〜全編iPhoneで撮影した映画「タンジェリン」で高く評価されたショーン・ベイカー監督が、カラフルな風景の広がるフロリダの安モーテルを舞台に、貧困層の人々の日常を6歳の少女の視点から描いた人間ドラマ。定住する家を失った6歳の少女ムーニーと母親ヘイリーは、フロリダ・ディズニーワールドのすぐ側にあるモーテル「マジック・キャッスル」でその日暮らしの生活を送っている。そんなムーニーの日常が、ある出来事をきっかけに大きく変わりはじめる〜
<映画.comさんより>
日本版ポスター
英語版ポスター
2回観て、最初に観た時の評価は、3つ☆
母親ヘイリーの態度、生き方、育児、しつけ等々・・・が生理的に受け入れられなかったのです。
同じ状況でも、ちゃんと働いて、子供にはしっかり善悪を教え、しつけをして、まっとうに生きている母親もいます。
なのに、なのに、なぜヘイリーは変わらないのか。変わろうとしないのか。
2回目。
目線を変えて観てみました。根本的にヘイリーがああなってしまったのは何故なのか?
ああやって生きるしかない、変われない理由は何なのか・・・そういう疑問をずっと抱きながらの観賞に。
すると、共感はせずとも、彼女をありのままに受け入れることで、作品がこちらに溶けてきてくれた感じがしました。
ヘイリーは、確かに褒められるような母親じゃない。でも、ムーニーに八つ当たりはしないし、ムーニーの前ではいつも笑顔だし、衣食住は、しっかりと与えている。。。手段はどうあれ。。。
ヘイリーのあれこれの非常識な言動を客観視するにつけ・・・これは相当、背後に根深い負の連鎖があるのかと。憎しみ、怒り、哀しみを伴った・・・。
クール・アンド・ザ・ギャングの大ヒット曲『Celebration』で幕を開けるこの作品。
とにかく全編に渡って、カラフルです。
撮影監督曰く「本作の映像美はサワーツイストの入ったブルーベリー・アイスクリーム」と。
真夏の設定ということもあったんでしょうか。とにかく、アイスクリームがよくでてきます。
のためにお金をせびり
で友達と仲良くなり、母親にねだるのも
床にこぼすのも
ボビー(ウィレム・デフォーが好演!)はモーテルの建物&住人の心の管理人
・ペンキ塗り、停電処置、洗濯機の修理、各部屋の管理、住人の苦情、ありとあらゆることに対応
・子供たちのかくれんぼにも・・・一応、協力!?
・途中出てくる、怪しいおじさんは・・・おそらく小児性愛者。ハッキリとした説明台詞はないが、ボビーの演技でわかる。何か事が起きる前にそいつを追い出すボビー
・住人を守りつつも、住人にもルールを守ってもらう
短い出演場面だけど、ボビーの息子役はケイレブ・ランドリー・ジョーンズ(『スリー・ビルボード)』
観客ともどもやすらぎの場面
・何度か出てくるヘリコプターは、おそらく、簡単には上昇できない今のヘイリーたちの生活状況との対比。また、この地帯で何が起きているのかの第三者的な視線なのかも。
全編にわたって、よく練られた脚本です。
子供たちにとっては、いわゆる貧困エリアでも、そこは、毎日冒険ができるキラキラした世界。
子役たちのリアルな演技も素晴らしく、その演技を引き出した監督の腕は大したもの。
ムーニーの印象的だった台詞。
・「大人が泣く時はわかる」
・「あの木好きなんだ。倒れてても、そのまま成長するから」
そして、問題のラストシーン。
観客の反応は、呆然とするか、感動するか、極端に2つに分かれているかと。
私は、1回目の観賞では、前者。そして、2回目では、後者となりました。
2回目、そうなった理由を自分なりに考えてみました・・・。
もちろん、ヘイリーを寛容的に見れたことが1回目とは大きな違いだとは思いますが。。。
冒頭、新しく越してきた一家の車に、ムーニーたちが唾を吐きかけ、その後、掃除するように言われるんですが、その一家の子供のジャンシーが掃除を手伝う場面。
おばあちゃんから「なんで、(やられた側の)あんたがやらなきゃいけないの?」
ジャンシー「だって(手伝ってて)頼まれたから・・・」
私は、このジャンシーの一言がラストシーンにつながっていると思いました。
「Bye Byeなんて言えないよ・・・
」っていうムーニーの表情に、ただならぬ事態が起こっていると察したジャンシーは、何か、何かしてあげなきゃって、咄嗟にあの行動にでるのです。
ここではジャンシーは頼まれてはいません。でも、それまでに、ムーニーは新入りのジャンシーに、ディズニーワールド外の、様々なマジカルワールドを見せてくれていました。本物のディズニーには行けなくても、こっちの世界も楽しいんだよって教えてくれていました。
今度はジャンシーの番だったのです。ジャンシーがムーニーの手を引いて、連れて行ってあげたのは、’本物の’魔法の世界。
それまでの映像とは全く異なる映像で、私たちに問いかけてきます。
私たちも、ムーニーとジャンシーと一緒にその世界に入りながらも、2人の背中を眺め・・・改めて、辛い現実世界に思考が戻ったりしてしまうのです。
魔法がとけたらどうなるの?これは何の解決にもなってないのでは?
それでも、感動してしまうのはなぜか?
ムーニーは、それまで全く泣くことはありませんでした。それがジャンシーの前では大泣きしてしまうのです。今までこらえてきた涙だったのかもしれません。
ジャンシーは、人についてゆきはするけれど、自分から行動を起こすタイプの子ではなかった気がします。その彼女が、ムーニーの手を引いて、自分から走り出したのです
ムーニーとジャンシーの幸せを心から願う。。。そんな余韻で劇場を後にしました。4つ☆
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