君を見る
ブラウン管テレビに
VHSビデオを入れて
アニメーションを見ていた頃の君を
土砂降りの中
強風で折れた傘の骨を
背後に回し帰った頃の君を
君のその頃を知らない僕は
その頃の君を見る
運動靴で明日の天候を占うその技術も
知らない間に衰えて消えてしまったね
消えてしまったそれは
なんで消えてしまったのだろう
大きくなるに連れ
より正しいものを知っていくから
大きくなるまでに
時代は移り変わってしまうから
みんなみんな
そう言うけれど
それは本当は違うんだよね
あの頃からずっと続けていれば
まだその技術は靴に宿っていたもの
消えてしまったのは
ただ続けなかったから
それだけなのにね
秘密基地も
お家に帰るまでの独自のルールも
続けていれば今でもあったはずだった
何故か言えなくなったこと
それが言えなくなったのは
それを言わなくなったから
君はあの頃こう言っていたよ
先生に教えてあげなきゃ
って言っていたよ
塩が足りないなら
涙を流して乾かして
集めればいいよって
別に大きくなれなくてもいいよ
大きくなったらなっただけ
しゃがまないと
世界の段差は見えなくなるんだよって
上靴は横向きで止まったのに
雷にならなかった
残念
でもね占いが外れたわけではないよ
占いで晴れを出した人の方が
多かったってことだよって
折り紙の鶴の隙間に隠れた
あやとりの四段梯子の紐と紐の間に絡んだ
続けると続けないの狭間で育った
あの頃の君はそう言っていたよ
君を見る
光化学スモッグの
一体何が危険なのかを知らないまま
急いで窓を閉めていた頃の君を
プールではびびりながら目を洗い
ジャンプ台の上では
二重跳びを延々と披露し
誰かを好きになった頃の君を
そしてもうすぐ幾つかを止める頃の君を
それは続けていればあったものだと
それすら言わなくなってしまった君に
もう一度靴を蹴る術を
君のその頃を知らない僕も
その頃の君を見る
君を見る
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