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2019年02月01日16:35

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「原発雑考」第367号の転載   幻に終わった日の丸原発  核燃料サイクルと核融合など

「原発雑考」第367号の転載です。


2019・ 2・5
発行 田中良明
転載自由
連絡先 豊橋市富士見台二丁目12-8 E-Mail tnk24@tees.jp


幻に終わった日の丸原発

 日立製作所がイギリスのウェールズ地方アングルシー島で計画していた原発建設計画が中断されることになった。事実上の計画断念である。
 日本で原発輸出の動きが本格化したのは2009年に発足した民主党政権においてだった。2005年頃から世界的に喧伝された〈原発ルネサンス〉という掛け声に煽られたことと、国内需要減少に悩む原子力産業を救済することが理由だった。しかし〈原発ルネサンス〉は、威勢のいい掛け声とは裏腹に2010年にはすでにあだ花であることが明白になっていた。建設費用の高騰が明らかになり、着工を躊躇するケースが広がっていたのである。
 そこに福島原発事故が起き、日本の原子力事業は致命傷を負った。民主党に代わった自民党政権はそれでも原発輸出政策に固執し、国内での展望を失った原発関連企業も海外事業に注力し続けた。その帰結が〈原発ルネサンス〉の本場だったアメリカにおける東芝の事業破綻である。ベトナムやリトアニアでも日本企業の受注が決まっていた案件が建設取り止めになった。
 日本の海外原発事業として最後まで残っていたのはアングルシー島の原発と三菱重工が進めたトルコのシノップ原発だったが、ともに昨年末以降にばたばたと断念の方向が明らかになった。どちらも建設事業者が原発で発電された電気を販売し、その料金収入で建設費を回収する方式で、事業のリスクは建設側が負う仕組みになっていたのだが、安全性向上を求められて建設費が際限なく膨張したことによって発電コストが大幅に上昇して事業の採算性が極度に悪化してしまい、それを見た国内の商社や金融機関は事業への参加や融資に消極的になってしまった。それでも政府は諦めず、損失が出れば税金で補填する約束までしたが、けっきょく事業実施に持ち込めなかった。
 原発海外事業に積極的だったフランスと韓国も苦戦している。いまなお原発輸出に熱心なのは国家主導のロシアと中国だけである。原発は市場経済システムの下では事業として成り立たなくなっているのである。


