以前の日記
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1958374006&owner_id=81557 の続き的に。
わずか￥3,000- で入手した中古の業務用 S-VHS デッキ Panasonic AG-7500A は優れた機種ではあるが、いかんせん古い。 そこで次なる業務用デッキを探し続けていたのだが、なかなか良いモノに巡り会わず数ヶ月。
そして先日、￥19,800- でヤフオク！に出品されている Victor BR-822 を発見。 これはいわゆる「バブルデッキ」で、S-VHS の最高峰機種と言われているものだ。 元々の価格は１００万円を軽く超えるのであるから、とんでもない破格と言える（※１）。
機能・性能ともにこれ以上のものは無いデッキだが、故障も多く、中古品は「地雷だらけ」で、１ヶ月おきに業者メンテナンスをするプロでなければ使えない、とも言われる。
出品者のコメントによると「専門機器な為詳細検査が出来ません。通電検査のみです」との由。 もはや往時の Victor は無く、BR-S822 のメンテナンス体制も無い。 つまり落札しても、自分で何とかできなければ、すぐに転売するしか無い。 売れるかどうかは分からないが。
とは言え、機会を逃すと、次はいつになるか分からない。 AG-7500A はいつ壊れるか分からないし、ここで「賭け」に出るのも悪くない。 というわけで遂に自室にやって来たわけですよ、夢のバブルデッキが！
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見た感じ、とてもきれいで、中古とは思えないが、よく見れば音声ボリュームつまみのゴムカバーが１つだけ欠品している（写真向かって一番左の下から２番目のつまみ）。
不穏な空気を感じながら(汗笑)、メンテナンスハッチを開けてヘッドドラム付近を見てみると、かなりきれい。 潤滑グリスもほとんど汚れていないし、サビや曇りも見当たらない。 これはもしかすると大当たりかも知れない…！
電源を入れてアワーメーターを確認すると、やはり見た目通りの「若さ」。
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つまり電源は半年以上入れっぱなしだったものの、テープ走行は「２時間テープを３０本程度」。 中古デッキとしては極上物だ。
しかし、こんな高価なデッキを、「なぜあまり『使わない』まま手放してしまったのか」、という疑問も出てくる。 それには何か理由があると思われるのだ（不穏な空気再び）。
テープを入れて画を見る前に、ひとまず走行系をクリーニングしようと思ってクリーニングテープを入れると…リールモータのエラーが出て（※４）、テープ走行が止まり、しかもクリーニングテープが排出できなくなってしまった。 AG-7500A の時も、最初は機嫌が悪くて、何度も電源入れ直したら直ったので、今回もそれかな、などと思いながら電源断を何度か試すが一向に改善の気配無し。
BR-S822 は、内蔵 TBC 回路（※５）と、サーボ系回路が特に壊れやすいと言われているので、これはもしかしたらサーボ系回路が「ハズレ」だったのか、元のオーナーが手放した理由もそれなのか…などと疑心暗鬼。
サーボ系回路のコンデンサが「噴いている」ものは、それを取り替えたらあっさり直った、という報告もネットにはあるので、ひとまず回路基板を目視でチェック。
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…してみたが、どこをどう見ても全然キレイだ。 うーむ、これはテスタでちくちくチェックしなければ故障箇所が特定できないのか、前オーナーが手放した理由もそこなのか、などと思ったが、素で出来ることは全てやってみようと思い直し、メニューで ON／OFF を切り替えられるサーボ設定を見直してみる事にした。
テープの記録信号から同期信号を拾い出しサーボ制御するために、業務用・放送用ビデオデッキはサーボ ON で使う事があるのだが、クリーニングテープにはそんな信号は当然記録されていないので、エラーになってしまうのではないか…と想定したわけだ。
果たしてサーボ OFF にしたら、クリーニングテープはあっさり排出された。 再度クリーニングテープを挿入し走行させると正常だ。 良かった〜、一時はどうなることかと…(笑)。
数分待ってから通常のテープをサーボ ON で再生してみると、さすがの再生画質。
かくして、VHS ユーザなら１度は使ってみたい VHS 技術の最高結晶、BR-S822 が、当家の映像機器に加わったのである！（ドドォォン）
※１
映像機器は大きく３ランクに分けられる。 民生用、業務用、放送用である。 この順に価格は高くなり、機能・性能も変わってくる（※２）。
BR-S822 は放送局で使われる想定のデッキで、「特機」とも呼ばれる（※３）、S-VHS 最高峰デッキである。 特機グレードの S-VHS は、他に SONY の SVO-5800 などがある。
※２
民生用は普通に家電として売られているもの、業務用はブライダル業者や映像制作プロダクションや AV・IV 撮影編集などで使われるもの、放送用は放送局で使われるものである。
民生用と業務用は機能・整備性にかなりの違いがあり、業務用と放送用は機能・性能・精度に違いがある。
※３
放送の送り出しに使われていたテープ規格はベータカムや M�兇覆匹任△蝓�S-VHS／VHS では無いのだが、テープ編集用のプログラムを S-VHS／VHS デッキで実行して検証したのち、そのプログラムでベータカム or M�競妊奪�を動作させて本編集を行う、という事が放送局では行われていた。 大切な放送用テープを編集（何度もやり直す事がある）で摩耗させないためであり、このために S-VHS／VHS 特機というモノの需要があった。
※４
このように、不具合が細かく具体的に分かるのも業務用・放送用ならでは。
※５
Time Base Corrector（時間軸方向補整機）の略。 テープはアナログなので、どうしても微細な前後ズレが生じる。 そのようなズレを含む再生信号をいったんディジタルメモリに取り込み、正しいクロックで送り出すのが TBC の役目である。
民生用の TBC は上記の役割だけであるため TBS（Time Base Stabilizer：時間軸方向安定機）とも呼ばれるが、業務用・放送用 TBC はそれだけでなく NTSC 基準信号を正しいものにすげ替えたり、輝度・色・水平同期の位相補整をしたり、他機器に対して基準クロックを供給したりする事ができる。
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