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2018年01月06日14:16

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2017年の読書記録(その1)

2017年の読書メーター
読んだ本の数:196冊
読んだページ数:60007ページ
ナイス数:1421ナイス

https://bookmeter.com/users/4147/summary/yearly
■哲学の誕生: ソクラテスとは何者か (ちくま学芸文庫)
理解の程は怪しいが、一読して非常にスリリングかつ画期的な哲学書だと思った。何よりソクラテスを主題的にとりあげた本というのが新鮮。そして、とりわけびっくりさせられたのが、ソクラテスの代名詞とも言える「無知の知」という言葉がいかに誤解に満ちていたものだったか?という考察。単なる素人の思い込みではなく、哲学史でも一般に教えられていたのだから、この事実は重い。これは今後長い時間をかけて正していかねばならない問題だろう。またソクラテス文学という側面から彼について論じるというのも、非常に興味深い試みだと思った。
読了日:12月05日 著者:納富 信留
https://bookmeter.com/books/11584721

■授乳
処女出版でこんな本をものにしていたのか…と少なからず驚かされた。先に読んだ『コンビニ〜』に感じた巧さが本作にも既に息づいている上、それが嫌味にならない程度に著者の世界観(?)と絡み合っているところに好感が持てる。また、多和田葉子氏と作風が似ているというのもよい意味でちょっと気になる。また一方で、著者が作家仲間からクレイジーと呼ばれる背景がわかる気がした。極端にエキセントリックではないけれど、どうしても一般社会からずれてしまう主人公達は、著者のペルソナが何某かの形で反映されているのでは?と勘ぐってしまう。
読了日:12月04日 著者:村田 沙耶香
https://bookmeter.com/books/541109

■慨世の遠吠え2
概ね興味深く読めたものの、新味に乏しいというのが正直なところ。鈴木氏による前書きにもあるように、基本的に内田氏が語り手、鈴木氏が聞き手という図式になっているためか、今ひとつスリリングさに欠けるというか。そこで語られる内田節も教えられることはあるが、でも一方で「何だかな…」感が拭えない。例えば佐藤優氏だったら何というだろう?てなことをつい考えてしまう。ただ、本書から浮かび上がってくる日本の実情の酷さにはやはり暗澹たる気持ちにならざるをえない。特に鈴木氏が右翼から放逐されたという事実に愕然とせざるをえない。
読了日:12月04日 著者:内田 樹,鈴木 邦男
https://bookmeter.com/books/11497324

■日本の近代とは何であったか――問題史的考察 (岩波新書)
昨今の新書には珍しくかなり重厚な内容で、ある程度日本近代史の知識がないと読みこなすのは難しいかも。とりわけ、日本の経済史、及び政治史をとりあげた章は、正直読み進めるのが辛かった。このあたりは改めてじっくり再読する必要あり。これはできれば、新書ではなく、単行本で詳細な注釈をつけた版で読みたかったと無い物ねだりをしてしまう。とりあえず、日本の近代化がどれだけ危うい状況の中で進行していったか、そしてそれがどれだけ世界史的に見て稀有なことだったか、は理解できた気がする。今後の日本について考える上でも有効な一冊。
読了日:12月01日 著者:三谷 太一郎
https://bookmeter.com/books/11604424

■スピノザとわたしたち
まずタイトルが良い。単なる思考の遊戯ではない哲学とは何か?という著者の思いが反映されているように思う。理解の程は怪しいが、今日においてスピノザをいかに読み、理解するか?そしてそれをいかに実社会に反映させるか?ということが主たるテーマではないか?ということは朧げながら理解できた気がする。また、何より大きいのは、改めてスピノザを読み返してみようという気にさせられること。『エチカ』のような透徹したスタイルと文体がこれまで数多くの人々を熱狂させたという不思議。その熱狂の一端が本書にも伺える。また読み返したい。
読了日:11月09日 著者:アントニオ ネグリ
https://bookmeter.com/books/4389102

■西洋哲学史: ルネサンスから現代まで (ちくま学芸文庫)
理解の程は怪しいものの、一読して本書は手元に置いて繰り返し読むべき物であると直感した。サブタイトルにもあるように、哲学史全般をカバーしているわけではないが、ルネッサンスから現代までという切り取り方に著者ならではのこだわりと独自性が伺える。また、一般的な哲学史とは趣を異にしているのは、ややマイナーな哲学者(特にフランス系)にもかなり言及していること。そのことによって、英仏独の哲学者達がいかに影響を与えあってきたかがより鮮明になる。平明な文体でつい読み飛ばしてしまいがちだが、用語一つ一つに留意して読むべし。
読了日:11月09日 著者:野田 又夫
https://bookmeter.com/books/11676871

