鳥
ウーム…断筆宣言後復活第一作目ということで変に力が入っていたということか?謎が謎を呼んで、結局何も解決しないというオチは一つのスタイルとしてはありだが、個人的に感心しない。特に表題作は前半、その後の波乱とその顛末が期待できそう…と思っていたのだけれど、今一つ必然性を感じさせない転生エピソードを盛り込んだ挙句の唐突な終わり方で肩透かしを食らった気分。転生という要素を盛り込むのなら、もう少し話を広げて綿密に書き込んで欲しかった。併録作の悪夢的迷宮ワールドもどこか食い足りなさを覚えるというのが正直なところ…
読了日:01月19日 著者:筒井 康隆
https://bookmeter.com/books/508961

■ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー
このタイトル、一見何のことかよくわからないけれど、実はすごくシンプルかつ的確に本質を表していて、やっぱり作者は頭とセンスがいいな…と思っていたが、実はオリジナルは息子さんだったとのこと。スゲエ…ある意味日本に似たところもあるが、日本以上に複雑で、何かにつけ深刻な問題が山積みのイギリス。でもかつてビートルズやパンクを生み出したロック的なものが今も根強く生きていることに感動さえ覚える。何より元底辺校である中学校の事情は色々と問題もあるが、全体としては前向きなのに好感が持てる。全中学生とその保護者の必読書。
読了日:01月18日 著者:ブレイディ みかこ
https://bookmeter.com/books/13789029

■道 (新潮文庫)
日本には、こんなに色々な土地があるんだ…あまりに馬鹿みたいな言い方だが、ついそんな言葉が出る。40年以上も前に出たものなので、書かれている状況も少なからず変わっているだろうけれど、それでもその土地それぞれが持つ根底的なものは変わっていない…と信じたい。そう思わされるくらいに、著者のその土地の文化、自然、風土に対する眼差しは鋭いのと同時に多大な優しさと愛に満ち溢れている。育ちの良さや教養がこれ程まで嫌味なく受け止められるというのは稀かも。今時の自称愛国者はこういう日本の文化にどれだけ精通しているのか。
読了日:01月17日 著者:白洲 正子
https://bookmeter.com/books/4548413

■山の音 (新潮文庫)
年老いていくこと…人生の折り返し地点をとうに過ぎてしまった者には、主人公信吾の姿は何かにつけ身につまされてしまう。還暦を過ぎても、息子の嫁に仄かな思いを寄せたり、会社の若い娘とダンスに興じたり、年甲斐もなく淫靡な夢を見たり…とりあえず老害の域まで堕していないのが救いか。そんな老人の姿を描きながらも、随所にハッとさせられるような表現や、細やかな感情の機微を盛り込ませるのはさすが。それでもやはり今日的な目から見たらつい突っ込みたくなるような箇所が散見されるのは否定できないが。また戦争の爪痕が妙に印象的。
読了日:01月16日 著者:川端 康成
https://bookmeter.com/books/544585

■俗物図鑑 (新潮文庫)
70年代初頭の日本はかくもアナーキーで猥雑で何でもありだったのか…もちろん、当時の状況そのままではなく、かなりデフォルメ化、あるいは戯画化されてはいるのだけれど、でもその空気感がかなりリアルに再現されている気がする。昨今のやたらとコンプライアンスを配慮して、何かにつけ逃げ腰になったマスコミとは違って、とにかく面白ければ何でもいいというやたら強気なマスコミ関係者の姿がとりわけ印象的。それでいながら、今日のマスコミとも一脈通じるところもあり、その比較が面白い。そして何よりカタストロフへと向かう最終部が圧巻。
読了日:01月14日 著者:筒井 康隆
https://bookmeter.com/books/565836

