『天寿国の末裔』「吉備眞吉備のみやげ話」
【天平七年】(７３５)
○『三月七日 遣唐使多冶比真人廣成等帰朝す。』
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『吉備眞吉備(僧・玄��)』≪漢籍将来≫
○『四月二十六日 下道朝臣眞吉備・僧玄�卦�朝し唐禮・一切経等を将来す。』
（吉備）眞吉備と玄�靴�帰朝した。安部仲麻呂は唐の都に留まった。霊亀三年（この時二十三歳）に入唐して十九年が過ぎていたが、遣唐使の任期としては普通であると云う。この時多冶比真人廣成も三月に帰朝している。乗った船が違ったため一月早く着いたのだろうと推察できる。
この時、僧玄�靴亙�教典五千巻を持ち帰っている。
眞吉備も同じく、「唐礼」百三十巻（高宗の「永徽礼」と云われる）、「大衍暦経」一巻（「僧一行大衍暦と云われる」、「大衍暦立成」十二巻・＜大衍暦義＞、「楽書要録」十巻（則天武后撰の「武后楽書要録」十巻と云われる）や、「東観漢記」・「史記」・「漢書」・「後漢書」等を持ち帰ることが史実に残る。しかし外にも眞吉備将来と云われる書物が多数あり、眞吉備の後の活躍を見るなら僧玄�靴諒�教典五千巻に劣らぬほどの相当数の典籍を持ち帰っただろうことが推察される。
他にも「測影鉄尺（天文用具）」、「銅律管・鉄如放響・写律管声十二条（楽器）」、
（中国思想史 上 ｐ．４９ 森三樹三郎著 レクルス文庫 ）
★眞吉備のみやげ話（『中国思想概観』）
中華の国は「殷」より始まるのですが、実はこの頃の中国のことはよくわからぬのですが、この頃のこの国の王は「帝」と云われており、天の神はすなわち「天帝」であったと云われます。
その後の「周」の時代には「封建制」という政治制度がありました。その国の中心は「王」であり、一族の子弟を各地の諸侯に封じ、王室の繁栄と守りにその任を当たらせました。地域により豪族の力が強ければこれと婚姻関係を築き、同族意識を持たせ体制に組み込んだようです。
これにより王（天子）は諸侯と親子兄弟の関係になり、天下一家の大家族主義がこの治世を築きました。
よって周の時代は約九百年の長きに渡り続いたのですが、親子兄弟の関係も長きに過ぎると血の繋がりの薄くなり、力（政治力）の時代が訪れます。
春秋戦国時代の始まりです。覇を競う諸侯による武力衝突の始まり、または群雄割拠・下克上の時代でしょうか。大きな大地の上、戦争は大規模であり長期戦となります。即戦力としての兵士も大事ですが、政経に明るい軍師・文人が中国では重用されます。ここに諸子百家と呼ばれる人々が出てきます。
『漢書』にては大きく儒家・道家・陰陽家・法家・名家・墨家・縦横家・雑家・農家の九流にて区別しております。主に政経や軍学の色彩が強いのはその頃の時代の繁栄でありましょうが、天道・人道に趣旨のあるものもございます。
（中国思想史 上 ｐ．４９〜５３ 森 三樹三郎著 レクルス文庫 ）
その後に国家統一を成した、秦の始皇帝の時代（前259〜前２１０）が始まります。法家・韓非子を招き郡県制を立て、宮廷より役人を派遣する中央集権制度を確立しました。、
度量衡・通貨・文字・車軌などを統一します。その国家統一は思想の領域にも及び、法家だけが正しく、他の流派は間違いであるとして禁圧・焚書してゆきます。また政治を批判する者を容赦なく処断しました。これは後に「焚書坑儒」と云われます。
このように徹頭徹尾の法家思想による国家統一ではあったのですが、秦の時代は始皇帝の死と共に政権は十五年の短命となりました。たった二人の農民兵士の反乱が燎原の火の如くに中国全土に火が広がり、圧倒的な民衆の支持を得て始皇帝の息子の二世皇帝は四年後に民衆の手により倒されたのです。
ｐ．２０６〜
それは言い換えれば法家思想・法治国家の限界であり、法には権力の発動がございますれば、法権力の民衆への濫用となったのでございましょう。
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およそ中華の国には より士大夫（官吏）という役人が政治の表舞台に立ち内政を司ります。科挙という試験をして、市井よりも優秀な人材を登用するのです。儒学・文学の
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