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2019年02月05日23:58

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《中年転職クエスト 称賛されぬ英雄たち》《ちー+! 089》

《中年転職クエスト 称賛されぬ英雄たち》

…って知ってる?

パソコンのフリーゲームってヤツかな? そのタイトルだ。

このゲーム、いや、実況を観てたんだが、凝ってる内用だね。

ここ数十年の日本の状況をRPGゲームとして融合させたような内容で、奥が深い…というより現世そのもの。

今現在の若者と呼ばれる人物に課せられた勝手極まりない使命と、いいように逃れる高齢者の盾を取った知識人たち。

表向きの良心で結果的に破滅を招くお偉いさんの構成・構想などが本当に日本っぽい。

『弱者』という言葉は力や知識の優劣ではなく、『若年層の存在』に一方的に与えられる称号のようなもの。

期待を込めて託される全ては、常に手遅れとなった状況だけに限られている。
そんなものを先人から笑顔で渡されるのが、いつでも若い人間とか思ったり。

作者の現世に対するウンザリ感が伝わる一作。
観るとけっこう頷けるよ。笑えるけど。


《ちー+! 089》

第一章 仲間たちとの行進曲 3-51

【拠点ネメス・ネメス城下町北区域】
『ギルド ネメスのあくび』

「え…? あ、アキ…さん? なんで…? どうして??」
 意外な場所での意外な立ち姿に絶句するチータス。
「目的達成出来ましたね! おめでとうございます!」
 隣では内容を理解したらしいタバチが祝福の言葉を掛けた。
「…つまりはアキさんをちぃに合わせる口実で皿洗い…という事ですか?」
 状況を見る限り、これはボーセスの計らいなのだろう。先程のボーセスは妙に言葉を詰まらせて物事を言っていたようだが、どうにか内心を悟られないようにした結果が態度に出たらしかった。色々と世話を焼く割に、案外不器用な面があるのかもしれないとナルミは感じた。

「本当にびっくりした! おっさんは誰かに仕事させてるみたいに言ってたけど、まさかアキさんとは…。お金無くなっちゃったの?」
タバチより『バイト』の意味を簡単に説明されたチータスが直結した考えはそれだった。
初めて出逢ったケルナの森の中のやり取りで、助けてもらった謝礼を最後まで受け取らなかったアキが非常に印象深かったが、そんなアキが小遣い稼ぎをしている姿の再会とは心外に他ならない。
だが、その考えはハズレだった。
「あは、…冒険者を生業とする人間に裕福な暮らしは無いよ。でも、さすがにそこまで落ちぶれてはいないなぁ―――」
 食器洗いを終え、目に付いた飲み物を手にしたアキはそれを片手に笑って言う。
「―――いやね、単純に昼ピークを避けて食事をしに来てたら、ボスが『全部の客が出払うまで残れ』って。なんだか分からずに言われた通りにして待ってたんだけど、客が全員居なくなっても何もする様子がなくてさ、私はてっきり特殊なクエストの紹介だと思ってたものだから、一向に声を掛けてくる様子のないボスに問い掛けたら、今度は『皿洗っててくれ、いいもん見せてやる』って。珍しく前払いで銀貨1枚…。まあ、やる事が無かったからいいか程度に食器洗っていたら、みんなが揃って来たって話。2人にも驚いたけど、まさかタバチまで居るとはね。どこで知り合ったの?」
 チータスとナルミとの再会からか、それともタバチを含めた思わぬ形での遭遇からか、はたまた珍しいボーセスとのやりとりからか、いずれにしてもアキを知る周囲からすれば珍しいとも受け取れる表情のアキは、確かに喜んでいた。

 簡単にそれぞれの再会の挨拶を終えた4人は、片付けた食器に不備が無いかどうかを軽く確認して厨房を出た。
 カウンター出入り口からチータス、ナルミ、タバチの3人が出た事を確認すると、アキはそのままカウンターに留まってその中央に立つ。
「そっちに座って、まかないタイムだよ」
「『まかない』?」
「仕事したから何か食べさせてくれるって。『お疲れ様』って感じのおまけみたいなものよ」
 聞き慣れない言葉を復唱するチータスにナルミが簡単に答える。本来の意味合いとは異なる説明であるが、飲食業を営む人物にとっての『賄い』とはそんなものだ。
「ふーん…。って、あれ? アキさんってココのギルドで働いた事あるの?」
 気付かなければ最後まで見落としそうな自然な感じのアキに、思わずチータスは尋ねる。
「いや、別に働いてるってわけじゃないけど、知り合いのよしみ…みたいなものかな? 混雑している時なんかにヘルパーとしてご指名が掛かる時があるの」
「わたしもたまに手伝いを要求されますよ! なので、酔っ払いが居ない昼時にお手伝いします!」
「へぇ〜…。そんなに小っちゃいのに?」
 アキの言葉に続いたタバチに驚くチータス。ギルドを活用する人間にとって『手伝い』は当たり前なのかという疑問が生じるが、当然、それが当たり前ではない。
 早い話がボーセスの目に留まった人物にその可能性がある訳だが、その見極めはボーセスの得意とする人選によるものだろう。独断と言えば独断ではあるが、様々な客層を見極め、采配し続ける彼だから出来る芸当の一つと言えるだろうが、手伝わされる側からすれば、そこまで気にする内容でもない話でもある。
 ちなみにチータスがタバチに対して言った『小っちゃい』とは、タバチの外見の事であり、作業するにあたっては何ら支障はない。
「…でさ、…ちょっと気になってたんだけど…、いいかな?」
 昼ピークの残り物を皿に盛るアキは、どこかしら気まずそうな面持ちでナルミに声を掛けた。
「はい、どうかしましたか?」
 至って笑顔を維持するナルミは、実際に久々の再会の実現となったアキの対面で心境に陰りは無い。そんな状況なのだから、そのアキの表情は一言に不思議な印象しか持てない。
「あのさ…、ナルって確かさ、ペナ・リノで魔術の研究とか体得とか、そんな内容の事やるって言ってなかったっけ? なんでちぃと一緒に城下町に来てるのかな…って、ちょっと気になっててさ…」
 まるで照れ隠しするような表情で笑うアキは、言っておきながらやはり聞くべきではなかったものかと軽い後悔の念を覚える。
 そして、そんなアキの問い掛けにナルミが返した言葉、というよりも『声』は、以下のものだった。

「…………………………あ。」

 ある意味では触れられたくない話題だった。
 アキとタバチが『どうしたの?』と声を掛ける前に、チータスは静かに下を向いた。
(この木目、綺麗だなぁ…)
 現実逃走には無理がある…。


《あとがき》

ナンプレに集中し過ぎて時間があっという間だ。

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