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2020年12月20日18:55

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99 詩・短編を書いてみた(第1933回)

短編・詩を書いてみました(^_^)
素人が書いたので
気に入っていただけるか分かりませんが
一生懸命に書いてみました
暇なときにでも読んで
楽しんで頂けると幸いです(^_^)b


「君の音色が聞きたいのに」

〓〓〓〓〓〓〓〓
【あらすじ】
彼は世界的なピアニストだった。
その技術は本当に美しく
批判的な人間も彼が一章演奏すれば
たちまち声が止んでしまうほど。

私はそんな彼が大好きだった。
愛していた。
この身が音色で焦がされるほど。

だけど
美しい花ほど短命で
彼もそれからは逃れられなかった。

最後に弾きたい…。

そう言っていたのがこのピアノ。
名前を「ミリアロット」という

その道を目指すものなら誰もが知っている。

彼に弾かせてあげたかった………

―――――――

ピアノの鍵盤を1つ押す。

心地の良い「ミ」の音が鳴った。
でも私は悲しくなる。

こんな音なんて…
私を含めた
ただピアニストなら誰でも出せる。

でも
私が聞きたいのはこの音ではない。

私は彼を思う。

アナタが鳴らしていたら、
どれだけ綺麗な音色だったのでしょう。と…

そんな叶いもしない願いを口にする私。

私は別の音を鳴らす。

また美しいと思ってしまうような音が響いた。

私は楽譜台に視線を移す。
そこにはアナタが私に弾いてほしくて
託した楽譜が置いてある。
最後にアナタが座れば
それで何もかもが揃うのに…。

力が抜けるように
自分の身体が崩れ落ちた。

身体が鍵盤を押して濁った音色が響く。
涙を流す私。

どれだけ泣いても現実は変わらないのに…。

ふとピアノの足元を見る。
そこには楽譜が落ちていた。
私が崩れ落ちたときに当たってしまったのかもしれない。

私は楽譜を拾い上げる。
1つ2つ3つ4つ…。

ん…?

私は楽譜にメモのようなものが書かれていることに気づいた。

最後の一枚に私が知らない楽譜と
その隅っこに「新作」と書かれていたのだ。

私は驚いた。

彼は演奏する才はあっても
創作する才は全くなく
たった一度たりとも
曲を作ったことは見たことはないからだ。

私は席につき
その楽譜に書かれている鍵盤を1つ押した。

綺麗な音色が響く。

鳴り終わるタイミングでもう1つ押していく。

それはゆっくり。
しかし時には激しく。
楽譜の一列目には怒りの想いを込めた。二列目には悲しみを。
三列目には喜びを。
四列目には慈しみを。
五列目には貴方への想いを…

全てを弾き終え
私は楽譜を手に取る。
すると
楽譜の紙の間から何かが落ちた。

それは私の名前が書いてある封筒。

封を開けて中を見ると
手紙が入っていた。

― ― ― ― ―

この曲はどうだっただかな?
喜んでくれたら嬉しいと思う。

今日は驚いたと思う。
こんな会場を押さえてと言ったのに
来ているのは君だけだったから。
実は今日、来てもらったのは、この曲を聞いてもらいたかったからなんだ。
この曲は、君のために書いた曲だ。
君と過ごして感じた「哀しさ」「怒り」「楽しさ」「喜び」。
それを曲に起こしてみたんだ。
言葉が上手くない僕は
こんな形でしか君に感謝を伝えられない。
でも君には本当に感謝をしているんだ。
たった一人ではあの景色を見ることは出来なかった。
君の人生に出会えたから
僕の人生は変わったんだ。
いつも君に感謝をしている。
足の先から髪の先まで感謝しているんだ。
だから、これからも一緒にいてほしい。
結婚してくれませんか。

― ― ― ― ―

彼はここに来て
これを弾くつもりだったんだ…。

ほろほろと溢れ出す涙。

私は…。
私は…。

後悔の涙ではない。

喜びの涙でもない。

どれのモノでもない涙が溢れて止まらない。

そして
自分の心をかき乱す感情が
怒濤のように溢れ出す。
それは壊れたような感覚と同じだった。
私はピアノを叩き
感情の吐き出す。

荒々しく。
だけど優しく。
そして感謝を込めて弾いた。

その音色は
人々の足を止めてしまうものだったという………。



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