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2018年10月28日00:46

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《隠し事をするなら完全な隠滅を》《ちー+! 21》

《隠し事をするなら完全な隠滅を》

会社で破損品を発見した同僚がいた。
自分の担当区域での話で、商材そのものの担当は俺。
同僚は身に覚えが無いけど…と、付け足した上で、俺にそれを直して欲しいと来たわけだ。こういっちゃなんだが、俺はガラスや紙媒体ではない容器を簡単に直す事が出来る。…まあ、よ〜く目を凝らせば跡が見えるのだが。

直すのは簡単だ。でも、問題がある。
ここで簡単に手を出してしまえば、その時点で破損を出し、その事実を隠した人物を見逃した事になり、早い話が『無かった事』となってしまう。貰い損もいい所だ。特に同僚が。
破損品の状態回復に漕ぎ着ける事が出来なければ、この同僚の場合は自腹を切ってしまう癖があるわけだし。
まあ、暇な事もあって、現場検証。

荷物のズレ方からして特徴がある。
パレットの置き方も特徴的だ。
隠す行為に手が込んだ様子も無く、誰でも見抜けるおおざっぱさも性格が出てる。
そんで、その商材の荷受けが午後限定で、担当が限られるのだが、しっかりとその中の人物に含まれている。突き付ければいつもの口調で否定し、関係無い例え話に切り替えようとする、奴の姿がこうも簡単に浮かんでしまうのが最も笑える。

リーダー改め、ボスザルだ。

奴は本当に低知能だ。隠すならもっと本気を出せばいいのに、『はい、見付けて下さい!』と、胸を張らんばかりの稚拙なソレは、現場の至るところで見掛けて久しい。

でも、根っこから疑うのもポリシーに反するので、対象の商材を僅かにでも扱う関係者全員に、それぞれの性格に合わせた聴き方をする。
ある人にはストレートに、ある人にはやんわりと、ある人には『気付いた?』みたいな遠回しで。
まあ、判っちゃいたが、予想通りの反応。確定ではないが、シロだな。…何故判るかって?俺がどれだけの会社でどれだけの付き合いを持っていると思ってるの? 相手の性格を知るなんて事は、けっこう簡単なものだ。そして目は嘘を付けないものだ。
ちなみにボスザルは指定休暇により不在だ。まあ、居たとしても追い囲む意味で、聴きはしないだろうが。

そんで激怒演技で事務所殴り込み。『コレってどうなの!?』と。みんなびっくりしてたが、話を聞いて理解した模様。笑えたのが、俺が見て来た特徴を言って、『それだけ揃えば誰かくらい判る』とだけ言い、人物像には一切触れなかったのに、『ボスザル』の名が複数出て来た事は感心した。みんな理解している。そしてすごい印象…。

伝え切れない人物にも現物を見てもらう為に、品物を事務所に並べる徹底ぶり。…を、2日間。単なる偶然だが、ボスザル以外の目には入った事になる。

…で、細工として現場の目立つ所に、というか、ボスザルが見ない訳の無い位置に現物を設置。『仲間内には集荷時以外はここに』と告げ、事務所員には『事務所確認済みの文字を含める』と了承を得て。ついでに『ぜったい俺の棚に入れるなって、てぃーのが激怒していた』と説明するようにも周囲に伝える。
これまた偶然だが、月曜日は俺が指定休暇なのだ。そして、そんな俺の代わりに担当に着くのがボスザルだったりする。なかなかのミラクル。

更に火曜日の昼礼当番はオレなわけで、そこで大々的にボロクソ言ってやる。全員の前で。あくまで犯人は判らない前提であり、でも、幼稚過ぎる真似はするな。…と。

言えるかな…? と言うより、また余計な事を言いそう…。


《ちー+! 21》

第一章 勇者志願見習い(笑)2-6

【ベレーレルの村】

 昨日の夕食は豪華だった。試練の年を思えばベレーレルで食べる夕食は向こう1年間で昨日が最後となったわけだが、きっとエマがそんな事を思って腕によりをかけたのだろう。
 ただ、残念だったのは村の至るところからチータスを訪ねて知人が来た所だろうか。どうやら村の広範囲にチータスの試練の年の内容が行き渡っていたらしく、最後に一声を掛ける意味もあって実に様々な顔触れが長時間に渡って来訪していた。おかげでせっかくの夕食もじっくり味わう事が出来ず、人生稀に見る忙しさを覚えたものだ。
 忙しい中でも得る情報は僅かながらにあった。いや、全てが初めての試みとなるだろう明日からの1年間なので、とても『僅か』などの表現では済まされない情報量だったのだが、いかんせん自分にその情報を上手く分析するだけの知識が無い。そういった意味を踏まえて残される事になった知識が『僅か』なのである。
 最も重要と思われたのが、仲間の存在だ。何も判らない土地に放り込まれるようなスタートだ。周囲が分からなければ、自分の存在位置すら判らない。まずはその打破が先決だろう。
 簡単に打破とは言っても、やはり個人で何もかも行うとなれば限界はあり、頼るべき仲間が必要となるだろう。そんな仲間を最初に作れ、との事だった。
 最も重要な項目と思われる『仲間』に関しては既にアテある。始まる前からそんなアテがあるという事は幸運な話だ。
 もちろん、そんな幸運はアキだ。森で出逢い、ナルミ共々助けてもらうに至った『アキ・サラン』。彼女を探さない筈が無い。問題は、どうやって彼女の居場所を突き止めるかなのだが、こちらも多分大丈夫だろう。
『南ギルド』、それと『ネメスのあくび』だ。
『ネメスのあくび』に関しては相変わらず理解出来ないでいたが、『南ギルド』については…ぼんやりとだが分かる。とりあえず『南』だ。そこに『ギルド』という何かがあるのだろう。
 最も重要な話はもう一つあった。寝場所だ。何でも城下町ともなれば人がとにかく多いらしく、無防備な様子を感じられれば物を奪われる危険性もあるという。とはいえ、チータスにとって『無防備』の意味が分からないので、まずはそこから知りたい話だったが、これまた来訪者待ちで長々と話出来なかった事が災いし、結局は深く知る事が出来なかったのだ。
 だが、これについてはノルンが分かりやすく教えてくれた。『1人で外では寝るな』と。どうやら外で寝る行為が危険らしい。それだけでベレーレルとは異なる世界観だ。
 また、もし寝場所に困った場合には城に足を運ぶようにも言われた。何でも試練の年に関連する人物向けの宿舎が用意されているとの事だった。

