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2016年12月29日22:26

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和解の力、アジアにこそ 首相、真珠湾で慰霊

 中日新聞の社説を転載します。
http://www.chunichi.co.jp/article/column/editorial/CK2016122902000107.html







安倍晋三首相が真珠湾を訪問し、先の大戦の犠牲者を慰霊した。歴史的な訪問だが、演説で言及した「和解の力」は、アジア諸国にこそ示すべきである。


 米ハワイ州オアフ島の真珠湾。青く、波光きらめくこの入り江で七十五年前、旧日本軍の奇襲攻撃によって、苛烈な太平洋戦争の戦端が開かれた。


 首相がオバマ米大統領とともに訪れた「アリゾナ記念館」は、この攻撃で撃沈され、海底に横たわる戦艦アリゾナの上に立つ。艦内には約九百人の遺体が残され、燃料の油が今も浮かび上がる。荘厳な空気の漂う慰霊の空間である。

記念館には初の訪問


 日米両首脳は、戦死した米兵らの名前が刻まれた大理石の壁に向かって花をささげ、黙とうした。


 真珠湾には一九五〇年代、吉田茂、鳩山一郎、岸信介の三首相が訪れているが、六二年に完成した記念館を訪問した現職首相は、安倍首相が初めてだ。


 記念館の完成後、長きにわたって日本の首相による訪問が実現しなかったのは、訪問が「謝罪」につながることを懸念する、日本国内の一部にある世論への配慮があったからにほかならない。


 今回の訪問でも首相官邸が「謝罪のためではない」(菅義偉官房長官)と繰り返さざるを得なかったのは、その証左であろう。


 首相が保守層を政権基盤とし、高い内閣支持率を維持している政治状況だからこそ、記念館への訪問を可能にしたこともまた、現実である。


 首相の祖父は東条英機内閣の商工相で、開戦の詔書に副署した、のちの岸首相だ。その親族で、現職首相でもある安倍氏が、七十五年を経て開戦の地を訪れ、犠牲者に哀悼の誠をささげたことは、かつて敵国同士だった両国の「和解の力」を示すものではある。

謝罪、反省の言葉なく


 より重要なことは、首相が開戦の地で何を発信したかである。


 首相は記念館を望む埠頭(ふとう)で演説し、「戦争の惨禍は、二度と繰り返してはならない。私たちはそう誓いました」「戦後七十年間に及ぶ平和国家としての歩みに、私たち日本人は静かな誇りを感じながら、この不動の方針を、これからも貫いてまいります」と述べた。 専守防衛に徹し、二度と軍事大国にならないという日本の平和主義は戦後日本を貫き、国際社会の信頼と尊敬を勝ち得てきた「国のかたち」である。開戦の地で、不戦をあらためて誓う意味は重い。


 ただ、首相の演説は、かつて激しい戦火を交えた両国が「歴史にまれな、深く、強く結ばれた同盟国」になった意義を強調することに重きが置かれ、反省や謝罪の言葉はなかった。


 不戦の誓いは、無謀な戦争に突入して、国内外に多大な損害を与え、日本人だけで三百十万人の犠牲者を出した、先の大戦に対する痛切な反省に基づいていると考えるのが一般的だろう。


 首相は戦後七十年の節目だった昨年四月、米議会上下両院合同会議での演説で「戦後の日本は、先の大戦に対する痛切な反省を胸に、歩みを刻みました」と語った。


 昨年八月に発表した戦後七十年の安倍談話でも、戦後五十年の村山談話や戦後六十年の小泉談話に盛り込まれた「植民地支配」「侵略」「痛切な反省」「心からのおわび」の文言を使っている。


 首相が真珠湾での演説で反省や謝罪に触れなかった背景には、後の世代に謝罪を続ける宿命を負わせないという意図があるのだろうが、不戦の誓いが、先の大戦に対する痛切な反省に基づいているのなら、こうした言葉にも言及すべきではなかったか。


 さらに、真珠湾攻撃は日米戦争の戦端ではあるが、三一年の満州事変に始まる「十五年戦争」の一部にすぎない。


 日米開戦時点ですでに中国大陸への侵攻は続いており、真珠湾攻撃と同日にはアジア・太平洋各地域への攻撃を始めている。


 日本が真に和解すべきは、安全保障や経済ですでに深い関係がある米国ではなく、中国をはじめとするアジア諸国だろう。


 首相は、米国との和解に注いだ政治力と政治的資源を、アジア諸国にも同様に注ぐべきである。

憎悪の連鎖断つため


 先の大戦終結から七十一年。戦争の惨禍は、いまだ世界から消えず、憎悪が憎悪を招く連鎖は、なくなっていないのが現実だ。ヨーロッパでは難民排斥のナショナリズムも高まっている。


 「寛容の心、和解の力を、世界はいまこそ必要としている」という首相の主張には同意したい。


 憎しみ合い、戦火を交えたかつての敵国同士の首脳が、肩を並べて寛容の大切さと和解の力を訴える。その姿が国際社会の範となるのなら、せめてもの救いである。







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