■「意地悪」化する日本
このあいだの選挙の後に本書を読むと、どうしようもないもどかしさを覚える。本書で二人が期待したように、若者は安倍政権にノーをつきつけなかった。また、日本はますます「意地悪化」しているように思えてならない。どれだけ今の政治が酷くて、とんでもないことが堂々とまかり通っていることを声高に叫んでも、当の政治家達並びに自民党に票を投じた人達の耳には届かない。結局この事態にノーと言える人間が少しずつ社会に働きかけないとダメということなのか?今回の選挙の結果を受けての第二弾を期待したいところだが、やはり難しいか?
読了日:11月06日 著者:内田 樹,福島 みずほ
https://bookmeter.com/books/10110977

■深読みジェイン・オースティン―恋愛心理を解剖する (NHKブックス No.1246)
「こんな風に読めてしまえるんだ!!」オースティンの作品を一通り読んだ者にとっては、目から鱗というか、夥しい謎解きの連続で、少なからず興奮を覚える。時に著者の女主人公に対する目は辛辣になるが、それがまた妙味でもある。そして、その精緻な読みから浮かび上がってくるオースティンの作品の魅力に改めて気付かされた次第。ごく狭い世界を舞台に、限られた登場人物を巧みに描き分け、すれ違いや勘違い、思い込みなどを駆使して豊穣な物語世界を紡ぎ上げたという事実に感服。それと同時にもう少し長生きしたら…と惜しまれてならない。
読了日:11月01日 著者:廣野 由美子
https://bookmeter.com/books/11998217

■ダメ出しの力 - 職場から友人・知人、夫婦関係まで (中公新書)
基本的に否定的なイメージを持たれがちな「ダメ出し」という行為を掘り下げて論じるという趣旨には賛同できるのだけれど、いかんせんアンケートを主とした統計をベースにした分析というアプローチが個人的に馴染めない。こういうのは、大まかな傾向も勿論大事かもしれないが、個々のケースも交えながら論じていけば、一層説得力を持つのでは?と思えてならないのだが。後、ダメ出しという行為が意味を持つのは、親子、学校などの教育の現場が最たるものだと思うのだが、その点からの分析が殆どないのも残念。今度は別の方法での「ダメ出し」論を!
読了日:10月08日 著者:繁桝 江里
https://bookmeter.com/books/7968157

■義太夫を聴こう
概ね興味深く読めたものの、「結局義太夫ってなんなの?」という思いは晴れず(笑)。浄瑠璃、歌舞伎、文楽など、邦楽及び日本の伝統芸能に疎い身にとっては、幾度となく混乱させられた。ただ、以前読んだ橋本氏の『浄瑠璃を〜』と同じく、その物語世界のご都合主義的というか緩い世界観に、「こういうのもありなんだ…」と妙に納得させられたのも事実。「話を作るのに必ずしも厳密に辻褄があったストーリーが必要というわけでもないんだ…」みたいな。ただ、その緩さをあえて納得させるような何かが必要不可欠ということでもあるのだけれど。
読了日:10月06日 著者:橋本 治
https://bookmeter.com/books/9866325

■津島佑子: 土地の記憶、いのちの海
改めて津島佑子の不在を思い知らされた。と同時にこの作家が問いかけてきたことの重み、そしてその仕事があまりに知られなさすぎるのでは?という思いにかられる。少数者、虐げられた者への眼差し、それを抑圧する者への憤り。世の動きが右傾化へと突き進む昨今だからこそ、著者が残した仕事が大きな意味を持つ。特に好みというわけではないが、なぜか読まずにはいられない吸引力を感じ、付き合い続けたこの作家の魅力がどこにあったのかを改めて知った気がする。新たに出る著作集を読む上での。水先案内にもなる。これからも度々手に取るだろう。
読了日:10月04日 著者:
https://bookmeter.com/books/11297748

■浄土真宗とは何か - 親鸞の教えとその系譜 (中公新書)
タイトルに反して…というべきか、真宗の思想に取り組んだというより、その発生と歴史的系譜に多くが割かれており、個人的に肩透かしを食らった感が否めない。また、新書という限られたサイズに雑多とさえ言える内容を盛り込んだため、どうしても食い足りなさが残る。とりわけ興味を覚えたのが、本書で幾度となく言及される「他力」という概念。教科書的な知識で、ある程度知っていたような気になっていたが、本書を読んで、それ程単純な代物ではないことが理解できた。ただ、そこをもっと体系的に突っ込んで欲しかった…他の文献に当たってみるか?
読了日:10月02日 著者:小山 聡子
https://bookmeter.com/books/11276681

