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2017年12月05日01:46

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これまでと、そしてこれからの人間とアンドロイドの物語。「ブレードランナー2049」を観た!

 ずっと観たかったのだが明らかに続きものっぽかったので、家にあった前作のDVDを頑張って見直して視聴。おかげで続編として満足のいく映像体験と感動に呑まれつつ、気づけば長文に走ってしまうのであった。


【あらすじ】

 人類に代わって過酷な労働を強いられ、人間に使役する人造人間「レプリカント」が人間と共存する未来。一部の暴走したレプリカントを排除する警察組織「ブレードランナー」の一員であるKは、自身がレプリカントでありながらも同族を追い続ける。レプリカントからは恨まれ、人間からは「人間もどき」と蔑まれる。孤独を埋めてくれるのは立体映像として人間のように接してくれる、恋人のような存在の女性型コンピュータ「ジョイ」のみ。危険で孤独な日々を過ごしていた。

 ある日、Kは抹殺したレプリカントの農場の地下から一人の白骨死体を発見する。それは30年前に死亡した女型レプリカントのものだったが、調査の結果レプリカントは妊娠・出産していた事が判明した。

「レプリカントが生命を宿すなんて事はあってはならない」Kは上司から指令を下された。それは行方不明となったレプリカントの赤子を見つけ出し、その関連する全ての記録を抹消する事だった。


【(ざっくり)ブレードランナーとは?】

 1982年に公開された海外のSF映画で、原作は「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」という「どこをどうしたらブレードランナーになるんだ」という作品。ちなみに2049のパンフを見たら、当時のファンも同じツッコミを入れてた事が発覚。

 公開当時は日本のSFファンをくぎ付けにし、メタルギアでおなじみ小島監督は『スナッチャー』という割とまんまな作品を作った事でも有名。あと作者が違うはずのゼルダとドラクエのゲームブックを読んだら「二つでじゅうぶんですよ」という例の下りがまんま使われてて、今でいうところの「止まるんじゃねえぞ」クラスの流行語だった模様。

 「強力わかもと」に代表される怪しい日本語のネオン看板がひしめくビジュアルや、科学的に発展しつつも全体的に荒廃・衰退しつつある世界観、そして苦悩するアンドロイドというテーマは、後年のSF作品に多大な影響を与えた。要は攻殻機動隊や忍殺の大先輩な作品です。

 ついでに、私が神アニメとして日頃讃えている「勇者警察ジェイデッカー」の主役メカ・デッカードの名前の元ネタは、ブレードランナーの主人公・デッカードから取られているとか。真偽はさておき、両作品とも「人に造られた者が自我に目覚め、人間とともに悩み成長する」と共通するテーマを持っている。そんな深イイ話。


【(ざっくり)ブレードランナー2049】

 完全に続編。同じ世界を題材にしたリブート的なものを想像してたら、モロ前作の話と直結していて内心焦った。「前作を見ていれば楽しめる」というより「前作を見てないと話しの節々が理解できない」ってレベルで、そういう意味では新規ファンをガン無視した作品。観客を見ると当然と言うかシニア世代が目立つ。

 一応単独でも話の筋は追えるのだが、そもそも「レプリカントが人間に対してどのような存在であったか」とか「ブレードランナーがレプリカントを見分ける為のテスト」とか「旧式レプリカントは安全装置として寿命が設定されていた」とか、本編で「こんぐらい知ってるっしょ? 見てりゃなんとなく分かるっしょ?」ってレベルで重要な話や設定がサラッと出てくるので、視聴前の知識に頼る部分が多い。前作の主人公(ハリソン・フォード)がそのまま年老いて出てくる衝撃も、前作を観てるか観てないかで段違いだ。

 が、それさえクリアできれば前作をそのままグレードアップさせたような、広大でどこか虚無に満ちた寂しい未来空間が堪能できるので、古典SFを知って鼻タカになりたい背伸びボーイは頑張って前作と今作を続けて見よう。


【レプリカントは人間の夢を見るか?】

 本作のサプライズにして主題となるのは「レプリカントが命を作り出す」事だろう。レプリカントは元々人間を凌駕する性能を持つが、強靭な肉体ももとはといえば過酷な労働環境に耐えうるため。その力は人間に向けられてはいけない脅威であり、一部のレプリカントの暴走により悪夢は現実となった。製造が禁止されたのも制御が難しくなったからであり、人類が再びレプリカントと向き合うには完全に制御できるレプリカントが誕生するまで待つしかなかった。

 そんなレプリカントが出産までできるようになったら人間と何ら変わりない、いや、頭脳や体力などでは人間を圧倒する存在であるがゆえに、今度は人類の存在を脅かしかねない上位種族となる。今でこそ制御可能で人間に服従するレプリカントが、いつ人類に反旗を翻すか……というのが本作のテーマのひとつだ。前作でも触れられていたレプリカントの脅威はそのままに、結局レプリカントに頼る事でしか繁栄できず、結果として自らの首を絞めかねない、そんな人類の傲慢さや未熟さを描いているように思えた。

 警察の上層部が下した決断は「子供もろとも抹消せよ」。レプリカントの子はレプリカントと見なされ、人間と共存する道は断たれようとしている。そこでレプリカントであるKが辿り着いた真実、そして自身が出した答えは……前作ファンならきっと納得のいく結末だと思う。


【まとめ】

 レプリカントの冷徹なアクションや、前作をほうふつとさせる雨のシーンなど、芸術的なビジュアルや空気も良いが、前提条件として前作の視聴が必須な本作。今から前作見て映画館行ってというのもハードル高いけど(何より公開1か月以上経ち上映そのものが危うい)、それに見合う価値はある壮大な続編。予告も含めると約3時間の長丁場、気合を入れて観に行こう。

 逆に前作見て「?」な方は適正がないので、エンタメに富んだ『スナッチャー』を遊ぼう。未来のメタルギアも出てくるぞ。
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