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2018年07月01日17:54

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世界の片隅の、とあるひとりのサッカーファンの、ほんの小さな物語、、、

(この話はフィクションです)

私はODAのために、現場である、とあるロシアの田舎の村に住んでいます。

今年はサッカーのワールドカップが開催されるということで、まあまあそれなりに話題になっています。

私の家の隣のおじちゃん(地元のロシア人です)は、まだソ連だった頃からのサッカーファンです。(自分でも学生時代はサッカーをやっていたそうです。)

ワールドカップ開催が決定し、大喜びし、早速観戦の計画をたてました。

しかし、いちばん近いスラジアム(といってもオンボロ車で4時間かかります)では、ロシア戦は行われず、また、彼にとっては、チケット代も決して安くはありませんでした。また、試合日程の都合で、仕事も休まなければなりません。ですが、思い切ってチケットを購入しました。父の影響で、同じくサッカー好きで地元の少年チームに入ってる息子の分もです。

毎日、TV観戦をしながら、観戦の日を心待ちにしました。思いがけずのロシアの快進撃に、地元でもサッカーの話題が増えたような気がします。

そして、いよいよ試合当日です。

それは、このスタジアムで行われるワールドカップの最終試合である、日本vsポーランド戦です。

仕事を休んで、早朝に家を出て、息子と一緒に、はるばるスタジアムにやってきました。長いドライブも、観戦を楽しみにする息子との、サッカーの楽しい話題で、苦になりません。

実は隣国であり、ロシアといろんな意味で関係の深い両国。今大会、素晴らしい試合と結果を残す日本と、調子はいまいちだけど世界屈指のストライカーがいるポーランド。

本当に楽しみにしていたのです。

そして、両チームがしのぎを削る試合は、途中までは緊張感のある好試合でした。

以前、ロシアで活躍したHONDAが出場しないのは残念でしたが、仕方ありません。

試合が進むにつれて押し気味になったポーランドが先制点をあげましたが、日本ももちろん負けていません。まだ1点差です。

しかし、、、

試合が終わりに近づいた頃、おかしなことが起こります。

負けている日本が、最後の選手交代で守備的な選手を入れ、なぜか後方でパス回しを始めたのです。

もちろん勝っているポーランドは、それに対して無理してボールを奪いに行く必要はないので、傍観しています。

ヨーロッパのリーグはTVでほとんど観ているし、確かにこういうパス回しも戦術として珍しくありません。

ただ、普通は勝っているチームがやることなので、負けている方は、その状況を打開するために、ボールを奪いに行き、やはり試合に動きはでき、緊張感は続くのです。

でも、これは違います。

あまりにも異様な光景が目の前に繰り広げられています。

いったいなんだろう、、、と思っていたら、周りでスマホを見ている人が言っています。

「コロンビアがリードしてるから、このまま負けてもいいらしいよ。」

シラけた空気が、フィールドにもスタンドに流れます。

どこからともなく始まったブーイングがスタジアムを包みます。

でも、くだらない茶番は続きます。

「これが、ワールドカップのサッカーなのか、、、」

彼は、混乱する頭の中が整理しきれないまま、一緒にブーイングをします。

息子はわけがわからずポカーンとしています。

そして、、、

世紀の茶番の10分間が終わり、試合は終了しました。

家路に着く親子の足取りは重く、帰りの車の中で、とりあえずの状況を説明しましたが、

どうしようもなくやりきれない思いは払拭されません。

行きの車内の興奮が嘘のように、いつしか親子は無口になり、重苦しい時間が流れます。

「これが、オレがずっと愛してきたサッカー、そして夢に見たワールドカップだったのか、、、」

、、、

深夜、彼が帰宅します。

私もTVで試合を観ていました。

やはり複雑な思いを抱えながら。

車の音がして、思わず外に出て彼たちを迎えました。

でも、なんて言葉をかけていいかわかりません。

車から降りた彼も苦笑いを浮かべています。

「どうだった?」なんて、しらじらしい言葉ももちろん出てきません。

息子がくったくなく言いました。

「日本負けちゃったね。ボクも応援してたのに残念だったあ。でも、負けても喜んでたよ。よくわかんないやあ、、」

純粋にサッカーを楽しんでいるこの子になんて言えばいいんだろう。

大人の汚い世界を教えたらいいのか、それが勝つための戦術だと。いざという時には、目的のためには手段を選ばないのが日本人だと。

それとも、キミはこんなふうにならないで、純粋にサッカーを楽しんで、と言うべきなのか。

ただ、

ただ、恥ずかしかった。

日本人として、とても恥ずかしかった。

「ごめんな。わけわかんなかったよな。」

そんな中身のないセリフしか、彼にかけることができませんでした。

でも、同時に心から思いました。

せめて、彼にも、息子にも、こんでサッカーを嫌いにならないでほしい。

これからも純粋にサッカーを愛してほしい。

そして、決勝トーナメントが始まるワールドカップを、変わらず楽しんでほしい。

それだけを、

ただ、ただ、祈りました。

この、純朴な親子のために、

私たちの愛するサッカーのために、、、



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これは、ただのフィクションです。

日本人の設定はご都合主義ですが、でも、こんなかんじのロシアのファンはきっといたと思います。

日本の監督が、「究極の選択」という言葉を使っていましたが、あんな選択肢が有力候補のひとつになっていたことが既に情けないです。

そして、後の会見で、選手に辛い思いを、とか謝っていましたが、意味がわかりません。

あなたがもし本当に申し訳ないという気持ちを持ってくれるのなら、それは、結局それを実行した選手に対してではなく、またチームと一蓮托生の日本サポーターでもなく、

利害関係もなく、純粋にサッカーを愛し、楽しむ、この親子のようなファンに対してです。

でも、それもひとつの戦術だったわけで、もちろん確信犯なわけで、べつに謝る必要はなかったと思います。

それが、今の日本のサッカーであり、なんだかんだいって擁護派の多い日本という国のメンタリティです。

それはそれでいいのでしょう。

ただ、自分はとても恥ずかしいです。

そして、呆れています。

毎日バカみたいに朝までワールドカップを観て、寝不足と最近の暑さで体調ボロボロの、それなりにサッカーを愛するひとりの日本人として、とても恥ずかしいです。

それだけです。

今日から、決勝トーナメントが始まります。

こんなネガティブな気持ちを忘れさせてくれるような、素晴らしい試合と、感動を届けてもらえると思います。

そう祈ります。

きっとこの世界のどこかにいる、この親子のようなファンのためにも、、、

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