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2017年09月05日17:45
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日本カワウソなぜ絶滅
困り顔が人気のツメナシカワウソ 伊勢シーパラダイスのブブゼラくんが急死
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ニホンカワウソはなぜ絶滅したのか
戦争と贅沢の犠牲になった動物たち
環境省は2012年８月２８日をもって，ニホンカワウソを「絶滅危惧種」の指定から「絶滅種」へ変更しました。
ニホンカワウソは体長１メートルほど、川で魚やエビやカニなどの甲殻類を好んで食べるイタチ科のほ乳類です。
1979年に高知県須崎市で生きた姿が目撃されて以来、３０年以上も生息情報がないため，今回の決定となりました。
ニホンカワウソの生息数に関する統計はありませんが，いつ頃からどんな経緯で絶滅に向かったのかはおおよそ分かっています。
江戸時代まで，民話などに登場する「カッパ」は，ニホンカワウソだろうと言われる身近な生き物でした。
しかし，ニホンカワウソの悲劇は，明治以降，突如始まります。
水の中で泳ぎ回るニホンカワウソの毛皮は二重構造になっていて，外側は粗い毛ですが，その内側は細かな毛に覆われています。
このため，ニホンカワウソの毛皮の特性は，水濡れに強く防寒効果が大きいことです。
防寒具として飛び抜けて優れたこの特性こそが，ニホンカワウソの悲劇の原因ともなってゆくのです。
悲劇をもたらしたきっかけの一つは，毛皮の輸出でした。
ヨーロッパの富裕層にとって，毛皮は地位や財産を示す贅沢の象徴として熱狂的に求められていたのです。
しかしヨーロッパ人は，１９世紀末までに，植民地も含めて，良質の毛皮をもつ毛皮獣を獲り尽くしてしまいました。
それに目を付けた日本は，早くも明治３年（1870年）には外貨獲得のため，ニホンカワウソを始め，動物の毛皮を輸出し始めました。
その後，明治４３年(1910年)を頂点として，いわゆる輸出ブームと毛皮バブルが発生し，それは大正期まで続きます。
ニホンカワウソについては正確な数字は分かりませんが，たとえば同じ仲間のイタチについていえば，
大正２年から１１年までの１０年間に２６０万枚が輸出されたのです。
次にニホンカワウソを絶滅に追いやったのは軍備と戦争でした。
明治９年(1876年)の日朝修好条規(江華条約)以降，日本は朝鮮半島に政治・経済・軍事的に進出を始めました。
軍用の毛皮を調達するため，明治１３年(1880年)には国レベルで毛皮を調達する仕組みを作り始めます。
そして，日清戦争（明治27年＝1894年），日露戦争（明治37年＝1904年）を経て，多数の兵士が中国東北部やシベリアなどの寒冷地に出兵するようになりました。
このころから軍は，防寒用の毛皮を以前よりもさらに強力に調達し始めました。
日本は，日清・日露戦争に続いて第一次世界大戦（大正３年〜７年），日中戦争（昭和１２年以降），第二次大戦（昭和１６年）終了まで，常に戦争や軍事行動を続けていました。
この間に一般の日本人の間に趣味としての狩猟が広まり，一種の狩猟ブームさえ起きたのです。
大正８年のシベリア出兵以降は，ニホンカワウソなど毛皮獣が乱獲され，大正期にはすでに絶滅の危機に瀕していました。
大正１２年(1923年)から昭和２年(1927)年の５年間におけるニホンカワウソの捕獲数はそれぞれ，わずか５７，１１１，４９，３６，４６頭でした。
ニホンカワウソのように重要な毛皮獣について，国はかなり厳格に管理していたはずです。
したがって，この捕獲頭数は，北海道を除くほぼ日本全体の捕獲数とみなして差し支えないでしょう。
昭和３年(1928年)，絶滅を危惧した政府は，ついにニホンカワウソの捕獲を禁止しました。
おそらく，ニホンカワウソは大正期の末までに，ほぼ獲り尽してしまい，それ以後は，僻地に生き残ったニホンカワウソが細々と命をつないでる状態だったと考えられます。
