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2018年06月30日03:20

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20180628 街裏ぴんく漫談独演会「武蔵野公会堂」@武蔵野公会堂

街裏ぴんくのやっている、まぁ、ジャンルとしては一応「漫談」になるピン芸。無茶苦茶おもしろいんだけど、この面白さをどうやれば説明できるのか。前回の独演会辺りから、特にレギュラー番組や事務所のコネクション(エレキテルのライブ後援なんて明らかに爆問がらみでそうだよね。別にそれが悪いわけじゃないんだろうけど)があるわけでもないのに、TBSラジオが「今年一番来そうな芸人」とかいって開催にからんでいて、その関係でイベント紹介番組では「この男の話す内容は、全て嘘」という紹介の仕方をしていた。で、それはかなり正しい、というか、簡単に説明しようとするとそうなる。でも、それじゃあ普通のピン芸人とかが漫談で話していることって、本当のことなのかというと、違うよね。ネタなんて、みんな、嘘、というか、フィクションだよね。それじゃあ、なにが違うのか。

えーと。吉田戦車のまんがで「ぷりぷり県」という架空の県をでっち上げたやつがあったよね。あれが一番近いかなぁ。で、その架空の県を題材に、吉田戦車独自のシュールな笑いの組み立て方をしていく。
街裏ぴんくの場合は、これを、実在の固有名詞を使って、しかし展開はものすごくシュールな論理展開でやっていく。例えば、最初にやった「朝丘雪路が、生前、小さな会場でやったお笑いライブに行った」話。普通にこれをお笑いのネタとして作ろうとしたら、朝丘雪路が若手芸人がそういうところでやりそうなことをやるという感じで肉付けをしてそのギャップで笑わせる、という感じでいくと思うけど、街裏ぴんくは、その朝丘雪路がやろうとしているお笑いそのものを一から創作する。「その時に朝丘雪路さんがやったネタが、こんな感じのこんなネタでね」
つまり、固有名詞とかを使って現実味は与えているんだけど、基本の骨格は街裏ぴんくが作った全くの創作。しかも創作の上に創作をメタに載っけていくというすごいスタイル。

別の言い方をすると。
よく、おもしろくない話の例として、「自分が前の晩に見た夢の話を他人にする」というのがある。夢なんて見ているときには辻褄合っていておもしろい気がするんだけど、実際に他人に話すと、全然論理性も整合性もなくて、聴かされる方はたまったもんじゃないんだけど。
でも。この夢の話を、その論理性も整合性もないままの夢の話を、おもしろく語れる人がいたとしたら。

そう。街裏ぴんくがやっているお笑いって、ものすごくニッチで、しかもあまりにも難しいんですよ。本来なら。
創作ものって、本来は物語の内部構造とかの整合性がものすごく大事で、だから、意外と整合性がない現実に起こる事件事故に対して「そんなの、創作でやったらリアリティがなくてボツにされる」という風にいわれる。その「創作でやったらボツにされる」ことを、創作で、しかもおもしろくやろうとしている。その創作に失敗してすべってしまって得られる失笑に近い「オフビートな笑い」じゃなく、ちゃんと腹の底から笑えるネタを。

だから、演じるときの街裏ぴんくは、ものすごくオーソドックスなスタイルをしている。ストライプスーツに蝶ネクタイ。スタンドマイク。ほとんどのネタの時には、演じているときには照明や音響の効果は一切入れないしゃべくり漫談。ものすごくシンプルかつスタンダードなスタイルで、ネタは、思いっきりシュールレアリズムな構成。でも、うっかり「芸術」になったりしないように、ちゃんと「演芸」「話芸」になるようにギリギリの、観客がついてこれるだけのリアリティだけは確保して。
そして、その結果どうなるか。よくできた怪談とかにも通じるんだけど、嘘、全くあり得ない話のはずなのに、「え、もしかしてこれ、本当の話?」と一瞬、脳が混乱する。恐怖と紙一重の面白さ。

でも、別にネタ自体が難しくて聴きに行って笑えるかなんて心配はいらない。頭からっぽにして聴きに行ってもおもしろいから。ただ、なにが面白いのか人に説明するのが難しいと言うだけで。だから、人に勧めるときには「とにかく面白いからみて、聞いて」で十分。

とにかくこの芸、「他の追従を許さない」という表現が一番合いそうな気がする。あ、この路線おもしろそうだなぁ。そう思っても、そう簡単には真似できない。テクニックとしての「話芸」と、シュールさとリアリズムのバランス感覚を評価できる自分の中の確かな規準。そして、そもそもおもしろいアイデアをひねり出せるだけの発想力。全てが揃っていないと、同じスタイルを真似できない。

あ、たぶん一番近い芸は、「黒伊集院」こと、深夜番組でフリートークをしているときに、突然口からでまかせを言ってそのでまかせをどんどんと展開しているときの伊集院光のトーク。そういえば伊集院光も元は当代円楽の元で落語の話芸を修行していて話芸は確かだし、自分でも「理屈バカ」と言っているくらいに、地頭、それも直感とかじゃなくて論理展開とかがものすごい。
伊集院光の、それをアドリブでどんどんと展開できるのもすごいけど、それをネタとしてまとめ上げて演じることのできる街裏ぴんくもすごい、よ(,,゚Д゚)

次の独演会が、よりにもよって、雀々・べ瓶・とむという「ありがとう、あたしのためにあたしの好きな落語家さんを集めた三人会を開いてくれて」という落語会とドンかぶり、しかもそっちのチケットはもう入手済みという感じで、わー残念と思っていたら、別の日に大阪でも開催されるとのこと。うーん、その翌週、みとせのりこの関西ツアーあるけど、前週も足伸ばすかなー。昨日のライブで、前回の独演会のDVDに、著作権の関係で「とんねるずのファンが集うトンネル」というネタが入れられないというエンディングトークで思わずでっかい落胆の声を上げたあたし(昨日今日と、舞台から見える距離&こっちも目立つ容貌をしているのですぐばれた(,,゚Д゚))に気づいてか、今日の「苦肉祭」でそのネタをやって頂いたし(,,゚Д゚) いや、今日聞けるとは思わなかったよ。これはもう、今書いてきたことを集約するようなすごいネタだから(,,゚Д゚)



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