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2017年10月17日20:57

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〈時代の正体〉安倍改憲を問う 憲法学者・水島朝穂さん 

神奈川新聞 10.15 16:40
http://news.line.me/list/oa-kanagawa/033eb4f849b4/ef4516ffb86b?guid=on
水島朝穂さん(早稲田大学・全国憲法研究会前代表)

〈安倍首相は憲法改正を推し進める姿勢を鮮明にし、自民党も選挙公約に改憲を盛り込んだ。9条については「自衛隊の明記」を掲げた〉
そのもたらす効果はあまりにも危険だ。

 まず第1に、9条2項は「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」と規定している。政府解釈は、自衛隊は「自衛のための必要最小限度の実力」(自衛力)であり、2項の「戦力」には当たらないとし、自衛のための必要最小限度の範囲内にとどまれば、核兵器の保有も合憲と解釈している。したがって「自衛力」を明記することによって「自衛のための」核兵器の保有が可能であることが憲法上確定する。

 第2に、安倍政権は「自衛のための必要最小限度の実力」に集団的自衛権の一部が含まれるという違憲の解釈変更を行ったため、明記される「自衛力」には集団的自衛権の一部が含まれることになる。

 北朝鮮や中国が、米国を攻撃した場合、日本は北朝鮮や中国から攻撃を受けていないにもかかわらず、「自衛のため」と称して攻撃することができる。これは、北朝鮮や中国からみれば、日本が先に攻撃したことになるため、その報復攻撃は免れない。

 安倍首相が提案している「集団的自衛権を認める改憲」に賛成するのは、報復攻撃によって一般市民が殺害されるリスクを覚悟することを意味する。
歯止めのなき軍拡
 第3に、明記される「自衛」の拡大解釈を防ぐ手だてはない。「自衛」の解釈として政府は従来「武力の行使」が許容されるのは、「我が国に対する武力攻撃が発生した場合」に限られるとしてきたが、安倍政権は集団的自衛権を認め、この限定を骨抜きにした。
「我が国を取り巻く安全保障環境の変化」が、「自衛」の範囲を「解釈変更」する理由になるのであれば、新9条の「自衛」の範囲も同じ理由で拡大解釈される可能性がある。

 第4に、自衛隊が憲法に明記されれば、自衛隊は天皇、国会、内閣、裁判所、会計検査院と並ぶ憲法上の機関に格上げされ、自衛隊に一定の権威が与えられることになる。

 そして最後に、自衛隊を明記したとしても、自衛隊は9条2項の「戦力」不保持の影響は受け続ける。そうすると政府は一方で軍拡を行ったとしても、それは「自衛力」の範囲内であると強弁を続けることになる。結果、「戦力」概念の骨抜きが完了する。

 そうして新たな自衛隊の根拠規定は独り歩きを始める。これまで9条2項が果たしてきた立憲的統制が崩壊し、「自衛隊」のまま「軍隊」となる。

 他方で自衛隊自体が合憲になったとしても、自衛隊の個別の「装備・人員」が「戦力」に当たることはあり得るから、自衛隊の違憲性は問われ続ける。

そうなれば「神学論争をやめよう」という言説が蔓延(まんえん)し、9条2項が葬られるのは時間の問題だ。さらに安倍首相はこの改憲によって「自衛隊違憲論を一掃する」と言う。安倍首相による9条改憲論は、言論や学問の自由とも深く関わっている。
憲法 蹂躙する解散
 〈安倍首相は9月28日、野党が3カ月余り前から求めていた臨時国会の冒頭で衆院を解散するという暴挙に出た〉

 この国では「解散権」を、憲法の間隙(かんげき)を縫う首相の「伝家の宝刀」というゆがんだ解釈がまかり通っている。憲法学者の高見勝利・上智大名誉教授はこの解散について「憲法蹂躙(じゅうりん)だ」と厳しく指摘したが、ここまで強く憲法学者が指摘した例はそう多くない。

 憲法学者について、思考が「お花畑」だとか、「自衛隊を違憲と言うバカども」などと言う方がいる。だがいま起きているのは、そういうレベルではない。

 改憲論者や自衛隊合憲論者とされる憲法学者でさえ、安倍政権による集団的自衛権行使容認と安保法制は口をそろえて「違憲」だと声を上げた。

 こうした状況でまともな改憲論議などできるはずがない。まず憲法が権力者を縛るという「立憲主義」の土俵を作り直さなければならない。
奪われるのは国民
 〈いまある改憲論議は立憲主義的な土台なしに展開されている。それは9条に限らない〉

 例えば緊急事態条項。大災害で衆院議員の総選挙ができなかったらどうするのか、議員の任期を延長できるようにしろ、緊急事態条項が憲法に必要だ、などと言っている。だが、過去には本土が空襲されているさなかでも選挙は行われていた。公職選挙法を改正して対応すれば足りる問題であって、憲法とは関係ない。

 そしてついに「東京五輪までに新しい憲法が必要だ」と言い出している。「あら探し改憲」「便乗型改憲」であってまともな議論とは言い難い。

 そうした安倍政権に通底しているのは権力の私物化、恣意(しい)的権力運用だ。権力は長期化すると必ず腐敗する。そうした現象がいま集中して表出している。

 憲法は権力の腐敗を阻止するために立憲主義を採用した。それは歴史的にそうした腐敗権力を何度も経験してきたからだ。

 腐敗した権力は、1人の人が事を決める。人の言うことを聞かない。そして人の大事なものを勝手に奪う。安倍首相による恣意的政権運営によって失われていくものは私たちの想像を超えるほど大きい。有能な人材、資源、本来あるはずのお金が無駄に使われ、借金は膨れあがり、この国の豊かさや文化、他国からの信頼がこの間にどんどん損なわれていっている。

 そうした権力者が自分のために憲法を改正したいと言っている。そこに国民の姿はない。「権力者ファースト」の改憲提案に対し、国民は決して乗ってはいけない。奪われ、損なわれるのは主権者である私たち国民の側なのだから。

◆みずしま・あさほ
 1953年東京都生まれ。早稲田大教授。憲法学者。早稲田大大学院法学研究科博士課程満期退学。著書に「平和の憲法政策論」(日本評論社)、「ライブ講義 徹底分析!集団的自衛権」(岩波書店)ほか。


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