当時政府は，名目的には多くの毛皮獣の捕獲を制限ないしは禁止するようになりましたが，実際にはそれに反する事態が進行していました。
毛皮の調達を間接的に推進する組織として政府は，昭和4年(1929年)には「大日本連合猟友会」を，昭和9年（1934年）には「全日本狩猟倶楽部」を結成し，それらを通じて銃と弾薬を配布したのです。
しかし，「大日本猟友会」が結成された昭和４年とは，ニホンカモシカが狩猟禁止に指定された年でもあったのです。
一方で動物の保護を掲げながらも，実際には毛皮の確保のために，政府はニホンカモシカの狩猟を黙認ないしは陰で推進していたのです。
同じことは，他の毛皮獣についても言えます。
欧米向けの輸出と軍の需要に対応して，昭和16年には本州のニホンカワウソは事実上絶滅してしまいました。
毛皮のために捕獲の対象となったのは，ニホンカワウソの他に，クマ，ウサギ，タヌキ，キツネ，ムササビ，オコジョ，ニホンシカ，ニホンカモシカなどがいます。
これらの動物は，毛皮の輸出と軍用のため大量に殺されました。
上記の動物は現在でも日本各地に生息していますが，ニホンカワウソだけが絶滅してしまったのはなぜでしょうか。
それを考えるためには，ニホンカワウソの優れた特性の他，生活環境を考える必要があります。
ニホンカワウソの餌は，川に棲むエビやカニなどの小動物でですから，その生活圏は川筋に限られます。
これは，他の動物の場合とはちがって，捕獲のために広い山野をめぐり歩く必要はありません。
川筋だけを集中的に探せば，いとも簡単に見つけられ，捕獲されてしまったのでしょう。
戦後の，河川の汚れ，それによる餌の減少，ダム建設，河川改修によるニホンカワウソの生活環境の破壊などは，すでに絶滅の危機に瀕していたニホンカワウソに最後の一撃を与えたのです。
しかし，実際には，それより遙か以前に，軍の防寒のため，外貨の獲得のため，ヨーロッパ人の贅沢のため，ニホンカワウソは絶滅に追いやられていたのです。
（注）ニホンカワウソ絶滅の概略については，生物多様性センター（環境省自然環境局）のホームページ
（http://
なお，日本における狩猟の歴史について私は明治学院大学国際学部附属研究所の『研究所年報』（第１５号）
(2012年１２月発刊予定)で詳しく書いています。この論文は，同研究所のホームページ，
（http://
http://
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
・・航空服用の毛皮に兎が入手できなくなった北海道庁と興農公社、大政翼賛会の運動が非常時対策として次に着目したのが、飼い犬飼い猫の毛皮供出献納運動であった。
昭和２０年２月
受領證畜猫壱匹右軍需用毛皮供出トシテ正ニ受領候也
昭和二十年二月二十二日」札幌市長三澤寛一市長押印
納者牧スミ殿
このような記載の猫一匹受領證が福岡県鞍手郡小竹町にある兵士庶民の戦争資
料館に長年展示されていた。所蔵者の同戦争資料館の武富智子氏から、この度札
幌市公文書館に寄贈いただいた。もともと夫の故登己男氏が求めてきたもので、史料
の来歴は今となっては分らない。
私は、猫を供出したという牧スミさんを訪ねるため、７年前から古い電話帳を頼りに
札幌市内の牧さん２０名軒に電話してみたが、該当のスミさんにも関係者も探し当て
ることはできなかった。札幌市公文書館の史料も探してみたが、この受領證の雛形も見つかっていない。
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公文書に見る戦時と戦後
昭和19年
この頃、東京毎日新聞には「雑穀の主食化」や食べられる野草としてツワブキ、タンポポ、アザミなど多くの野草の食べ方が載る。鮫や鯉の食べ方も載る。
そして「野良猫も軍需品・犬と共にニ万匹」とあり、兎の毛皮の軍用利用が検討されていた。
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戦争にペットまで動員