 情報はこんなもので収まる筈もない量だったが、それ以上に困ったのが『もし困ったら…』という名目で手渡された、通貨をはじめとする餞別の品々だった。
 農村と呼ばれるように、ベレーレル住民のほとんどは田畑に実る作物を売るなり食べるなりで生計を立てているが、そんな顔触れが持ち運んだ品のほとんどは時期に見合った作物ばかりであり、有難いとはいえ、これらを背負って歩く行為が現実的な行動ではない事は、さすがに外を知らないチータスにも理解できた。
 小遣いと言われたお金にも困った。もともとお金のやり取りの場面が少ない村だ。持っているに越した事は無いとよく聞くが、これの使いどころが今ひとつ分からない。エマの話によれば、キャラバン隊とのやりとりみたいな事を出来る店があちこちにあるようで、どこの店に行っても物を手に入れるにはお金が必要となるらしい。
「お腹すいた」と呟けば、それを聞いた誰かが食べ物を持ってくるような親切は存在しないという。
 そんな理由から、どういう理由があろうがお金は持て、との事だった。
 その一方で、お金ではない餞別の品の全ては置いて行く事になる。作物ばかりが貰った全てではないものの、1つの部屋を全て埋め尽くすに至った餞別の袋をいちいち開く時間が残されてはおらず、それ以前に両親が準備した旅の支度品だけでも予想外の多さなのだ。
 城からの迎えがどんない出立ちかは未だ不明だが、馬車はあるのだろうか? 仮に馬車があっても、これらの全てを入れる事は可能なのか? 疑問はそこから進まない。


『来たかな?』
 外から届く騒ぎ声が耳に入り、ノルンは立ち上がった。
 穏やかなベレーレルに騒ぎが起こる時は限られている。多くは来訪者を目撃した時で、そのほとんどは不定期に姿を現すキャラバン隊の到着を知らせるのだが、前回キャラバン隊が去ったのは数日前の事なので、今日はそれとは違う来訪者だと分かる。
『心の準備は出来たかしら?』
 いつもの調子でせんべいを手にするエマは、下を向くチータスに尋ねた。
「…ダメ。やっぱり気が進まないよ」
 ここにきて弱音を口にするチータス。エマとノルンから見れば、散々わがままを言い散らかす出発前の数日間を予想していたが、実際そうではなかったチータスを遠目に眺めては不自然さを感じていたのだ。
 もちろん、初めのうちはチータスも散々ゴネ立てる事でどうにか勇者志願という、とっくに忘れていた願い出を取り下げてもらおうと考えていたのだが、冒険者のアキや、試練の年を迎えるべく先にペナ・リノに戻ったナルミを考えると、どういったわけか自分だけがわがままを言うのも変に感じたのだ。
 しかし、こうして近付く蹄の音を耳にすると…。
「ごめん、お父さん。…あたし、逃げていい?」
「…バカを、言うな…」
 思わぬ質問に絶句しかけるが、どことなしに外の様子を気にするノルンは、辛うじてそう言い返す事が精いっぱいだった。
「そうよ。お母さんたち、村で笑い者になっちゃう…(ぱり)」
 ノルンに加勢するエマは、相変わらずのせんべい姿でいつもと変わらぬ様子をチータスに見せつけるが、それでも蹄の音が気になるのか、ちらとらと外の様子を伺っているようだ。


 やがて、蹄の音が間近に迫ると、その音が自宅の前で停止した事が否応なしに分かる。
「き…来た…! 来ちゃったよ! どーしよう?」
 今さらどうしようもないと理解しつつもうろたえ始めるチータスだが、両親は揃って何も言わずに立ち上がると、城からの来訪者を迎え入れるべく外に出て行ってしまった。
 逃げ出すなら今が最後の、そして一番のチャンスなのだが、それを理解しながらチータスには、別の思いが2つばかり浮上していた。
 まず一つは、外に出た両親の対応から、城からの迎えの人物の性格を知りたいと考えた事。
 そしてもう一つ。
(どうしよ…。オシッコしたくなってきた…)
『男勝り』と村では評判のチータスだが、彼女だってそれなりの緊張はするものだ。


《あとがき》

早く火曜日にならないかなぁ…。

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