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2018年11月09日10:02

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愛の形

11月8日(木)晴れ
帰宅した夫が言う。
「今日、車の中で平井堅の歌が流れたんだけどさ、切なかったなあ〜」
ワタクシ、ハッとして、ウッってなって、喋りたいこととは別のことを喋ったりして紛らした。

毎週火曜日は、友人A夫人の抗がん剤治療に付き合ってる。
大変な病だというのに、内面も外見も全く変わらず、元気である。
ガハハと笑い、良く食べ、良く喋る。
そして、パートも辞めず、民生委員も辞めず、夫のA氏は趣味の演劇も続けており、今週末はまた観劇にご招待されとる。
会うたびに「仕事辞めて治療に専念しなよ〜」と言っても、冗談っぽく「治療費を稼がなきゃいけないからさぁ〜」
「じゃあせめて民生委員をやめなよぉ〜」と言うと「後継を決めないと辞められないんだよ。なかなかやってくれる人が見つからなくてさぁ〜」

先月末に会った時、治療も終わり、ランチもたらふく食べてから会計待ちをしてる時に、
何気なく「病院に行くきっかけ」の話になった。
話のつじつまが少しあわない気がして「ん?」って顔したら彼女が「これ、A君には内緒だよ。」
そこで少し病状の話とかになり、どうしてすぐに治療しなかったかという話になる。
「その頃、子供達の事も色々あったし、どうしても今の生活を変えたくないって思ったの。
この先、そのことを後悔する日がくるかもしれないけど、その時は、あたしが治療することで家族の日々が変わることがすごく怖かった。」
だめだ。
初めて彼女の涙を見てしまう。
ワタクシはもう彼女の顔を見ずに、会計のお姉さんの顔を見ながら彼女の話を聞く。
ここで話してくれて良かったよ。二人きりだったらきっと号泣してた。
でも、どう考えても、ここはワタクシは泣くところではない。
ワタクシが泣いてどうにかなるならこの先一生泣かなくてもいいくらい泣く。
でも、こればっかりはワタクシの涙はなんの役にも立たない。
彼女の声を左耳で聞きながら、歯を食いしばっていた。
少し落ち着きを取り戻した彼女が「黄昏流星群見てる?佐々木蔵之介がさぁ〜勤め先の出向の話をどうしても家族に言えないって言うんだよね。
その気持ち、すごくわかったな〜
どうしてもA君や息子達には話せないって思っちゃったんだよね。
今でも、黙っていられるなら黙ってたかったけど、毛、抜けちゃうからね〜」
そして、彼女はずっと夫に話さず、そして、夫に話さないことを友人知人に話すのもどうかなあと、ずっと一人で抱えてきた。

彼女はもう親もお姉さんもお義兄さんも亡くしている。
頼れるのは A氏だけなのに〜と、何かあるたびに7つ年下の夫の頼りなさをワタクシは勝手に嘆いてた。
しかし、この会計の座席で聞いた話で、自分の考えを根本から訂正した。
A氏のことは相変わらずわからない。つかみどころのない男だ。
だが、こういう愛の形というのがあるのだと。
常日頃、ワタクシは自分が普通で、常識的で、一般的で、小市民的であると思っている。
不倫はもちろん許すまじ!と思ってるから、「黄昏流星群」も見ない。
いや、これは漫画では読んでたから話は知っておる。
興味がないから見ないだけだ。
いや、不倫は相変わらず「許すまじ!」だが、
自分とは違う愛の表現?愛の形?愛し方?があるのだと思い知らされたのだ。
正しいとか間違ってるとか、そういう判断でいつもジャッジを下してきた。
樹木希林さんご夫婦のことも、最後まで理解できん!と思っていたし、
身近な友人夫婦の中にも理解できない関係の夫婦なんてゴロゴロいる。
いつもワタクシは「離婚すればいいのに!」と息巻いていた。
最後、死ぬ時になって「お前といっしょにいられて幸せだった」なんて言われても、それまで浮気だなんだ好き勝手やって泣かされてたことを許せるのか?と思ってた。
いや、あたしゃ許しませんよ、浮気だの暴力だの。一回で即離婚ですよ。
でも、それはワタクシの愛の形であって、そうではない愛の形ってのがあるんだということをこんな極限状態で見せられた気がした。

彼女は、今の生活を続けたい。
だから仕事も辞めない。
民生委員も。
夫の趣味も続けて欲しいと思っている。

夫や家族に病気のことを話した今、解禁〜っとばかりに彼女はもうみんなに公表している。
近所のお弁当屋さんのおばちゃんにまで話したわと。
もちろん職場の人たちにも話し、「菩薩に見える」とまで言われている。
そういう人なのだ、彼女は。
誰よりも働いて、ふざけて、気配りして、笑って。
「時々カツラがずれちゃってさぁ〜Aさんっズレてる!って言われて慌てて直してる。
菩薩じゃなくて瀬戸内寂聴って言いたかったのかね〜」
社員旅行ではDA PUMPの『USA』を踊ったらしい・・・
帽子を持ち上げる時に、すっかり耳のもみあげの毛までなくなってるのがわかる。
あたしもあなたのことが菩薩に見えるよ。
本当に強くて優しい人だ。

滅多に歌の感想なんて言わない夫から「切ない歌だった」って聞いて、それが黄昏流星群の主題歌ということもあり、A夫人のことを話そうとしたのだが、
また涙がこみ上げたので話を逸らしたのだった。

今日の一枚は、先日彼女と食べたデザートのケーキ。
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