核燃料サイクルと核融合

 先号で、今世紀になって始まったエネルギー大転換は、人類史上3度目でおそらく最後のエネルギー革命になること、原発はこの壮大なドラマの非力な敵役にすぎなかったことを述べた。
 原発はそれでもこのドラマに登場することができたが、登場予告があっただけで実際には登場しないことになりそうな核エネルギー利用技術が2つある。核燃料サイクルと核融合発電である。構想倒れに終わった技術は無数にあるが、この2つは実現しないことが明白なのにいまだに国家レベルの開発が継続している点においてきわめて特異である。
 核燃料サイクルは、原発の使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを抽出し、そのプルトニウムに高速中性子を当てて核分裂させ、発電とプルトニウム増殖を行う高速増殖炉の開発を中心に構想された。ところが2016年に原型炉のもんじゅがほとんど運転実績を積み上げられないまま事故・トラブルの続発によって廃炉になり、高速増殖炉開発は頓挫してしまった(欧米主要国はそのずっと前に高速増殖炉開発を断念している)。
 それでも政府はあきらめず、プルトニウム増殖のほかに高レベル放射性廃棄物の減容(再処理によって生じる高レベル放射性廃棄物に含まれる超長寿命核種を短寿命核種や非放射性核種に変換すること)なども目的に加え、高速増殖炉開発をより幅の広い高速炉開発に看板替えして核燃料サイクル計画を継続することにした。政府がそうしたのには事情があった。もし計画が中止されれば、使用済み核燃料はただの核のゴミになってしまう。そうなると、再処理工場がある青森県六カ所村に運び込まれている使用済み核燃料は発生元の各電力会社に返送されることになるし、すでに各原発に保管されていたり、原発稼働に伴って今後新たに発生したりする使用済み核燃料を六カ所村に運び出すことはまったく不可能になる。その結果、各原発の使用済み核燃料の保管スペースはいずれ満杯になり、それ以上の原発稼働は不可能になる。しかも多くの原発の保管スペースはすでに満杯に近い。
 つまり原発推進の政府にとって、原発稼働を持続可能にするために核燃料サイクル計画は生きていることにしておく必要があるのだ。さらに原発建設が見込めずに存亡の危機にある原子力産業にとっては、核燃料サイクル関連の事業は生き延びるための飯の種になっているという事情もある。
 高速炉開発に看板替えした際の核燃料サイクル計画の柱は、フランスが進めていた高速炉実証炉開発計画(アストリッド計画)への参加だった。しかしフランスはこの計画の縮小(事実上の中止)を決めてしまった。
 こうして高速炉開発はさっそく練り直しを迫られることになり、昨年12月に新しい高速炉開発の工程表が発表された。その内容は、採用する可能性のある技術を2024年以降に絞り込み、今世紀半ばに高速炉の運転を開始し、今世紀後半に実用化されることを期待するというものである。高速炉を使って何をするかは未定だが、高速炉を開発することだけは決まっているというもので、上述した核燃料サイクル計画継続の事情が丸見えである。
 ただし2024年以降に技術的絞り込みを行ったあとで、「再生可能エネルギーの導入状況等の社会環境の変化を踏まえつつ、高速炉開発及び高速炉に付随するバックエンドへの対応、立地対策や規制対応、コスト評価を含め実現可能性を検討の上、場合によっては今後の開発の在り方について見直しを行う」という留保も付けられている。ここに挙げられた課題の一つでもまじめに検討すれば、高速炉実用化は不可能になろう。もちろん実際にそういう検討が行われる保証はない。いずれにせよこの留保が付けられたのは、減容は実用化できるのか、プルトニウム利用発電は再エネ発電に対抗できるのかといった疑問、批判を無視することがもはや不可能になっているからである。
 核融合発電のほうは、その実現の可能性を探る国際共同プロジェクトである国際熱核融合実験炉( イーター)がフランスで建設されており、日本ではJT-60SAという核融合実験装置が茨城県那珂市で建設中である。JT-60SAは2020年に運転を開始し、イーターを支えるための実験を行うことになっている。そしてイーターが所期の成果を収めれば、次のステップとしてようやく核融合炉の原型炉が作られる段取りである。核融合発電の実用化は万事計画どおりに進んだとしても今世紀後半の遅い時期になるとされている。
 太陽で起きている核融合を地上で人工的に起こして、そのエネルギーで発電するのが核融合発電である。しかしわざわざそんなことをするよりも、太陽起源の各種エネルギー(太陽光、太陽熱、風力、水力、海流、バイオエネルギーなど)で発電するほうが、つまり太陽の核融合の産物を地上で利用するほうが、圧倒的に容易で、人間にも環境にも安全で、安価である。量的にも人類の必要をカバーするに十分である。なんでわざわざ地上にミニミニ太陽を作り出す必要があるのか。太陽起源の各種エネルギー(=再生可能エネルギー)の利用技術が十分に発達していなかった半世紀前ならともかく、現在では核融合発電に取り組むメリットはまったくない。
 この2つの核エネルギー利用技術は、実用化される可能性がないだけでなく、実用化を追求する必要すらない。時代は変わってしまっているのだ。


雑 記 帳

 この冬は庭にメジロがよく来る。5羽から10羽ほどの群れのことが多く、ツバキやボケの花蜜を吸い、甕の水を飲む。甕に飛び込んで水浴びするのもいる。昨冬から餌付けをやめたが、餌付けと飛来数とは関係ないようだ。
 メスのジョウビタキもときどき現れる。オスに較べて地味だが、品がある。 冬の野鳥でいちばん好きなシジュウガラはまだ遠目で一度見ただけだ。
 庭のマンサクが、昨年9月の台風の強風と塩害で葉を落とした後に狂い咲きし、新葉も出した。年が明けてからその葉が淡い橙色から柿色に色づいた。 早春に芽を出す本来のマンサクの葉は、春から秋にかけての日射と強風で傷んで、色づくことなく枯れてしまう。こんなきれいに色づいたマンサクの葉を見たのは初めてだ。これがマンサクの本来の紅葉(黄葉)なのか、それとも秋に新葉が出たことによる特異現象なのか。 たぶん後者だろう。

 今号からスペースに余裕があるときに、見守りをしている万場緑地公園のネコたちの様子を紹介する。手始めは最古参のミイについて。白地に黒い縞模様のぶちがある太ったオスで、6年ほど前に成猫で現れた(おそらく捨てられた)。公園から車で10分ほどのアパートに一人で住む高齢の男性といつも一緒にいたが、16年秋にその人が亡くなり、私たちのグループが引き取った。人慣れしていて、多くの人に好かれているボスネコである。

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