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2019年09月03日19:13

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8月の読書記録

先月も思った程読めなかったか。とある事件に巻き込まれてさえいなければ、ほぼ確実にもう一冊読めたはずなのだが…後、半分以上が女性による作品というのが特徴的と言える。9月はもう少し頑張って読もう。

2019年8月の読書メーター
読んだ本の数:17冊
読んだページ数:5282ページ
ナイス数:147ナイス

https://bookmeter.com/users/4147/summary/monthly
■書記バートルビー/漂流船 (古典新訳文庫)
とにかくバートルビーの人物造形が強烈。その仕事ぶりからして、ある程度の知能はあるはずなのだけれど、かなりの常識はずれで融通がきかず、一定の領域以上のコミュがほぼ不可能。ここまで極端ではなくても、こういう人っているよな…とまた後代の漫画や小説でも同じタイプの人間が描かれている。まさにその嚆矢というべきか。また、「漂流船」は読み進めていくうちに何とも言えないジリジリとした焦燥感と苛立ちを覚える不思議な感触。そしてその感触の原因ともいうべき物語の真相にはかなりびっくり。アメリカの人種問題の根深さを痛感した次第。
読了日:08月30日 著者:メルヴィル
https://bookmeter.com/books/9850502

■彼女は頭が悪いから
「非さわやか100%」という謳い文句が誇張に思えない程、後味の悪い小説。東大理系があんなにも傲慢で鼻持ちならない嫌な奴ばかりだとも思わないが、セレブ層に育ったが故の、それ以外のタイプの人間に対する理解力の欠落の原因が垣間見られた気がした。何より心が痛んだのが、美咲が東大生五人に猥褻行為をされる場面。信じていたものを根底から覆された上での辱め。そしてそれについて微塵の罪悪感も感じない5人。更にその後の美咲へのパッシングも憤りを通り越して、ひたすら悲しい。巻末での三浦紀子との邂逅が唯一の救い。生きてね。
読了日:08月29日 著者:姫野 カオルコ
https://bookmeter.com/books/12921704

■その日の後刻に
前二作の印象に比べると「うーん」という印象が拭えなかった。記憶は定かではないが、もっと良い意味での軽妙洒脱さがあったような。本書にもそういう要素がないわけではないけれど、どこかヘビーというか、今ひとつ内容にのめりこめず。それなりにストーリーを追って読んでいたはずななのに、なぜか内容が頭に入っていない…これは単純に読解力と相性の問題か?ただ、アメリカという多民族国家で女性が生きて行くことの問題性や困難さはある程度理解できた気はする。また、もう少しフェイスという女性に気をつけて読むべきだったとちと反省。
読了日:08月26日 著者:グレイス ペイリー
https://bookmeter.com/books/12151705

■ダロウェイ夫人 (光文社古典新訳文庫)
あれ?こんなんだったっけ?二十年前著作集班で読んだ物を再読してみたが、以前の印象と大きく異なっているのに、かなり驚かされてしまった。最初、読んだ時はクリサリスの心理状態が非常に危うく、薄氷を踏むかのように感じられたのに、今回はそういう要素が希薄に感じられる。またクリサリスの分身ともいうべき、セプティマスはもっとマッチョな中年男性というイメージだったのだけれど、今回は繊細な青年という感じで、これも大きく異なっている。最初の読みが浅かったのか、訳文によるものか?エリザベスとキルマンの同性愛的関係性が気になる。
読了日:08月24日 著者:バージニア ウルフ
https://bookmeter.com/books/585442

■ショートカット
設定もストーリーも違うけど、似たような話の寄せ集め感が強いか。遠距離恋愛、彼氏と別れた、今は微妙な距離感のある男性という要素をあの手この手を駆使して話を作っていくというか。それはそれで作者の持ち味なのだけれど、ここまでやられると、いささか食傷気味というのが正直なところ。『寝ても〜』にあった、読者を瞠目させるような展開を、短編集に求めるのは無理なのかもしれないけれど、それでもなあ…後、複数の作品になかちゃんという同名異人を登場させているのが、意図的な者かどうかがちょっと気になる。まだ、習作の段階かな。
読了日:08月21日 著者:柴崎 友香
https://bookmeter.com/books/560984

