mixiユーザー(id:31691303)

2016年09月02日19:13

193 view

▼● ◎ 物語を考えてみた ◎ (第1782回)

1話完結の新しい物語です
暇なときにでも、読んで頂けると幸いです
面白かったら「イイネ」や「コメント」等をして頂けると嬉しいです(^_^)

※ライトノベルのような文章が好きな方は、好みが合わないかもしれません
※雰囲気が伝われば面白いかなと思います


タイトル「追いかけた男と追いかける少年」

――
人生を充実させるのに必要なのは、夢なのではないだろうか?

今から1週間前…
俺は30歳の誕生日を迎えた日に天職と信じてたサッカー選手という職をクビになった
その理由は「年齢によるパフォーマンスの低下」だという

これから更なる成長を目指して頑張っていくぞ!
そう思っていた俺にとって、それはとても納得出来る理由ではなかった
しかし、それを受け入れるしか道はなかった

俺にとってサッカーは全てだった…
ガキの頃から上手くなりたい、強くなりたいという気持ちで毎日のようにサッカーボールを蹴ってきた
それはもう必死に…
でも、クビになった
それは俺にとって生きる目的を失ったのと同じ

それからの俺は再就職もせず、貯蓄を減らしながら気力を失なった身体で家の近くを散歩する日々を続けている
目的も無しに歩いても気持ちは下がるばかりで、『もう死のうかな…』と思うまでになってしまった

そんな、ある日の事だった…
私が雑草の生い茂る土手に座りながら川を眺めていると、前方に見える河川敷にサッカーボールを蹴る少年を見つけた

その少年は中学生だろうか
小さい身体で必死にゴールに向かってボールを蹴っている

まるで昔の自分のようだな…

俺はそんな事を思いながら少年の姿を見ていると、少年は上手くシュートが蹴れないのに腹が立ったのか、ボールにイライラをぶつけ始めた

本当に昔の自分にそっくりだ…

俺はその姿を黙って見ていられず、自然と少年に向かって歩いて話しかけた

『そんなんじゃダメだ』
『えっ…?』
『蹴る時に足の親指の付け根の横から蹴るんだ』
『えっ、えっ?』
『見てろ』

俺は動揺する少年からボールを奪い、それを蹴った
すると、ボールは右にカーブしながらゴールの右上角に突き刺さった

俺はあまりに綺麗に決まったシュートに、虚しい気持ちが心に染みる

少年は蹴る姿を見て、さっきとは違う動揺と尊敬の眼差しで俺を見始めた
俺への見方が変わったのだろう

『さ、サッカーやってたんですか…?』
『……』

俺はその質問に答えたくなかった
それは、サッカーを辞めさせられたのに、まだそれにしがみついてる自分が嫌になったから…

俺は『邪魔してゴメン』と言って、逃げるように立ち去った…

それから数日後
久し振りに河川敷に行くと、あの少年が俺のアドバイスを必死にモノにしようと、蹴る練習をしていた

その姿に俺の心がざわつく

ジッとその少年の姿を見つめていると、少年は俺に気づき話しかけてきた

『この間はありがとうございました』
『あ、いや…』
『おかげで少し上手くなりました』
『それは良かったね』
『それで、あの…』

少年は何か言いたそうにモジモジとしている

『どうしたの?』
『サッカーを教えてくれませんか?』
『……』

何となくそう頼まれるのは予想していた
もし俺が少年と同じ状況にいたら、今のような事を言っていただろう…

俺は自分の中にあるモヤモヤを気にしながら『暇潰しに良いだろう』と思い、少年のお願いを受けることにした
しかし、この頼み事がいかに難しい事かを思い知ることになる
正直、俺は、もう彼は中学生だから何かしろの良さがあるのだろうと思っていた
しかし、少年にボールを扱わせるとドリブルもシュートもパスもまるでダメ
分かりやすく言うなら、基本的にただガムシャラにボールを扱ってる感じなのだ
とにかく俺は技術を上達のために、まず基礎から教える事にした…


教え始めて数時間後…
何とか、少しは形になってきたみたいで、少年はボールを上手くドリブル出来るようになっていた

『よし。もう夕方だし、今日はここまでにしよう』
『えっ…。でも…』
『たくさん学んでも、それを自分のモノに出来なきゃ意味がない。それに…』

俺の目に西日が射し込む

『う…。もうこんな時間だ。君の親を心配させるのはいけないしね』
『はい…』
『じゃあ、次はいつ練習するんだ?』
『えっ?』

少年は驚く

『上手くなりたいんだろ? なら練習しなきゃ』
『ありがとうございます…。じゃあ、明日とかでも良いですか?』
『良いよ。じゃあ、昼にここで』
『はい…』
『それじゃあ』

