mixiユーザー(id:63872252)

2019年08月15日04:53

98 view

君を見る

ブラウン管テレビに
VHSビデオを入れて
アニメーションを見ていた頃の君を

土砂降りの中
強風で折れた傘の骨を
背後に回し帰った頃の君を

君のその頃を知らない僕は
その頃の君を見る

運動靴で明日の天候を占うその技術も
知らない間に衰えて消えてしまったね

消えてしまったそれは
なんで消えてしまったのだろう

大きくなるに連れ
より正しいものを知っていくから
大きくなるまでに
時代は移り変わってしまうから

みんなみんな
そう言うけれど
それは本当は違うんだよね

あの頃からずっと続けていれば
まだその技術は靴に宿っていたもの

消えてしまったのは
ただ続けなかったから
それだけなのにね

秘密基地も
お家に帰るまでの独自のルールも
続けていれば今でもあったはずだった

何故か言えなくなったこと
それが言えなくなったのは
それを言わなくなったから

君はあの頃こう言っていたよ
先生に教えてあげなきゃ
って言っていたよ

塩が足りないなら
涙を流して乾かして
集めればいいよって

別に大きくなれなくてもいいよ
大きくなったらなっただけ
しゃがまないと
世界の段差は見えなくなるんだよって

上靴は横向きで止まったのに
雷にならなかった
残念
でもね占いが外れたわけではないよ
占いで晴れを出した人の方が
多かったってことだよって

折り紙の鶴の隙間に隠れた
あやとりの四段梯子の紐と紐の間に絡んだ
続けると続けないの狭間で育った
あの頃の君はそう言っていたよ

君を見る

光化学スモッグの
一体何が危険なのかを知らないまま
急いで窓を閉めていた頃の君を

プールではびびりながら目を洗い
ジャンプ台の上では
二重跳びを延々と披露し
誰かを好きになった頃の君を
そしてもうすぐ幾つかを止める頃の君を

それは続けていればあったものだと
それすら言わなくなってしまった君に
もう一度靴を蹴る術を

君のその頃を知らない僕も
その頃の君を見る

君を見る



0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する