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2018年12月07日13:51

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パシフィック231

危険・警告ここからいくつかの日記は、第31回ネット鑑賞会用の解説です。危険・警告

アルテュール・オネゲル作曲
交響的運動第1番「パシフィック231」
シャルル・デュトワ指揮
バイエルン放送交響楽団


かんち自身の解説

多分、鉄、つまり今回のテーマである「鉄道」を表現したクラシック音楽作品と言ったら、最も有名なのがこのオネゲルのパシフィック231ではないでしょうか。

けれども、私が鑑賞会で使うのですから、意味があってこんな有名曲が来るってわけです。実は今回のテーマは、鉄道でも、蒸気機関車、なのです。

パシフィック231は、鉄道というよりは、蒸気機関車が出発し到着するまでを、音楽で表現したらどうなるかを表したもので、しかもです、日本にも同形式が存在したことをご存知でしょうか?以下に、かつてブログで語った部分を抜き出しておきますので、読みながら、自分が蒸気機関車の主務機(一番先頭で引っ張る機関車のこと)に乗っている様子を想像しながら聴いてみてください(C53のウィキのURLだけ今回変更しました。掲載時からURLが変わっていたためです)。今回はデュトワがドイツのオケ、バイエルン放送響を指揮した演奏でお聴きいただきます。

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さて、交響的断章ですが、オネゲルは3つ書いていますが、ここではそのうち2曲が採用されています。まず、オネゲルの代表作と言われ、私は一番新古典主義音楽らしいと感じる作品である「パシフィック231」ですが、これは蒸気機関車が出発して到着するまでを、単なる描写ではなくさらに機関車の質感までを表現しようとした意欲作です。私のような「鉄」にとっても実はたまらない作品です。そういえば、オネゲルは大の「鉄」だったそうで、ウィキにはこんな記述が載っています。

「オネゲルの機関車好きはつとに知られたところであり、「私は常に蒸気機関車を熱愛してきた。私にとって機関車は生き物なのであり、他人が女や馬を愛するように、私は機関車を愛するのだ」と語ったことでも有名である。」

パシフィック231 (オネゲル)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%82%B7%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%83%E3%82%AF231_(%E3%82%AA%E3%83%8D%E3%82%B2%E3%83%AB)

このオネゲルの言葉は、SL好きだと本当によくわかるんですね。というよりも、SLという機関車は、とても人間臭い「機械」なのです。坂を登る時にはたくさんの石炭をくべなくてはなりませんし、また機関車一台一台がまるで生命を持つかのごとく、調子が異なるのです。

それは、実は現代の電車でも共通する部分ではあるんですが、電車であれば坂を上るには思いっきりマスコントローラーを引っ張ればいいわけですが、SLですとまず石炭をくべて、釜の中の圧力を高めてやらないといけないのです。SLには、運転をする機関士と、それを補助し石炭をくべる機関助士の二人が乗り組んで運転しますが、だからこそ、二人の息が合わないと、特に坂を上る時に動輪が空転を起こし登れないということもしばしばなのです。

そういった、SLの質感や表情といったものまでを表現したのが、「パシフィック231」なのです。それは、ウィキのこの表現に集約されています。

「二分音符=80にテンポアップし「運動」が始まる。
ここから曲のテンポは「四分音符=(160 )→152 →144 →138 →132 →126 」と、段階的に落ちていく。つまり、音楽自体はゆっくりになっていくのだが、楽譜のリズムは逆に細かくなっていくため、聴いている者には音楽が加速しているように感じられるようになっている。この仕掛けこそが作曲者の意図なのである。」

なぜだと思いますか?音楽に於いてまず表現されているのは、蒸気機関車の「運動」によって生じる音、動輪やシリンダーなどの音や、蒸気音です。それを表現するのに、まず長音を使います。しかしスピードアップしてくると運動音は細かくなります。そうなると短音を使うわけですから、実は音は細かくて済むわけですから、長さは長くなって当然なのですが、その分重さが表現できるわけです。そこに、オネゲルが意図した「質感」というものが表現されるわけです。

こういったことは、バッハがやっているわけではありませんが、音符を何かになぞらえるというのはよくやることです。ですから、バッハからの伝統を実は色濃く受け継いだ作品であるということが言えるわけなのです。

実音はどんなものなのか聴いてみたいという方には、youtubeがお勧めです。実は、この作品で表現されている機関車は、全く同じではないですが同形式が日本にも存在したからです。231とは「に、さん、いち」と読み、前軸2輪、動輪3輪、受け軸1輪という動輪形式を意味しますが、国鉄に於いて、C51からC59までの各形式が、まさしく「パシフィック」だからです。

国鉄C51形蒸気機関車
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E9%89%84C51%E5%BD%A2%E8%92%B8%E6%B0%97%E6%A9%9F%E9%96%A2%E8%BB%8A

この内、私が調べた中では、ちょっと珍しい3シリンダーという形式ではあるんですが、C53という機関車があります。「C53」で検索しますと、一番最初に、音だけのものがありますので、聴いてみてくださいませ。オネゲルはこの音と同時に、その質感も音楽によって表現したかったのだということがよく理解できるものと思います。

国鉄C53形蒸気機関車
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E9%89%84C53%E5%BD%A2%E8%92%B8%E6%B0%97%E6%A9%9F%E9%96%A2%E8%BB%8A


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『パシフィック231』(英語:Pacific 231 - 原題もフランス語ではなく英語)は、アルテュール・オネゲルが1923年に作曲した管弦楽曲。指揮者のエルネスト・アンセルメに献呈された。オネゲルの代表作の1つとされている。

タイトルの『パシフィック231』は、蒸気機関車の車軸配置をあらわしている。フランス式で "231" と表現される車軸配置は、アメリカ式では「パシフィック("Pacific")」という呼称が与えられているもので、先軸、動輪、後軸の軸数が順に2-3-1のものである。従って "231" の読み方は「にひゃくさんじゅういち」ではなく、「に・さん・いち」である。

世界各地で製造された複数の形式の蒸気機関車が当該の車軸配置であり、この題名だけでは形式を特定することはできない。たとえば「パシフィック社製231型蒸気機関車が徐々に動き出し」などといった記述が演奏会の冊子に掲載されることがあるが、当然ながら「パシフィック社製231型蒸気機関車」なる形式、と決めてかかることはまったくの誤りである。

なお、出版されているスコア(サラベール社 Salabert )の第1ページには、PACIFIC ( 231 ) Mouvement Symphonique と、 "231" が括弧書きになったタイトルが記されているが、 "パシフィック231" のようにつなげて標記されるのが一般的である。

スコアでは、「300tもの重量を持つ蒸気機関車がゆっくりと動き出し、加速してフルスピードになり、また停車する様子を表している」と解説されているが、オネゲル自身は描写音楽的な解釈を否定しており、当初は単に『交響的断章(仏語:Mouvement Symphonique)』として作曲したが、脱稿後に、「ロマンチックな考えが頭に浮かんだので、『パシフィック231』のタイトルを与えた。」と述べている。

しかし、オネゲルの機関車好きはつとに知られたところであり、「私は常に蒸気機関車を熱愛してきた。私にとって機関車は生き物なのであり、他人が女や馬を愛するように、私は機関車を愛するのだ」と語ったことでも有名である。

ちなみにオネゲルの「交響的断章」(「交響的運動」とも訳される)は全部で3つあり、『パシフィック231』が「第1番」、『ラグビー』が「第2番」(1928年)、無題でヴィルヘルム・フルトヴェングラーに献呈された作品が「第3番」(1933年)である。
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