■七瀬ふたたび (新潮文庫)
カタストロフへの予感を抱かされながらも、何とかそれを回避して欲しい。そう願いながらも、それはあっけなく裏切られる…テレパスという特殊能力を得たが故の孤独に苛まれながら、幾人かの同胞を得、一時の心の安らぎを得る七瀬。それでも常に危険と隣合わせという皮肉。また、見たくないものまで見えてしまうというテレパスの特殊能力も、考えようによっては途轍もなく切ない。個人的にゾッとしたのは、最終部で、警察が殺人集団へと豹変する件。異端者排除の論理は意外と簡単に人を変えてしまうのかも…続編が存在するのに、救いを感じた。
読了日:01月13日 著者:筒井 康隆
https://bookmeter.com/books/575390

■眠れる美女 (新潮文庫)
あんな枯れた、脂っ気を感じさせない、ストイックにも思える風貌で、こんな小説を書いたのか…とういうのが、第一印象。実は結構変態とは聞いていたけど、ここまでとは…表題作における、主人公を含む老年に達した男性の若い女性に対する執着心には、嫌悪感と同時に主人公の年齢に達するのがそう先のことではない我が身をつい思ってしまう。それはともかくとして、妄想が生み出したにしては、過剰なまでに細部まで描き尽くした、女体の描写が秀逸というか、常軌を逸してるというか…最後の「散りぬるお」は今日のフェミニズムの視点からみてどうか…
読了日:01月10日 著者:川端 康成
https://bookmeter.com/books/570720

■雪国 (新潮文庫)
思っていたのと、ちょっと違うな…というのが第一印象。もっと淡々とした内容を想像していたのだが、ラストは大惨事で締めくくられるし、駒子は意外と激しい性格だし、何より実は結構エロい描写が多い(笑)。それはともかくとして、思わず傍線を引きたくなるような美しい表現が随所に見られるのは、さすが。後、主に島村と駒子の関係性を描いたものと思いきや、葉子という存在が時に微妙に、そして最終的には大きな影を落とすというのが肝か。個人的に駒子のキャラクターにかなり惹かれてしまった(笑)。ちょっとうざいけど妙に憎めないというか…
読了日:01月09日 著者:川端 康成
https://bookmeter.com/books/563682

■死霊(3) (講談社文芸文庫)
結局、何の話だったのか?あまりに身も蓋もないが、これが正直なところ。存在を巡る、観念的な言葉を弄したやりとりが延々と続くのには、かなり辟易。この小説が一部で熱心に読まれたというのは、やはり時代性によるものだったのでは…と思うことしきり。ただ重厚な文体には独特な魅力があり、そこに惹きつけられて読む人がいたというのは理解できるか。観念的なものに取り憑かれ、そこから抜け出せなくなった男達と、その男達に翻弄されながらも、それを受け入れる女というのは、今日的に見ればアウトだろう。今後、再読するかどうかは微妙…
読了日:01月08日 著者:埴谷 雄高
https://bookmeter.com/books/498601

■死霊(2) (講談社文芸文庫)
徒に小難しい内容にしているわけではない。著者なりの切実な思いを持って書かれている小説ということは理解できるのだが、それでも「何だかね…」という思いが拭いきれないというのが正直なところ。同じ構成やストーリーでも、もう少し描き方を今時のエンタメ小説風にアレンジすることも可能では?てなことをふと思ってしまった。読んでいて何より辛いのが、一貫したストーリーがあるようでないこと。これだけ、登場人物が限られているのに、統一した流れを感じない小説も稀かも。巻末の鶴見俊輔による解説が、本作の理解の助けになるのが救い。
読了日:01月06日 著者:埴谷 雄高
https://bookmeter.com/books/498600

■死霊(1) (講談社文芸文庫)
かつてはこんな小説が一部で持て囃されていたんだな…というのが正直なところ。魅力がないわけではないが、古色蒼然という印象が拭えない。観念的な物言いを弄して、お互いに相手を煙に巻こうとして繰り広げられる会話には若干食傷気味。著者自身、別に読者を煙に巻こうとか、観念を弄ぶという意図があったわけではなく、切実に何かを訴えるために、この小説を書いたのだろうということは理解できるのだけれど、その後多種多様な小説が登場し、半ば何でもあり状態になった昨今、あえてこの小説を読む価値は果たしてあるのか?という気がした。
読了日:01月03日 著者:埴谷 雄高
https://bookmeter.com/books/523770


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