戦時下、不足する物資を補うため、金属や宝石、ゴムといった資源が次々と供出させられていきました。
動物の毛や皮革も例外ではなく、牛や馬、羊、鯨などとともに犬の毛皮も利用されていたのです。
当初は野犬の毛皮に限られていましたが、戦争末期にはペットの犬や兎、猫にいたるまで供出させられて、毛皮や食肉として利用されることになりました。
もともと動物の毛や皮革は重要な資源として利用されており、軍需用としても馬や牛、豚、羊など多くの動物の毛皮が利用されていました。
しかし、毛皮類は平時でも国産原料だけでは需要量をまかないきれず、その多くを輸入に頼っていました。
戦争が始まり、さまざまな物資が統制されるようになると毛皮も例外ではなく、1938（昭和13）年に「皮革使用制限規則」（Ref.A05032337100）や「皮革配給統制規則」（Ref.A16110326400）などが定められました。
翌年には犬の皮も水牛や山羊、鹿などとともに犬の皮も統制の対象となり（Ref.A16110344600）、国家の管理する資源の一つとなったのです。
この頃、戦争の長期化から食糧不足が目立つようになり、節米運動が起こります。
人間の食糧が不足するのですから、ペットの食糧も不足するのは当然です。
ペットに食糧をまわすなら、人間に寄越せと言われるようになり、議会でも軍用犬以外の犬猫を処分してしまえという主張がありました（「第75回帝国議会衆議院予算委員会議録」北�叉筏聴�発言）。
画像1 「みんなで兎を飼ひませう」
『少女倶楽部』昭和19年12月号
毛皮の動員といえば、昭和の初めから学校や家庭で兎が多く飼われるようになりました。
兎は成長が早く、飼育も簡単であり、毛皮は兵隊用の防寒着として、肉は食糧として利用価値が高いため、飼うことが奨励されたのです（画像1）。
政府の情報誌である『写真週報』にも特集が何度も組まれています（134号「兎の皮総動員」Ref.A06031072900、188号「兎は大切な軍需品」Ref.A06031078300）。
しかし、それでも皮革は不足し、1941（昭和16）年になると農林省畜産課が野犬毛皮の統制をはじめます。
野犬対策は狂犬病予防としても進められ、地方自治体が中心となって野犬の捕獲に力を入れていました。
当時、狂犬病は不治の病として恐れられ、野犬の買上げや捕獲が自治体や警察の業務としておこなわれていたのです。
1943（昭和18）年になると、さらに皮革が不足するようになります。
これは家畜の減少だけでなく、生産・加工業者が出征して減少していること、陸軍と海軍とで皮革の取り合いをしていること、公定買取価格が安いため闇市場に流失してしまうことなどがあげられます。
そのため、野犬や野良猫だけでなく、ネズミやイタチ、はてはアザラシやオットセイなど海獣の毛皮も利用されるようになります。
また、ヌートリアと呼ばれる大型の齧歯類が毛皮増産のために海外から移入され養育されましたが、戦後になると需要がなくなり放逐されました。逃げ出した個体が野生化して生態系を破壊する外来種として現在も問題となっています。
画像2 「犬の献納運動」隣組回報
『戦争と人びとのくらし』
（八王子郷土資料館、1995年）
さて、全国的な皮革不足のなか、1944（昭和19）年に軍需省化学局長と厚生省衛生局長は連名で「軍用犬、警察犬、天然記念物の指定をうけたものおよび猟犬（登録したものに限る）を除く一切の畜犬は、あげて献納もしくは供出させること」を全国の地方長官（知事）へ通達しました。
これにより地方自治体では畜犬（＝飼い犬）を供出させる「献納運動」を展開し、東京都では回覧板で飼い犬の献納を勇ましく呼びかけました（画像2）。
この時期になると食糧不足に加え、空襲も激しくなっており、飼い犬が野良化すること、さらには狂犬病が流行ることを恐れた当局が、人びとに半ば強制的にペットを献納させ、次々に撲殺・薬殺していきました。
一部は毛皮や食肉に加工されたようですが、多くは利用されること無く廃棄されたと言われています。
