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2019年04月22日18:52

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天沼矛  続き1

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 最初に施設に巨大な衝撃波が起きた。その後しばらく経つと海底の水温が急激な上昇を上げ続けるデ―タが送られてきた。橋口祐介は不安しかなかった。(これからどうなる?これからどうなる?)しかし、どんなに知識を持っていても決定権は橋口祐介にはない。
津波はしばらく収まりそうにない。しかし、それは想定の範囲内だ。

何もないはずの海底からマグマが噴出し続けている。これは実験の成功を示している。
問題はこれを制御し得るかどうかだ。(いや最大の問題は虚栄心のバカの明智がどう行動するかだ)

橋口祐介は大学では地球物理学を専攻したが教授にはなれなかった。就職先もなく奨励金を返すあてもなく、しかし家族は老老介護で祐介からのお金がないと生きていけない。
拾い主に恩義はある。しかし、・・・これから先の予測不能の事態の責任は持てはしない。
他の同僚も同じようなものだろう。
 マグマは海底火山を形成している。何日かのちには『島』が形成されるだろう。
希望的観測で言えばこの島では多くの資源が期待できる可能性はある。
絶望的観測で言えばもはや何が起きるのかわからないということだ。
地下のマグマの流れを変えてしまうかもしれないのだ。地下の流体力学はどうなっているのか未知の世界なのだ。

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もはや秘密でもなんでもなくなった。新たに海底火山が噴火したのだ。
これが人工的となれば世界的なニュースになるだろう。
 2月23日。
取材ヘリが何台か姿を現す中海底火山は島を形成した。およそ3000メ―トルからの海底火山だ。いまある小さな島の下には巨大な山を形成している。多くの深海生物が死滅していることだろう。
2月24日。
島は直径100メートルを超えた。島は高く山を形成することなく横へ横へと広がっていく。これは2014年噴火で領地が大きく拡大した西之島と同じ形成過程だ。
立地条件が西之島に近かったことからこの島も同じ形成過程をとったのだろう。
しかし、島の形成が早すぎる。
2月25日。
島の巨大化は止まらない相変わらず横へ横へ広がっていく。
・・・2月28日。
マグマの噴出はようやく収まった。隣の西之島の2倍の大きさを誇る巨大な島が現れた。
島の名前は、計画であったプロジェクト『天沼矛』に倣い「オノゴロ島」と名付けられた。


第二章
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