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2017年11月20日00:01

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PL記録:ゆうやけこやけ(狐の社で)リプレイ風小説 その1

−・−・・−・−

(マイク−−いいで−−か−−?)

(じゃあ−本番−−まーす−−!)


カラン、コロン。カラン、コロン。

人間の皆様の、おやすみから、おはようまで。
全国津々浦々の妖さんへお届けする妖怪電波。
夜も遅い丑三つ時から始まるその名は−−妖ラジオ!

「はい、ということで今日も始まりました妖ラジオ」
「今日は11月1日ですが、昨日は皆さんどうでしたかー?」

「私はねぇ、ハロウィンってヤツ未だに慣れないんですよね」
「やー、やっぱり西洋のお祭りですからねぇ。馴染みが薄いですよ」
「で、本当の所は?」
「……1人でしたよ、ひーとーりー!」

「誰にも誘われなかったと」
「もう、みんな池袋とかに繰り出しちゃってさぁー」
「あー。あのすっごいパレード」

「そうそう。もうね、妖メッチャ沢山いるらしいの」
「へぇー」
「Twitterとかの写真にバンバン本性写ってるけど誰も気にしないの」
「まぁ、我々の变化自体が仮装みたいなもんですからねぇ」

「さあ、そんなハロウィンに関するおハガキが届いております」
「なんとねぇ、その池袋のハロウィンパーティーの先駆けに関するお話だとか」
「楽しみですね! では『PN:一名学園の面霊気』さんから−−」


【狐の社で、ハロウィンパーティー】



===



「「「うわああああああああ!?」」」
「フハハハハハハハ!」

私は今、深夜の学園内を全力疾走している。
正面には小学校に忘れ物を取りに来たであろう子供達が必死に逃げている。

ああ、なんと素晴らしい光景だろうか。
小学生たちが私を見て恐怖に駆られて走っているのだ。
これぞ生き甲斐、妖怪の生きる糧よ。

−−などと悦に浸っていたからだろうか。
少年たちがクルッと振り返ってこちらを見たのに気付くのが遅れた。
先程まで悲鳴を上げていた筈の少年たちは、一転して意地の悪い笑みを浮かべている。
まずいっ!?

「「「貧弱、貧弱ゥー!」」」

子供達が『おまじない』を唱えた次の瞬間、ガクンと私の足が止まる。
この『ムキムキマッチョな人体模型』に向かってなんて事を言うのか。
とはいえコレが『面霊気』としての私のルール。

カラン。
人体模型の顔から一枚の能面が剥がれ落ちた。
まぁ、このまま床に居ては子供達にどんな悪戯をされるか分からない。
こっそり気付かれないように移動した背後から、歓声が聴こえてくる。

善き哉、善き哉。
翁の面となって暗い廊下をゆっくりと飛んでゆく。
もうしばらくすれば、忘れ物を見付けた子供達も帰るだろう。
人体模型はその後に戻しておけばいいじゃろうて−−


翌朝、守衛室のおじさんが校内を見回った際。
廊下に置きっぱなしにされた人体模型を見つけてため息を付いたとか、なんとか。



===




『面霊気』という妖怪を知っているだろうか。
元々は能楽に使うお面であったものが、長い年月を経て付喪神となった妖怪である。

この街、一名町(ひとつなちょう)にも面霊気が存在している。
彼は『一名学園』と呼ばれるこの町唯一の学園の美術室に飾られている。

時折抜け出しては人体模型に取り憑き、子供達を驚かせている。
ただ、これまで被害(心のトラウマは除くが)に合った人間は居ない。
なぜなら彼に対抗する為の、とっておきの『おまじない』が伝わっているからだ。


実を言うとこの『おまじない』に霊的な効果は存在しない。
なんせ彼は300年ほど前からこの町で妖怪をしている存在なのだ。

そんな昔に『ムキムキマッチョな人体模型』なんて有るはずがない。
だから、『貧弱、貧弱』という『おまじない』は彼が自分に課すルールでしかない。

暗闇から突然現れた人体模型に驚かない人間は稀であろう。
だが、彼はこの『おまじない』を言われると元の能面に戻り何処かへ逃げてゆく。
このやり取りは、ずうっと昔にこの学園ができてから始まった。