■フルタイムライフ
オフィスでの会社勤めというものにほぼ無縁な人生を歩んできたので、単純に会社勤めってこんなんなんだ…という世間知らず丸出しの感想を抱いてしまった(笑)。ただ、畑は違っていても、どの職場にもありがちな事情があるということを再認識。きつかったりゆるかったり、理不尽な目に合いつつも、スカッとすることもある…また、五十路を過ぎた者として、本書に登場する中年男性の姿に、「これが平均的な中年像なのか」と妙な感慨を覚える。後、主人公とくっつきそうな男性が複数登場しながらも、結局これといった発展を見せないというのも妙味か。
読了日:08月20日 著者:柴崎 友香
https://bookmeter.com/books/526042

■猫鳴り
一匹の猫を通して、一つの流れをなしていながらも、どこか超えがたい断絶も感じざるを得ない三つのエピソード。そのまま置き去りにされて、短命を余儀なくされてもおかしくないのに、いくつかの経緯を経て、最終的に驚く程の長命をえた雄猫モン。そのモンと深く関わりながらも、あえなく物語の本筋から消されたアヤメとその級友行雄が何とも言えない余韻を残す。この二人のサイドストーリーがあればいいのだけれど。そして、モンの最後を描いた第3部は、人生の折り返し地点を通った独り身の男にとっては途轍もなく重い何かを突きつけてくる…
読了日:08月18日 著者:沼田 まほかる
https://bookmeter.com/books/567647

■寝ても覚めても
関西のバンドやアート系イヴェントに出入りする女性が一目惚れした男性と恋仲になって、そこに様々な男女が絡み合って…岡崎京子的な感じもしなくもないのだけれど、その乾いたというか、どこかぶっきらぼうな語り口のためか、そういうテイストはほぼ皆無。舞台が東京に移っても、相変わらずどこか緩い生活を続ける主人公朝子。高級服に憧れ、限りない購買欲をたぎらせながらも、片付けができない汚ギャルというのも岡崎的だけれど、でもその世界からはどこか程遠い。かなりご都合主義的な展開がなぜか気にならないのも不思議。この作家気になる…
読了日:08月18日 著者:柴崎 友香
https://bookmeter.com/books/644940

■春の庭
物語の冒頭からしばらく、セリフや話の展開があまり見えてこず、延々と風景描写が続くのにかなり面食らった。そして、こういう小説を書くってどういうつもりなんだろう?と。近々、立ち退きを迫られるアパートに住む男女。ひょんなことから交流ができ、そこから恋愛へ…という展開になるのを予想したのだけれど、さにあらず。その女性、西さんの微妙に変人がかった性格描写が面白い。それを時に遠巻きに、また時には間近で接する太郎との距離感も絶妙。そして、終盤にもう一つの視線ともいうべき太郎の姉が登場するのにも、かなり驚かされた。
読了日:08月16日 著者:柴崎 友香
https://bookmeter.com/books/8124479

■神の物語〈下〉 (ヨベル新書)
本巻は新約聖書を題材にしているということで、上巻よりすっと入っていけるかな…と期待していたのだけれど、やはりすんなりと入っていけず。個人的には、カトリックでは秘蹟とされている用語が本書では聖礼典となっているのに大いに違和感。これって適切な訳語なのだろうか?仮にこの訳語を用いるにしても、訳注をつけるべきではないだろうか?この語に限らず、詳細な訳注をつけると理解度が深まる筈で、その点は非常に残念。後、ウエスレー神学に馴染みがないのと、カトリック信者であるということも本書の理解を妨げているような気がした。
読了日:08月16日 著者:マイケル ロダール
https://bookmeter.com/books/12533881

■ガタスタ屋の矜持 場外乱闘篇
どれだけ、傑作、お勧め本、マスト、即買い本があるんだ!!と突っ込みたくなるが、でも、決して著者が大風呂敷を広げているとは思わない。それだけ各書籍に対する深い読みと愛に裏付けられていることが如実に感じ取れるから。本人は謙遜しておられるが、著者はやはり稀有な本読みであり、書評家だと思う。そしてその書評家を驚愕させるような小説が世の中にこれだけ存在するという事実に思わず眩暈を覚える。これから死ぬまでにどれだけの本を読めるだろうか?と。姉妹本でも感じられた海外文学への拘りが、本書で一層際立っているのが印象的。
読了日:08月14日 著者:豊崎 由美
https://bookmeter.com/books/6078587

