18960406 NO4301 朝鮮問題（朝鮮国王のロシア館移御）に関する英外相との面談の件
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010_0010_0120 駐韓日本公使館記録 10巻 一. 本省来機密公信 (12) [朝鮮問題に関する英外相との面談の件]
文書題目 (12) [朝鮮問題に関する英外相との面談の件]
文書番号 機密送第二二号
発信日 明治二十九年四月六日 ( 1896年 04月 06日 )
発信者 外務大臣 伯爵 陸奧宗光
受信者 在朝鮮 弁理公使 小村寿太��
(12) [朝鮮問題に関する英外相との面談の件]
機密送第二二号
朝鮮問題について英国外務大臣・ソールスバリー侯と面会の件に関し、在英・加藤公使より別紙の通り報告がありましたので、御参考のため右写しを差し進みます。
明治二十九年四月六日
外務大臣 伯爵 陸奧宗光印
在朝鮮 弁理公使 小村寿太�� 殿
[別紙]
文書題目 朝鮮問題についてソールスバリー侯と面会の件の情報
朝鮮問題についてソールスバリー侯と面会の件の情報
機密第一三号
去る十九日付「機密第十二号」末段に申し進んで置きました通り、同日午後ソールスバリー侯に面会し、その談話の要領は即刻電信をもって別紙「写し」の通り具報致して置きましたがなおその詳細を次に申し進みます。
さて同日会見の初めにおいて本官は大要朝鮮の近事を述べ御電訓の通り一私人の資格をもって同侯の意見を尋ねましたところ、同侯においては
「本件について既に在京城・英総領事よりの具報に接しその大要は承知しているが、朝鮮国王が露国使館に赴かれていますことは必ずしも重要な関係がある事柄とも認めない。もっともその後の成り行き如何によっては分からないが、今日までのところでは別に何等の意見をも有していない。」
との答なので、本官はさらに
「露国水兵の入京は国王逃避の前日にあったので双方の間には予め約束が整っていたはずで、これらの事情は軽々に見過ごしにくい事態を示しているのではないか」
と申し述べましたが、
「京城においては時々不虞の変があるだけでなく、国王も至極神経質な人であるかに聞き込んでいるので、またも何かの風声に驚かされ、同国における最強者の保護を依頼されたのであろう」
と事も無いように答えたのは、同侯において露国を朝鮮における最強力と期待していることが認められるところであります。
このようにソールスバリー侯は今回の朝鮮事件を全く重要視していない趣があるので、なお本官は
「なにかこの事件に関し露国の意向を問われたことはあるか」
と尋ねましたところ、同侯は
「事件後まだ露国大使とも会っていない」
との簡単な答であったので、
「そうだとするなら貴方から進んで露国政府の意向を質問する考えはないのか」
と尋ねたところ
「今日までのところでは別に外交的質問を提起しなければならない理由を認めない」
と答えたが、更に一転して同侯から
「元来本件について最も直接の利害を感じるはずの貴国政府の意見はどうなのか」
と反問して来たので、私の本当の意向を知ろうと希望している有様に見受けましたが、これは本官の承っていない事柄ですので、また一個人の資格であれこれ申し述べる筋合でもないと考えましたので、
「単にまだ何分の報道に接していない」
と答えて置きました。
続いてさらに大局に移り、極東における露国の南下に対する同侯の意見確かめたくこの件につき質問を起しましたところ、
「もし露国が太平洋岸に新港口を得ることがあるとしても、その港口を貿易港とするに止め、砲塁などの兵備を設けず、また新港口を手に入れるのに平和の手段をもってする以上は英国において故障を容れるに及ばないだろう」
とのことであったので、本官は
「太平洋岸の港口にあってしかも一年中氷結しない港口は目下皆他の独立国に属している。それなのにこれを平和の手段で得るとはどのような方法を意味するのか」
と重ねて尋ねましたところ、
「例えば買収などもその一手段である」
と答えましたので、
「そう言うことであるならば、買収した後で時機を看てその港に砲塁を築くなどの手段を取ることもありうるわけで、最早その場合に至っては異議を容れることはすこぶる難事となるであろう」
と切り込みましたところ、
「完全な軍港となすには莫大の費用を要することで、露国政府が容易になし得るようなことではない」
と答え、
「いや、露国は財政上仏国の援助を持っているので一つの軍港を修築することは決して困難ではないであろう」
と言うと
「露国も新設中のシベリア鉄道はあり、中々容易に軍港までには手回しは出来ないだろう」
といってこれまたほとんど要領を得られる答がなく、終に当日はこれで別れました。
これをまとめると、英国政府は先便でもって申し進みました通り目下懸案中の交渉事件に全脳を費してほとんど他を顧みる暇がないだけでなく、その露国に対する政策も自ら前日と異にして、ロシアが何れのところで不凍の港口を得ようとするのは自然の希望であり、永久に抵抗できるような性質のものではないことを承認し、むしろ比較的に自国と利害の関係の薄い東アジアの北海岸においてその希望を達せさせ、それによって英露両国の衝突を避けようとの企図も無くはないようだ。
当国民間の輿論もまたその傾向を同じくしておりますので、もし露国が今後非常急激の侵略手段を取るのでなければ、あるいは英国は全く傍観者の位置に立つようで、要するに英国が先年ポート・ハミルトン（＊「朝鮮南部の巨文島をさす。当地は1885年 4月15日 から 1887年 2月27日 までのあいだ、 イギリス海軍 によって占拠された 」）を占領し露に先んじてその南下の勢いを制したような勇気と機敏の働きとは、今日において待ち受けられない景況に見えます。
以上具報に及びます。 敬具
明治二十九年二月二十二日
在英 特命全権公使 加藤高明
外務大臣臨時代理 侯爵 西園寺公望 殿
追而 過日当国外務次官へ面会し、本件に関する当国政府の意向を尋ねました時、同官より「この質問は日本帝国政府の訓令によって質問するものであるのかどうか」と尋ねられましたが、御電訓の趣旨に従い「単に本官個人の考えで帝国政府へ報告するため質問するものである」と答えて置きました。しかしながら、これらの場合において我が政府の訓令によって質問することと、本官個人の資格をもってすることとは、先方の考えにおいて多少軽重の差もあると存じましたので御参考までに申し添えて置おきます。
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