親から子へ、子から孫へ。
この町唯一の学園を卒業した者達は、学園七不思議の一つとして語り継いでゆく。
今ではすっかり浸透してしまって、出会ってすぐ退散させられてしまうのだ。

(などと俺っち自身の事を話してみたが、誰も聞いてないんじゃ虚しくならぁねぇ)


面霊気の『面ちゃん』は、火男のお面を付けながら人気のない道を走ってゆく。
もちろん『ムキムキマッチョな人体模型』で、である。

(ちゃんとスーツを着ているから気付かれない筈でぇ)

田んぼを走り抜け、八幡神社の階段を駆け上る。
途中、なんだか外人っぽいヤツと、その背後に取り付く幽霊が居た。

(はぁ、これまた酔狂なヤツも居たもんだ)

幽霊なんざ珍しくもないが、なんとも若い幽霊さんだ。見た目の歳は14歳ほど。
長い黒髪を縦ロール(!)にして、和服を着たその姿は嫌でも人目を引く。
といっても幽霊だから普通のお人には見えないんですがね。

外人さんは燕尾服を着た、大道芸人(?)って感じの姿をしている。
只の人間かと思ったが、何やら匂う、匂うねぇ。
どうやらこのお人も『こちら側』に片足ぐらいは突っ込んでいるらしい。


えっほ、えっほ。
二人を追い抜いてどんどん走っていく。
神社の境内を抜け、いつもと違う山道を駆けてゆく。

(近頃の子供達はすぐ『おまじない』を唱えやがらぁ。
 だから、唱える暇もないぐらいに追い掛けるしかねぇってことよ)

まぁ、人体模型が走り込んだからといって成長しなけどもねぇ。
心の中でツッコミを入れていたら足を滑らせて崖下に落ちた。

(でも痛くねぇ! だって俺っち人体模型だからね!)

崖下からゆっくりよじ登っていくうちにスーツがボロボロになったが、仕方がない。
苦労して元の道に戻った俺っちは再び走り出した。


しばらく走ってると少し開けた場所に出た。
そこには登山客が休めるように簡素な椅子が置かれていたが、どうやら先客のようだ。
バレないように後ろの木の影にスッと隠れた俺は、こっそりとその様子を伺う。

椅子にはさっき見た外人と幽霊ちゃん、それに子狸が座っている。
子狸はまだ变化が苦手なのだろうか。耳と尻尾が飛び出ている。
ふぅむ、いかん、いかんな。变化は妖が人間社会で生きる為に必須の技能だぞ。

思わず目をクワッと開けてしまう。
今の鬼の面でコレをやると大概のヤツは逃げてしまうが、そんなに怖いだろうか。
などと一人で面を傾げていると、外人が何やらゴソゴソとやっている。



===



あれは−−折り紙か。
折り紙は、子狸の手に渡ると独りでに動き出したではないか!
子狸と幽霊ちゃんはその様子を見て何やら興奮している。

むぅ、面妖な。
耳をそばだてて聴こえてきた会話を聞く限り、
どうやらあの外人は『魔法使い』と呼ばれるマレビトらしい。
あの折り紙を操る術は魔法使いとしての技能だと、子狸に説明している。


いやだがね、ちょっと待って欲しい。
動くとは言え、あれは折り紙じゃろう。ただの紙じゃよ、紙。
そんなものより、この私の『ムキムキマッチョな人体模型』の方が素晴らしかろうて。

居ても立っても居られず木陰から静かに這い出した私は、人体模型の内蔵を漁る。
そして、ゆっくりと幽霊と子狸君に近寄って−−

「初めましてお二人さん。 私の『肺』なんていかがかのう?」

幽霊に渡した肺は、スルッとその手をすり抜けて地面に落ちた。
子狸はわぁいと肺を受け取って眺めている。
あれ、驚かないんじゃな。そうかぁ、まぁ、妖じゃもんなぁ。




〜 その2に続く 〜
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