回覧板に「決戦下犬は重要な軍需品として立派な御役に立ちます」と書かれておりましたが、実際は犬死だったと言わざるをえません。
以下略
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ニホンカワウソはなぜ絶滅したのか
戦争と贅沢の犠牲になった動物たち
環境省は2012年８月２８日をもって，ニホンカワウソを「絶滅危惧種」の指定から「絶滅種」へ変更しました。
ニホンカワウソは体長１メートルほど、川で魚やエビやカニなどの甲殻類を好んで食べるイタチ科のほ乳類です。
1979年に高知県須崎市で生きた姿が目撃されて以来、３０年以上も生息情報がないため，今回の決定となりました。
ニホンカワウソの生息数に関する統計はありませんが，いつ頃からどんな経緯で絶滅に向かったのかはおおよそ分かっています。
江戸時代まで，民話などに登場する「カッパ」は，ニホンカワウソだろうと言われる身近な生き物でした。
しかし，ニホンカワウソの悲劇は，明治以降，突如始まります。
水の中で泳ぎ回るニホンカワウソの毛皮は二重構造になっていて，外側は粗い毛ですが，その内側は細かな毛に覆われています。
このため，ニホンカワウソの毛皮の特性は，水濡れに強く防寒効果が大きいことです。
防寒具として飛び抜けて優れたこの特性こそが，ニホンカワウソの悲劇の原因ともなってゆくのです。
悲劇をもたらしたきっかけの一つは，毛皮の輸出でした。
ヨーロッパの富裕層にとって，毛皮は地位や財産を示す贅沢の象徴として熱狂的に求められていたのです。
しかしヨーロッパ人は，１９世紀末までに，植民地も含めて，良質の毛皮をもつ毛皮獣を獲り尽くしてしまいました。
それに目を付けた日本は，早くも明治３年（1870年）には外貨獲得のため，ニホンカワウソを始め，動物の毛皮を輸出し始めました。
その後，明治４３年(1910年)を頂点として，いわゆる輸出ブームと毛皮バブルが発生し，それは大正期まで続きます。
ニホンカワウソについては正確な数字は分かりませんが，たとえば同じ仲間のイタチについていえば，
大正２年から１１年までの１０年間に２６０万枚が輸出されたのです。
次にニホンカワウソを絶滅に追いやったのは軍備と戦争でした。
明治９年(1876年)の日朝修好条規(江華条約)以降，日本は朝鮮半島に政治・経済・軍事的に進出を始めました。
軍用の毛皮を調達するため，明治１３年(1880年)には国レベルで毛皮を調達する仕組みを作り始めます。
そして，日清戦争（明治27年＝1894年），日露戦争（明治37年＝1904年）を経て，多数の兵士が中国東北部やシベリアなどの寒冷地に出兵するようになりました。
このころから軍は，防寒用の毛皮を以前よりもさらに強力に調達し始めました。
日本は，日清・日露戦争に続いて第一次世界大戦（大正３年〜７年），日中戦争（昭和１２年以降），第二次大戦（昭和１６年）終了まで，常に戦争や軍事行動を続けていました。
この間に一般の日本人の間に趣味としての狩猟が広まり，一種の狩猟ブームさえ起きたのです。
大正８年のシベリア出兵以降は，ニホンカワウソなど毛皮獣が乱獲され，大正期にはすでに絶滅の危機に瀕していました。
大正１２年(1923年)から昭和２年(1927)年の５年間におけるニホンカワウソの捕獲数はそれぞれ，わずか５７，１１１，４９，３６，４６頭でした。
ニホンカワウソのように重要な毛皮獣について，国はかなり厳格に管理していたはずです。
したがって，この捕獲頭数は，北海道を除くほぼ日本全体の捕獲数とみなして差し支えないでしょう。
昭和３年(1928年)，絶滅を危惧した政府は，ついにニホンカワウソの捕獲を禁止しました。
おそらく，ニホンカワウソは大正期の末までに，ほぼ獲り尽してしまい，それ以後は，僻地に生き残ったニホンカワウソが細々と命をつないでる状態だったと考えられます。
当時政府は，名目的には多くの毛皮獣の捕獲を制限ないしは禁止するようになりましたが，実際にはそれに反する事態が進行していました。
