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2016年12月06日17:15

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プーランク 人間の顔

フランシス・プーランク作曲 人間の顔

ダニエル・ロイス指揮
RIAS室内合唱団


かんち自身の解説

2011年3月11日に発生した東日本大震災。それによって発生した津波、さらには津波によって引き起こされた、福島第一原子力発電所の史上最悪の事故。

それを振り返ることができるような曲は何かないかと思案した結果、採用したのが、プーランクの「人間の顔」です。

この曲は以前ブログで取り上げており、その時にこう書きました。


この曲は、1943年の作曲で、第二次大戦中です。題材はもちろん戦争です。戦争によって、人間性が失われていくことに対する怒りを表現していています。

そして、最も重要な言葉が「自由」。最後の歌詞は、「自由」なのです。明るく、かつ和音的に平明に終わるこの部分は、私の胸を串刺しにしました。射抜かれた、というべきでしょうか。

それまで不安な和音だったのが、最後で落ち着いて「自由を!」と歌うのです。そして、その歌の中には、叫びも含まれています。その魂の叫びが、私の心にぐさ!っと突き刺さったのです。


震災が被災地から奪ったものが、この曲の歌詞を詳細に見ていくとなぜかプーランクが心を揺さぶられたこの歌詞とほとんど同じであるということに、久し振りに聴いて気づかされました。

果たして、被災者にとっての「自由」とは・・・・・

皆さんも一緒に考えてみてください。政治的な曲は一切といっていいほど書かなかったプーランクが唯一、祖国がドイツ軍に蹂躙されることに居てもたってもいられず書いた政治的なメッセージを含んだ、「レジスタンス蜂起を求める」曲です。


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「この人間の顔」はP.エリュアール(1895−1952)の詩による、無伴奏2群の混成合唱のためのカンタータです。

P.エリュアールは、フランスのシュルレアリスム派の詩人です。

1943年にドイツ軍の目を盗んで配布された詩に作曲したもので、地下出版され、ドイツ軍から解放後ロンドンに楽譜を送り、終戦前の1945年1月にBBC合唱団がイギリスで初演しました。

フランスでは、その2年後の1947年5月に初演されています。

作曲の動機は、フランスのレジスタンス運動を鼓舞するためだったそうで、芸術家として政治的の事柄には首を突っ込まなかったプーランクとしては珍しいことです。

弾圧への憎悪、侮蔑、怒りから、「自由」への祈りと、プーランクとしては珍しく起伏の激しい表現が特徴的ですが、全編に悲しみが漂っています。

最後の「自由」の内容は、いかにも、レジスタンスを呼び掛けるのにふさわしく、「自由」を擬人化していますが、声高に叫ぶのではなく、内に秘めた情熱が感じられます。

曲の完成度が高くバラエティに富んでいて、世評、プーランクの傑作と言われているだけのことはあり、とても感銘を受けました。
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