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2017年01月18日02:30

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1月16日の行書問題その2

H22

○憲法の総論ーレベル3

11、基本的人権の限界に関して、次の文章のような見解が主張されることがある。この見解と個別の人権との関係に関わる次のア〜オの記述のうち、正しいものはいくつあるか。

日本国憲法は、基本的人権に関する総則的規定である13条で、国民の権利については「公共の福祉に反しない限り」国政の上で最大の尊重を必要とすると定めている。これは、それぞれの人権規定において個別的に人権の制約根拠や許される制約の程度を規定するのではなく、「公共の福祉」による制約が存する旨を一般的に定める方式をとったものと理解される。 したがって、個別の人権規定が特に制約について規定していない場合でも、「公共の福祉」を理由とした制約が許容される。

ア、憲法36条は、「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる」と定めるが、最高裁判例は「公共の福祉」を理由とした例外を許容する立場を明らかにしている。
イ、憲法15条1項は、「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である」と定めるが、最高裁判例はこれを一切の制限を許さない絶対的権利とする立場を明らかにしている。
ウ、憲法21条1項は、「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」と定めるが、最高裁判例は「公共の福祉」を理由とした制限を許容する立場を明らかにしている。
エ、憲法21条2項前段は、「検閲は、これをしてはならない」と定めるが、最高裁判例はこれを一切の例外を許さない絶対的禁止とする立場を明らかにしている。
オ、憲法18条は、「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない」と定めるが、最高裁判例は「公共の福祉」を理由とした例外を許容する立場を明らかにしている。

1. 一つ  2. 二つ  3. 三つ
4. 四つ  5. 五つ

11
こたえ
『2』
ウ.正しい。
最大判昭和24年5月18日、最大判昭和32年3月13日
「国民はまた、新憲法が国民に保障する基本的人権を濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負うのである(憲法12条)。それ故、新憲法の下における言論の自由といえども、国民の無制約な恣意のままに許されるものではなく、常に公共の福祉によって調整されなければならぬのである」(最大判昭和24年5月18日)
「上告趣意は、憲法21条の保障する表現の自由が他の基本的人権に関する憲法22条、29条の場合のように制限の可能性が明示されていないから、絶対無制限であり、公共の福祉によっても制限できないものと主張する。しかしながら憲法の保障する各種の基本的人権についてそれぞれに関する各条文に制限の可能性を明示していると否とにかかわりなく、憲法12条、13条の規定からしてその濫用が禁止せられ、公共の福祉の制限の下に立つものであり、絶対無制限のものでないことは、当裁判所がしばしば判示したところである」(最大判昭和32年3月13日)

エ.正しい。
最大判昭和59年12月12日
「憲法21条2項前段は、「検閲は、これをしてはならない。」と規定する。憲法が、表現の自由につき、広くこれを保障する旨の一般的規定を同条一項に置きながら、別に検閲の禁止についてかような特別の規定を設けたのは、検閲がその性質上表現の自由に対する最も厳しい制約となるものであることにかんがみ、これについては、公共の福祉を理由とする例外の許容(憲法12条、13条参照)をも認めない趣旨を明らかにしたものと解すべきである。けだし、諸外国においても、表現を事前に規制する検閲の制度により思想表現の自由が著しく制限されたという歴史的経験があり、また、わが国においても・・・中略・・・典型的な検閲が行われる等、思想の自由な発表、交流が妨げられるに至った経験を有するのであって、憲法21条2項前段の規定は、これらの経験に基づいて、検閲の絶対的禁止を宣言した趣旨と解されるのである。」(最大判昭和59年12月12日)

H22

○憲法の法の下の平等ーレベル2

12、次の文章は、平等原則について、先例として引用されることの多い最高裁判所判決の一部である。文中の空欄 〔 ア 〕 〜 〔 エ 〕 にあてはまる語句の組合せとして、正しいものはどれか。

 思うに、憲法14条1項及び地方公務員法13条にいう社会的身分とは、人が社会において占める継続的な地位をいうものと解されるから、高令 (齢) であるということは右の社会的身分に当らないとの原審の判断は相当と思われるが、右各法条は、国民に対し、法の下の平等を保障したものであり、右各法条に列挙された事由は 〔 ア 〕 なものであって、必ずしもそれに限るものではないと解するのが相当であるから、原判決が、高令 (齢) であることは社会的身分に当らないとの一事により、たやすく上告人の……主張を排斥したのは、必ずしも十分に意を尽したものとはいえない。しかし、右各法条は、国民に対し 〔 イ 〕 な平等を保障したものではなく、差別すべき 〔 ウ 〕 な理由なくして差別することを禁止している趣旨と解すべきであるから、〔 エ 〕 に即応して 〔 ウ 〕と認められる差別的取扱をすることは、なんら右各法条の否定するところではない。