毛皮の調達を間接的に推進する組織として政府は，昭和4年(1929年)には「大日本連合猟友会」を，昭和9年（1934年）には「全日本狩猟倶楽部」を結成し，それらを通じて銃と弾薬を配布したのです。
しかし，「大日本猟友会」が結成された昭和４年とは，ニホンカモシカが狩猟禁止に指定された年でもあったのです。
一方で動物の保護を掲げながらも，実際には毛皮の確保のために，政府はニホンカモシカの狩猟を黙認ないしは陰で推進していたのです。
同じことは，他の毛皮獣についても言えます。
欧米向けの輸出と軍の需要に対応して，昭和16年には本州のニホンカワウソは事実上絶滅してしまいました。
毛皮のために捕獲の対象となったのは，ニホンカワウソの他に，クマ，ウサギ，タヌキ，キツネ，ムササビ，オコジョ，ニホンシカ，ニホンカモシカなどがいます。
これらの動物は，毛皮の輸出と軍用のため大量に殺されました。
上記の動物は現在でも日本各地に生息していますが，ニホンカワウソだけが絶滅してしまったのはなぜでしょうか。
それを考えるためには，ニホンカワウソの優れた特性の他，生活環境を考える必要があります。
ニホンカワウソの餌は，川に棲むエビやカニなどの小動物でですから，その生活圏は川筋に限られます。
これは，他の動物の場合とはちがって，捕獲のために広い山野をめぐり歩く必要はありません。
川筋だけを集中的に探せば，いとも簡単に見つけられ，捕獲されてしまったのでしょう。
戦後の，河川の汚れ，それによる餌の減少，ダム建設，河川改修によるニホンカワウソの生活環境の破壊などは，すでに絶滅の危機に瀕していたニホンカワウソに最後の一撃を与えたのです。
しかし，実際には，それより遙か以前に，軍の防寒のため，外貨の獲得のため，ヨーロッパ人の贅沢のため，ニホンカワウソは絶滅に追いやられていたのです。
（注）ニホンカワウソ絶滅の概略については，生物多様性センター（環境省自然環境局）のホームページ
（http://
なお，日本における狩猟の歴史について私は明治学院大学国際学部附属研究所の『研究所年報』（第１５号）
(2012年１２月発刊予定)で詳しく書いています。この論文は，同研究所のホームページ，
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〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
・・航空服用の毛皮に兎が入手できなくなった北海道庁と興農公社、大政翼賛会の運動が非常時対策として次に着目したのが、飼い犬飼い猫の毛皮供出献納運動であった。
昭和２０年２月
受領證畜猫壱匹右軍需用毛皮供出トシテ正ニ受領候也
昭和二十年二月二十二日」札幌市長三澤寛一市長押印
納者牧スミ殿
このような記載の猫一匹受領證が福岡県鞍手郡小竹町にある兵士庶民の戦争資
料館に長年展示されていた。所蔵者の同戦争資料館の武富智子氏から、この度札
幌市公文書館に寄贈いただいた。もともと夫の故登己男氏が求めてきたもので、史料
の来歴は今となっては分らない。
私は、猫を供出したという牧スミさんを訪ねるため、７年前から古い電話帳を頼りに
札幌市内の牧さん２０名軒に電話してみたが、該当のスミさんにも関係者も探し当て
ることはできなかった。札幌市公文書館の史料も探してみたが、この受領證の雛形も見つかっていない。
https:/
公文書に見る戦時と戦後
昭和19年
この頃、東京毎日新聞には「雑穀の主食化」や食べられる野草としてツワブキ、タンポポ、アザミなど多くの野草の食べ方が載る。鮫や鯉の食べ方も載る。
そして「野良猫も軍需品・犬と共にニ万匹」とあり、兎の毛皮の軍用利用が検討されていた。
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戦争にペットまで動員
戦時下、不足する物資を補うため、金属や宝石、ゴムといった資源が次々と供出させられていきました。
動物の毛や皮革も例外ではなく、牛や馬、羊、鯨などとともに犬の毛皮も利用されていたのです。