俺は挨拶をして少年に背を向ける
すると、少年は俺を呼び止めた

『あの…』
『何?』
『頼んだ僕が言うのはおかしいと思うのですけど…。どうして僕に教えてくれるんですか…?』

その質問に俺は少し考えてから、こう言った

『頼まれたからね』と…

そう、頼まれたからなのだ…
そうでなければ、こんな事はしないさ…
こんな、もどかしい思いをする事なんて…


それから数週間…
俺は少年にみっちりサッカーの練習を行い、彼は最初の時よりもだいぶ上手くなった
彼もそれを実感しているようで、とても嬉しそうに笑う

そんな、ある日の練習が終わり
俺は休憩しようと、少年と土手に座って雑談を始めた
しばらく話していると、彼はここで練習していた理由を話してくれた

彼は小学生の頃からサッカー選手に憧れ、今は少年サッカークラブに所属しているらしいのだが
実力が無い為、ずっと補欠らしい
その状況に親からは高校に入ったら止めなさいと言われているらしいく
辞めたくない彼は大好きなサッカーを続けたい一心で練習していたのだという

その話に、俺は共感するものがあった
クラブに入っていたわけではないのだが
俺も『お前なんか無理だよ』と同級生によく言われ続けて、必死に練習した経験があった
だから、コイツの気持ちは良く分かる

だからなのか、俺は思わずこう言ってしまった

『次のクラブの練習はいつ?』
『えっ…。明後日ですけど』
『そうか。じゃあ、行っても良いか?』
『えっ、来てくれるんですか?』
『時間があればね』
『ありがとうございます!』
『じ、時間があればだぞ…!』

そう俺は言ったが、少年は嬉しそうに笑う
来てくれると信じてるようだ
その後、少し雑談して少年は俺にサッカークラブの練習場所を教えて、家へ帰っていった
彼が帰った後、俺はたった一人で夕焼けが沈みきろうとしている空を見ていた…

2日後
俺は少年に教えてもらった場所へ行くと、複数の親とその子供達が強くなるために団体練習をしていた
その中にはあの少年の姿も…

その姿を見ていると、少年は次第にクラブの輪から離れていき、端っこでドリブルとシュートの練習をし始めた
その姿には辛いもの感じてしまう

さらに、しばらく見ているとコーチの指示で紅白試合が始まった

あの少年は、参加している子供が多いからなのか
紅白戦に参加出来ず、たった一人でベンチに座りその試合を見ていた

寂しそうだけど諦めてるような目で…

すると、その時
紅白戦をしていた一人の子供が相手のスライディングによる負傷で少年と交代することになり、彼は慌ててMFとしてピッチに立った
彼は最初、久しぶりの紅白戦に戸惑いミスを重ねたが、次第に落ち着きを取り戻し、俺と練習した成果を少しずつ目に見える形で出し始めた
ドリブルで次々と相手DFをかわし、シュートでゴールキーパーを脅かす
その動きにチームメイトとコーチは驚き、彼もその変化に驚いていた

でも、少年は本当に楽しそうだった
強くなった事よりも皆でサッカーが出来ている事に

そして、試合も終わろうかとした時、少年はシュート放ち、それはしっかりとゴールに突き刺さった
少年は俺が教えたものをしっかりと自分のモノにしていた

ただの練習なのにチームメイトと喜ぶ少年
俺はそれを見たとき、どうして心のモヤモヤがいつまでも取れないかが分かった

クビを宣告されて一度は諦めようと思った
でも、いつまでも仕事に就かずにいたのは、やっぱり諦められない想いが心のどこかにあったからだと思う
そんな時、少年が現れた
まるで、自分へ何かを訴える為のように…

俺は軽やかな気持ちで『よし!』と呟き、すぐに練習場を後にして、家に置いてあるサッカーボールで練習を始めた
もう一度、前へ進むために…


あれから数年後
俺はサッカーにトライアウトがある事を知り、それを受けることにした
すると、なんとJ3のクラブからオファーを貰う事が出来た
俺はそのオファーを受けて、再び選手として前に進み始めた

それから数ヶ月後
俺はスタメンで試合に出ることになり、入場音楽と共にピッチに出る
すると、観客席から『頑張れー!』と聞こえてきた
ふと、その声の方を見ると…
そこには『ありがとうございました』と書かれた応援ボードを持ったあの少年が観客席にいた

少年は成長していたが、すぐに分かった

俺は軽く笑みを浮かべ、少年に見えるように親指を立てる

言葉にならない様々な想いを込めて…

ポジションに付き、試合開始の笛が鳴る
新しい一歩を踏み出した


――
どうも僕です( ̄∀ ̄)

お久し振りです
いまだに目が良くないので、苦しい毎日を送ってますが、少し良くなったのを見計らって書いてたのがようやく完成しました(^_^)

誰か見てくれてるのかな?
てか、どうでしょうか?
この話を言うなら、夢に進んだ男と夢に向かう少年の不思議なお話だと思います
二人の交わりに面白さを感じていただけたら嬉しいです

次も読んで頂けたら幸いです(^_^)

―――
9 6

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する