  ア      イ     ウ        エ 
1. 具体的   形式的    客観的    事柄の性質
2. 例示的   絶対的    合理的    公共の福祉
3. 例示的   相対的    合理的    事柄の性質
4. 具体的   一般的    実質的    公共の福祉
5. 例示的   絶対的    合理的    事柄の性質

12
こたえ
『5』
ア.例示的
憲法第14条1項では「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」としているが、ここに列挙された事由は例示的なものであって、必ずしもそれに限るものではないとされる

このような考え方は例示説と呼ばれており、判例及び通説が採る立場である。

イ.絶対的 ウ.合理的 エ.事柄の性質
法の下の平等における「平等」とは、絶対的・機械的な平等を指すものではなく、相対的な平等であると解されており、恣意的な差別は許されないが、税、刑罰、貧富などその事柄の性質に即応して社会通念からみて合理的な理由のあると認められるかぎり、差別的取扱いをすることは許容される。

H25

○憲法の多肢選択式ーレベル2

13、次の文章は、ある最高裁判所判決の一節(一部を省略)である。空欄[ ア ]〜[ エ ]に当てはまる語句を、枠内の選択肢(1〜20)から選びなさい。

確かに、[ ア ]は、民主主義社会において特に重要な権利として尊重されなければならず、被告人らによるその政治的意見を記載したビラの配布は[ ア ]の行使ということができる。しかしながら、……憲法21条1項も、[ ア ]を絶対無制限に保障したものではなく、公共の福祉のため必要かつ合理的な制限を是認するものであって、たとえ思想を外部に発表するための手段であっても、その手段が他人の権利を不当に害するようなものは許されないというべきである。本件では、[ イ ]を処罰することの憲法適合性が問われているのではなく、[ ウ ]すなわちビラの配布のために「人の看守する邸宅」に[ エ ]権者の承諾なく立ち入ったことを処罰することの憲法適合性が問われているところ、本件で被告人らが立ち入った場所は、防衛庁の職員及びその家族が私的生活を営む場所である集合住宅の共用部分及びその敷地であり、自衛隊・防衛庁当局がそのような場所として[ エ ]していたもので、一般に人が自由に出入りすることのできる場所ではない。たとえ[ ア ]の行使のためとはいっても、このような場所に[ エ ]権者の意思に反して立ち入ることは、[ エ ]権者の[ エ ]権を侵害するのみならず、そこで私的生活を営む者の私生活の平穏を侵害するものといわざるを得ない。

1、出版の自由  2、統治  3、集会の手段
4、良心そのもの  5、出版それ自体  6、良心の自由
7、管理  8、居住の手段  9、居住・移転の自由
10、表現の自由  11、集会それ自体
12、良心の表出  13、支配  14、集会の自由
15、出版の手段  16、居住  17、表現の手段
18、居住それ自体  19、所有  20、表現そのもの

13
こたえ
アの10の表現の自由→イの20の表現そのもの→ウの17の表現の手段→エの7の管理

この判例(最判平成20年4月11日)は、東京都立川市所在の防衛庁(当時)立川宿舎の敷地にビラ配りの目的で立ち入った行為について、邸宅侵入罪(刑法第130条前段)で罰することが憲法第21条1項に違反するかが争われた事件である。

ビラ配りも憲法第21条1項で保障されている「表現の自由」により保障されているものではあるが、それは絶対的無制限に保障されているものではない。

この事案では、管理権者が駐在していて、フェンス部分に、いずれも、A3判大の横長の白色の用紙に、縦書きで、「宿舎地域内の禁止事項 一関係者以外、地域内に立ち入ること 一ビラ貼り・配り等の宣伝活動等」と掲示されていたということを踏まえると、いくら表現の自由が保障されているといっても、防衛庁の関係者(例えば家族など)が私生活を営んでいたのであるから、この自由も制限されるといえる。

この判例でも、その結論として「本件被告人らの行為をもって刑法130条前段の罪に問うことは、憲法21条1項に違反するものではない。」としている。

注意が必要なのは、この制限は表現そのものにしたわけではなく、表現の手段にしたものである。

たとえ表現の自由の行使であっても、その表現の手段に問題があれば、罰を受けることになるのである。
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