当初は野犬の毛皮に限られていましたが、戦争末期にはペットの犬や兎、猫にいたるまで供出させられて、毛皮や食肉として利用されることになりました。
もともと動物の毛や皮革は重要な資源として利用されており、軍需用としても馬や牛、豚、羊など多くの動物の毛皮が利用されていました。
しかし、毛皮類は平時でも国産原料だけでは需要量をまかないきれず、その多くを輸入に頼っていました。
戦争が始まり、さまざまな物資が統制されるようになると毛皮も例外ではなく、1938（昭和13）年に「皮革使用制限規則」（Ref.A05032337100）や「皮革配給統制規則」（Ref.A16110326400）などが定められました。
翌年には犬の皮も水牛や山羊、鹿などとともに犬の皮も統制の対象となり（Ref.A16110344600）、国家の管理する資源の一つとなったのです。
この頃、戦争の長期化から食糧不足が目立つようになり、節米運動が起こります。
人間の食糧が不足するのですから、ペットの食糧も不足するのは当然です。
ペットに食糧をまわすなら、人間に寄越せと言われるようになり、議会でも軍用犬以外の犬猫を処分してしまえという主張がありました（「第75回帝国議会衆議院予算委員会議録」北�叉筏聴�発言）。
画像1 「みんなで兎を飼ひませう」
『少女倶楽部』昭和19年12月号
毛皮の動員といえば、昭和の初めから学校や家庭で兎が多く飼われるようになりました。
兎は成長が早く、飼育も簡単であり、毛皮は兵隊用の防寒着として、肉は食糧として利用価値が高いため、飼うことが奨励されたのです（画像1）。
政府の情報誌である『写真週報』にも特集が何度も組まれています（134号「兎の皮総動員」Ref.A06031072900、188号「兎は大切な軍需品」Ref.A06031078300）。
しかし、それでも皮革は不足し、1941（昭和16）年になると農林省畜産課が野犬毛皮の統制をはじめます。
野犬対策は狂犬病予防としても進められ、地方自治体が中心となって野犬の捕獲に力を入れていました。
当時、狂犬病は不治の病として恐れられ、野犬の買上げや捕獲が自治体や警察の業務としておこなわれていたのです。
1943（昭和18）年になると、さらに皮革が不足するようになります。
これは家畜の減少だけでなく、生産・加工業者が出征して減少していること、陸軍と海軍とで皮革の取り合いをしていること、公定買取価格が安いため闇市場に流失してしまうことなどがあげられます。
そのため、野犬や野良猫だけでなく、ネズミやイタチ、はてはアザラシやオットセイなど海獣の毛皮も利用されるようになります。
また、ヌートリアと呼ばれる大型の齧歯類が毛皮増産のために海外から移入され養育されましたが、戦後になると需要がなくなり放逐されました。逃げ出した個体が野生化して生態系を破壊する外来種として現在も問題となっています。
画像2 「犬の献納運動」隣組回報
『戦争と人びとのくらし』
（八王子郷土資料館、1995年）
さて、全国的な皮革不足のなか、1944（昭和19）年に軍需省化学局長と厚生省衛生局長は連名で「軍用犬、警察犬、天然記念物の指定をうけたものおよび猟犬（登録したものに限る）を除く一切の畜犬は、あげて献納もしくは供出させること」を全国の地方長官（知事）へ通達しました。
これにより地方自治体では畜犬（＝飼い犬）を供出させる「献納運動」を展開し、東京都では回覧板で飼い犬の献納を勇ましく呼びかけました（画像2）。
この時期になると食糧不足に加え、空襲も激しくなっており、飼い犬が野良化すること、さらには狂犬病が流行ることを恐れた当局が、人びとに半ば強制的にペットを献納させ、次々に撲殺・薬殺していきました。
一部は毛皮や食肉に加工されたようですが、多くは利用されること無く廃棄されたと言われています。
回覧板に「決戦下犬は重要な軍需品として立派な御役に立ちます」と書かれておりましたが、実際は犬死だったと言わざるをえません。
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