■ガタスタ屋の矜持 寄らば斬る篇
やっぱり本読みのプロは違うな…と改めて痛感。とにかく読書の幅と量、そして本に対する愛情の半端無さに脱帽。そして、自分が存在さえ知らなかった作品がこれ程まであるという事実に、自分の本読みとしての浅さに恥じ入った次第。個人的には、海外作品にかなりの紙幅が割かれているのが印象的。ともすれば等閑視されがちな海外作品を読者の興味をそそるような書評で紹介する作者の存在は貴重なのでは?それとたびたび自分の年齢に言及しているのも、何とも言えずおかしみと悲しさを覚えた。文学なんかにかぶれていると、こんな風になるのか…と。
読了日:08月11日 著者:豊崎 由美
https://bookmeter.com/books/5131054

■神の物語〈上〉 (ヨベル新書)
内容は悪く無い筈なのだが、なぜか残念感が拭えない。訳文はそれなりに平易なのに、どこか生硬というか、内容がすっと頭に入ってこない。これはこちらの読解力にも問題があるのかもしれないが。それと本書が拠って立っているのがウエスレアン神学というのも影響しているのかも。個人的にとりわけ肝と思ったのは、罪を扱った第3部か。神に作られ、その支配下にありながらも、多くの罪を行ってきた人間。この事実をどうキリスト教神学の立場からどう捉えるか?恐らく永遠に解決がつかない問題であるが、その考え方のヒントは与えられた気がする。
読了日:08月11日 著者:マイケル ロダール
https://bookmeter.com/books/12531391

■社会学史 (講談社現代新書)
六百頁を超える大著ということで、包括的な感想を述べにくいが、とにかく社会学史を俯瞰的に易しく解説した良著だとは言えると思う。個人的には、本書で何度か言及されているトートロジーというタームが気になる。ある考え方を突き詰めるとこの同語反復という誘惑から自由になるのは難しいのではないか?と。また、各々の社会学者の思想の欠点を指摘する著者自身にも、何がしかの欠点はある筈で、その点を考慮しながら読み進めることの重要性も痛感。分かりづらいところは、字面を追っただけということも少なくなかったので、じっくり読み返したい。
読了日:08月09日 著者:大澤 真幸
https://bookmeter.com/books/13562990

■ルポ 看護の質――患者の命は守られるのか (岩波新書)
本来、人の命を預かる仕事であった筈の医療看護が人の命を管理処理する仕事になってしまったのではないか?と思わされた。少子高齢化による医療費の逼迫はよくわかるが、だからといって、経済的効率が優先されて、患者や現場にいる人間の命や尊厳が蔑ろにされていいわけではない。それなのに状況は大手病院に都合が良い方向に流れている…そうした中でも、前向きにこの状況に取り組み、良い結果をだしている医療機関も紹介されているが、ごく僅か。目先のことだけに捕らわれるのではなく、長期的な視点に立っての医療行政の必要性を痛感する。
読了日:08月07日 著者:小林 美希
https://bookmeter.com/books/11082529

■人類最年長
小説で振り返る、日本近現代裏面史という感じか。時代に翻弄されつつも、したたかに生きる主人公麟太郎が何より印象的。ただ、これまで多くの人が夢見てきた不老長寿も、実際に具現化されてみると、自分の妻や子供はおろか、孫にまで先立たれてしまうという可能性を鑑みるに決して喜ばしいものではないことを改めて痛感。周囲は自分の過去を知らない者ばかり。それはそれで、世間を煙に巻いているような楽しさがあるのかもしれないが、その何倍もの孤独感に苛まれるのは必至。自分語りを終えた後も、しぶとく生き続ける主人公に日本の未来を見た?
読了日:08月06日 著者:島田 雅彦
https://bookmeter.com/books/13619025

■人間の大地 (光文社古典新訳文庫)
常に死と隣り合わせの職業。その苛酷な状況にも拘らず、そこにのめり込んだ男達の日常。しかも大戦間近というキナ臭い状況で、その業務は一層複雑な様相を帯びてくる。これでもかというくらいに描かれる極限状態。だからこそ、そこに多大な使命感を覚えるのだろうか?小心者の僕にはとても想像が及ばない世界。ただある種の人間だけが享受できる途轍もない魅力があるのだろうな…ということは理解できたが。とにかく圧巻なのは、7章の奇跡の生還劇。あの絶望的な状況から脱する過程は正に手に汗握る思いがした。最終章は哲学的で熟読の必要あり。
読了日:08月02日 著者:サン=テグジュペリ
https://bookmeter.com/books/9823645


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