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2016年07月09日22:22

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自民党改憲草案第21条第2項の闇

■自民、「政治的中立を逸脱」した教師の事例をネット募集
(朝日新聞デジタル - 07月09日 20:53)
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=168&from=diary&id=4085423

こういう教育への容喙と圧力は、自民党のお家芸といったところだろう。

選挙の争点にこそなっていなくとも、自民党は改憲草案を公表しており、そこにこの徒党が目指す理想の社会ははっきりと描き出されている。私が常々批判しているのは、その改憲草案の第21条第2項である。

自民党改憲草案第21条第2項
前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない。

この条文が憲法に仕込まれていたら、治安維持法でも制定できる。というかこの条文は、治安維持法の如き法律を制定せよと統治権力に命じている条文なのである。この条文によると、ある特定の「目的」を持っていると統治権力から判定された人間は、一切の「活動」が「認められな」くなる。

電車・バスなどの公共交通機関を利用することもできないし、なんなら道路を歩くことも許されない。「活動」が「認められない」のだから当然そういうことになる。そして突き詰めていくと、「活動」が「認められない」ということは、要するに生きていてはいけないということになる。死ねということだ。言い方を変えるとこの条文は、ある特定の「目的」を持った国民がいたら殺せという命令を統治権力に下しているに等しいのである。

これこそまさに治安維持法そのものである。死刑法として名高い治安維持法の第1条はこうだ。

「国体ヲ変革スルコトヲ目的トシテ結社ヲ組織シタル者又ハ結社ノ役員其ノ他指導者タル任務ニ従事シタル者ハ死刑・・・」

よく読むとこの治安維持法第1条は論理的な構成が改憲草案の条文と100%一致する。草案は「目的とした活動」は「認められない」と言い、治安維持法は「目的として」結社等をしたら「死刑」である。

もちろん、国民がいかに安倍政治に騙されるとは言っても、さすがにここまでの条文をすんなり通すとは考えにくい。重要なことは、この条文の実現可能性ではなくて、こういう社会を理想として描く自民党の感性の方である。自民党が戦前を賛美する集団であることは万人の知るところだが、その中でも最も悪質な部分である治安維持法を、今も変わらず「理想」として思い描いているのである。

さらに愚かなことは、こういう憲法を実現した時に、自民党は自分たちが統治権力を握っているという想定しかしていないことだ。もしこの条文が、自分たちと対立する政治集団によって行使・悪用されたら、自分たちがどのような目に遭うかという想像力が絶望的に欠けているのだ。

ハンナ・アーレントはナチスとスターリンのソ連を、どちらも全体主義国家であるという点で同類と喝破したが、アーレントが注目したのは「秘密警察」の存在だった。この秘密警察による支配とテロルは、反対派を排除するために用いられるのではなく、反対派がいなくなった時にこそ開始されるとアーレントは説く。

つまり国家の内部に「敵」を永続的に作り続けることで、全体主義という「運動」を維持・継続させるのだ。この「敵」を作り出す上での行政組織上の要が秘密警察なら、法律上の要が自民党の改憲草案にあるような「目的」を禁じるたぐいの法規である。権力が任意の相手を次々に「敵」として指名することのできる法律が要請されるのだ。

実際、スターリンはいわゆる26年刑法、別名スターリン刑法に次のような犯罪を規定した。「行政秩序に反する罪とは、直接に政府の転覆に向けられてはいないが、秩序ある活動を妨害し、かつ権力機関への反抗およびその活動の阻害…権威の弱体化をきたす行為と結びついたすべての行為をいう」。行政権力の評価いかんでどうとでもできる万能の法律である。

いつの世も悪党の考えることは一緒ということだろう。

自民党の愚かなところは、絶対権力の確立以前にこうした憲法を用意すると、まさにその条文によって自分たちが「敵」として指名される可能性があることに気づいていないところである。

こういう想像力の欠片もない、知的退廃の産物である改憲草案を堂々と公表してしまう自民党に、軽率な支持を与える有権者はバカの自己証明をしていると評さざるを得ない。
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