18940808 NO872 「順行丸」船頭・春木要太��よりの聞書 朝鮮北部の状況
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駐韓日本公使館記録 3巻 五. 軍事関係一件 (18) 「順行丸」船頭・春木要太��よりの聞書
文書題目 (18) 「順行丸」船頭・春木要太��よりの聞書
文書番号 臨庶第六八号
発信日 明治二十七年八月八日 ( 1894年 08月 08日 )
発信者 二等領事 能勢辰五��
受信者 特命全権公使 大鳥圭介
(18) 「順行丸」船頭・春木要太��よりの聞書
臨庶第六八号
自分は「順行丸」船頭であって、当港の徐司果のため米穀買い入れのため出張している朝鮮人五名と日本人水夫三名とともに六月十八日当港を出帆し、同二十二日平安道保山（＊平壌から6里の保山。保山線は江西駅から千里馬郡にある保山駅までを結ぶ鉄道路線）に到着し、同所に碇泊する事十三日間の後、黄海道・載寧海倉に至って碇泊し、七月三十一日午前八時同所を出帆し、八月七日仁川へ帰港した。
黄海道・載寧（チェリョン ＊現・黄海南道 載寧江の下流西岸、載寧平野に位置する。截寧江は大同江に合流する）海倉に碇泊していた時、同地に五日目ごとに開く市場に食用米買い求めのために行ったが、同地方では日本人に米穀を売る事を禁止したとのことで、ついに買うことができずに帰船し、乗組朝鮮人に依頼してわずかに食用米六斗を買い求めた。しかしながら同地では日本人に危害を加えるような様子は別になかった。
七月二十三日頃、朝鮮船舶で平安道より来るものがすこぶる多かったが、それについて聞くと、これらは皆、義州地方へ支那兵およそ五万人が来るだろうと聞き込み、そうすれば家財は奪掠され婦女は汚辱を被ることになるだろうといって逃れて来たものと載せており、その逃げて来たもののいうところによれば、義州と平壌の両所には一万人の支那兵が皆な新たに家を作ってそこに分屯し、また黄海道・黄州にも支那兵が来るだろうということを聞いたと言っている。
日本兵も黄海道・黄州で七名見かけたが直ちに京城の方へ引き返したとの話であった。
このあたりの朝鮮船の水夫は、朝鮮船は皆な運送船に充てるため押収されるだろうといって、いずれも黄海道・載寧海倉より川上の方へ逃げ言った所だという。
八月三日正午頃、ケイリン島まで帰航して来て碇泊していた時、大音響を三度まで聞いた。同日は、天気は清朗で一点の雲を見なかったので、自分は雷とは思われず大砲の音と信じた。
同島（ケイリン島）は黄海道の沖合で仁川より西北の方向におよそ五十五浬（マイル）くらいと思われる。もっとも途中の長山串 (チャンサンコッ 仁川より七十五浬ばかりの所で軍艦碇泊場である)においても軍艦は勿論、商船も見受けなかった。
八月四日午前九時、黄海道の沖合で仁川から五十浬ほどにある「スント」島近くを航行中、同島より一里ほど下手で本船より五六丁ばかり隔たったところを西洋形船の破片である白ペンキ塗りの木片三個ほどと、五六間離れた所を一本の「ホツク」 (西洋形船の鍵の付いている水棹)が漂流するのを見た。
また同島ちかくで、支那の篷船一隻が海上を縦横に走って何かを探りつつあるようであったが、ついには陸地の方に向けて走り去った。
今度の航行中は主に船中にいて陸地に上がった事が少なかったので特別に「これだ」と見聞きしたことはなかった。
明治二七十年八月八日
右御報告候也
明治二十七年八月八日
二等領事 能勢辰五��
特命全権公使 大鳥圭介 殿
＊「蓬船」は「鳥蓬船」のことであろうか（写真）。
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