■総説キリスト教―はじめての人のためのキリスト教ガイド
「初めての人のためのキリスト教入門書」とあるが、とても一般向けの入門書とは言えないのでは?というのが正直なところ。あまりに専門用語や抽象的な話が多すぎるし、あまり一般的ではない言葉への訳注など、訳者の配慮が足りない。また、巻末のブックガイドも、翻訳についての言及がなされていないのは、怠慢の極み。内容そのものは悪くないのだから、一般読者への橋渡しとしての訳者の配慮があまりに足りないのが残念でならない。一般向けというより、神学部1年目の学生むけではないか?できれば、もっと丁寧な新訳がでることを切望する。
読了日:09月15日 著者:アリスター E.マクグラス
https://bookmeter.com/books/596746

■鬱屈精神科医、お祓いを試みる
何となし想像していたものとかなり違っていたが、予想以上の面白さで殆ど一気に読了。著者独特のいじましさ、コンプレックス、妬み、僻みがあたかも自分のことのようにリアルに迫ってくる。それと同時に驚かされたのが、著者の記憶力。一応小説と銘打っているから、多少の脚色は施されているのだろうけれど、それでも遠い過去の思い出が、詳細かつ鮮やかに描かれているのは賞賛に価する。それから個人的にとりわけ痛切に映ったのは、著者の母親に対する屈折した思い。それを還暦過ぎても抱え、なおかつ一つの作品として昇華させた著者に一票?
読了日:09月13日 著者:春日 武彦
https://bookmeter.com/books/12105804

■だめだし日本語論 (atプラス叢書17)
これまで当たり前のものと思っていた日本語が、実は全然そうではなかったということに気づかされること請け合い。後、国語の教科書に掲載された古文が実は原文そのままではなかったということに面食らう人も少なくないに違いない。恐らく世界的に見ても、ややこしくて面倒臭い日本語。でもそういう言語だからこその魅力があるということが如実に伝わってくる。ただ、問題なのは、本書がいわゆる国文学プロパーによるものではないということ。全ての国文学者は本書を読んで猛省すべし。国語教育に携わる人必読必携であるということはいうまでもない。
読了日:09月12日 著者:橋本治,橋爪大三郎
https://bookmeter.com/books/11939874

■重力と恩寵 (岩波文庫)
長らく田辺保訳で親しんできたものを新訳にて再読。他の冨原訳はわりに好きなのだけれど、本書に関しては、どうもすっきり入っていけず。初めて田辺訳で読んだときの衝撃にはとうてい及ばなかったというのが正直なところ。もちろん、冨原訳に欠陥があるわけではないが。ただ、原著にはない習性が多々施されているということで、そこで印象が変わったというのもあるのかもしれない。その一方で、改めてヴェイユの思考の難解さ、崇高さと同時に時として散見される極端な思想に解消し難い違和感も覚えた。まずは、田辺訳並みに繰り返し読んでみるか。
読了日:09月11日 著者:シモーヌ・ヴェイユ
https://bookmeter.com/books/11602819

■夏目漱石と西田幾多郎――共鳴する明治の精神 (岩波新書)
漱石と西田…ほぼ同世代であり、一時は同じ学び舎に属し、少なからず共通の知人を持ちながらも、結局殆ど交わることがなかった二人。しかし、二人には同時代に生き、スタンスを異にしながらも、共に西洋及び時代と対峙してきた…その過程が生き生きと描かれている。また、それぞれが抱えた過程の事情や鬱屈というのは、様相を変えながらも、今の時代にも通じるもので、人間の営みというのは、結局そんなに変わらないのか?と思わせる。ただ、そこに潜む家父長制と、それといかに対峙したかという点で、様々な側面が見えて来るのがとりわけ興味深い。
読了日:08月04日 著者:小林 敏明
https://bookmeter.com/books/11959241

■服従
佐藤優氏推薦ということで読んでみたが、予想外の面白さ…と同時に、西欧諸国にとってイスラムがどれだけ脅威でなおかつ影響力を及ぼしているか、が如実に理解できる。本書が未来を予言しているとは思わないけれど、これからの世界情勢を見ていく上で、かなり示唆的であるのは確かだろう。個人的には主人公が自分と年が近く、なおかつ独身で一人暮らしという設定につい我が身を重ねてしまう。もっとも僕はフランソワみたいにもてないけど(笑)。後、日本製の車やキャラクターが登場するのが印象的。こういうのは、本国ではなかなか見えてこない。
読了日:08月02日 著者:ミシェル ウエルベック
https://bookmeter.com/books/9785941

■ハイラスとフィロナスの三つの対話 (岩波文庫)
対話式ということで、サクサク読み進めることができるかな…と思いきや、これが想定外の難物。当時の哲学史的背景に疎いためか、議論の道筋がすっきり入ってこない。何より本書の主旨である非物質主義の論拠がチンプンカンプン。ただ、巻末の訳注と解説まで読んでみて、本書の性格と分かりにくさの一端が理解できた気がした。要するにこちらの印象通り、本書は一筋縄ではいかないもので、様々な危うさや揺らぎがあったのだな…と。これは恐らく予め本書の要約的なものを念頭に置いて、その要約を本書の内容に当てはめながら読んでくべきでは?
読了日:08月01日 著者:ジョージ・バークリ
https://bookmeter.com/books/40701

■ソシュール超入門 (講談社選書メチエ)
ソシュールに関する本を読む度に、何とも言えないもどかしさを覚える。どれだけ精緻にソシュールの手稿や講義録を読み込んでも、決してソシュールの思想の真髄に辿り着くことはできないのでは…?と。ソシュールの簡易な伝記や毒メンタリータッチの講義の描写など、比較的読みやすい入門書である本書を読んでも、その気持ちは拭えない。また、言語学の対象を話し言葉に限定すると言いながらも、綴りの問題に拘泥し、アナグラム研究に夢中になるという矛盾したソシュールの側面が改めてミステリアスなものに思えた。参考文献の紹介が物足りない気が…
読了日:08月01日 著者:ポール・ブーイサック
https://bookmeter.com/books/5643710

■キリスト教は役に立つか (新潮選書)
やや挑発的なタイトルに身構えてしまいそうになるが、繙いてみれば、平易かつ含蓄のあるエッセイ集という趣で、一気に読めてしまう。ただ、その平易な語り口に惹かれてさっと読み通すだけではあまりにも惜しい多くの知見がちりばめられているのを忘れてはいけない。つい即物的、効率的なやり方に流れがちな昨今にあって、いわばその対極にあるというべきキリスト教に触れることの意義が本書から強く伝わってくる。それも決して強引なやり方ではなく、広く浅い所からジワジワと伝わってくる感じ。日本におけるいわば理想的な宣教のありかたかも?
読了日:07月10日 著者:来住 英俊
https://bookmeter.com/books/11685133

■統合失調症あるいは精神分裂病 精神医学の虚実 (講談社学術文庫)
以前単行本で読了したものを文庫版にて再読。最初読んだときは心地よかったべらんめえ口調が今回はちょっとくどく感じたな(笑)。それはともかくとして、理屈より臨床ありきという著者のスタンスには改めて好感を抱いた。また、分裂症から失調症へと呼び名が変わったことにある程度の意義を認めながらも、あえて分裂症という言葉を使うところに著者ならではの拘りを感じる。それとかつて一部で持て囃された、分裂症を神聖視するような思的潮流への苦言にも考えさせられるものがあった。そして、やはり現状がなかなか変わらないという事実が重い。
読了日:07月08日 著者:計見 一雄
https://bookmeter.com/books/11564927

■夜行
謎が謎を呼び、結局肝心なところは解決されないまま、宙ぶらりんになった状態で終わった感が…それがまた独特の余韻を残す所が妙味でもある。一読して印象的だったのは、これまでにない円熟味を感じさせる文体。ちょっと純文学の香りが…と思ったのは僕だけか?個人的に最も「あれれ?」だったのは奥飛騨篇か。微妙な問題を抱えた人間同士の旅行の描写には、若干息がつまる思いがしたが、その緊迫した話の顛末には若干拍子抜け。そして最後の最後には『猿の惑星(?)』的などんでん返しにはど肝を抜かれた感が。この辺りは著者の真骨頂かも。
読了日:07月07日 著者:森見 登美彦
https://bookmeter.com/books/11182143

■たとえ世界が終わっても ──その先の日本を生きる君たちへ (集英社新書)
日本の論壇はなぜ橋本治を黙殺し続けるのだろう?ふとそんなことを思わされた。多くの読者を持ち、その発言はそれなりの影響力を持っている筈なのに、左右両方の論客が氏の言説を取りざたにするのはあまりに少ないように思われる。それだけ、氏の言説がラディカルということなのだろうか?二百数十頁という紙幅が信じられないくらいの豊富な内容。そして、その中でほぼ一貫して、経済成長のあり方に疑問符をつける氏のスタンスには共感するところ大。殆ど誰もが疑わず前提としている経済成長の行き着く先は何か?その問いの意味はますます重くなる。
読了日:07月06日 著者:橋本 治
https://bookmeter.com/books/11519980


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