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2016年07月27日18:41

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【創作】超攻鬼装オーガイン  第一話:天才科学者と私と被験体【前編】

この内容は、私の創作意欲の元に書かれた、事実とは全く関係のない話です。
そういうのに興味ない方は、戻ることをお勧めします。長いのでw


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薄暗い部屋の中、生命維持装置の音が鳴り響く。
寝台には一見すると人型のロボットと見て取れる物体が寝かしつけられている。
額に大きな角が二本生えており、異形を強調している。
しかしこれはロボットではなく、正真正銘の人間である。
人間を鋼の肉体へと改造し、最強の機動兵器へと改造する。
神の御技を冒涜する実験がN県の山奥にて行われていた。

「世界には戦争が足りない」

この改造手術を受けている被験体、私はこの人間の詳細を知らない、知る必要もない。
知ってしまったら情が移り、施術できなくなるかもしれないからだ。
Organoid Interface(オーガノイドインターフェイス)、鬼神の如き強さを秘めた鋼鉄の戦士、ナンバリングは001。
私たちはこの被験体をOnI001と呼称していた。

「またその話ですか?」

高速で施術を行う男に私はまたかという表情で応える。
実際、この話は既に何百回も聞かされている。
彼の名は園咲顕将(そのざきけんしょう)、機械工学の分野でかつて世界でも5指に入るといわれていた天才科学者である。

「何を言う、大事なことだよ?戦争の、死ぬか生きるかの最中でこそ科学は急激に進歩を遂げるものだ。電話やGPSやパソコン、自動車に飛行機に船、全て元をたどれば軍事兵器にたどり着くじゃないか」

なぜ過去形かというと、学会を追放されたからだ。
彼はこの戦闘用改造人間の元となる研究を学会に発表した。
常人では思いつかないような発想が数え切れないほど盛り込まれた内容に科学者は驚嘆した。
しかし世間の倫理観からは遠く離れていた。
多くの国で政治は王政から人民に委ねられ、かつての世界大戦のように、武力を行使した国家間での争いは極端に減った。
戦闘用改造人間は時代に取り残された遺物だと科学者たちは嘲笑した。
だがその技術力は他を抜きん出ていた。
人体を強化し、生活のサポートに当てる医学用の義手や義足にその技術を転用しようという声が多かった。
だが園咲顕将はその提案を一笑に伏した。
この研究で生まれた副産物の技術に群がる豚どもには興味ない、と。
開発にかかった全ての新技術に多額の著作権をかけ、彼は学会を去った。
こうして彼にしか扱えない、100年先の医療技術と呼ばれた研究は学会から葬り去られた。

「信じられるかい?ほんの160年ほど前まで、日本人はちょんまげを結わえてゴザルゴザルと斬り合ってた人種なんだよ。それを他国との数度の戦争を経るだけで宇宙にまで進出している。これが戦争による科学の加速と言わずしてなんとする!」

実際問題として、戦争が極端に減った現在では科学の進歩は牛歩の如く遅々としており、かつての勢いは無い。
園咲顕将の言うとおり命の危機に晒されなければ、人間は進化できないのかもしれない。
彼の理論を何度も聞いていると、そう錯覚してきそうになる。
果たして人間は殺しあわないと次のステージへ進むことができないのだろうか?
そんなことはない、平和の中でも人類は進化できる。
そういう想いはなくはないが、彼の近くでその研究を見ていると、その想いにも疑問が湧いてくるばかりだ。

「ひとまずボディに関しては完成だ。あとは脳の調整を残すところだね」

胸部装甲を閉めて、彼は一息ついた。
被験体を見れば、それが元は人間だとは思えないほど美しくも禍々しい機械の体になっていた。
園咲顕将、悪魔の頭脳と神の技術を併せ持つ天才科学者だと実感し、身震いを起こす。

「続きは一時間の休憩の後、再開しよう」

そう言って彼は工作室から出ていった。
人間を機械の体に改造する手術、それに要した時間はたった4時間だった。

「どっちが化け物なんだか」

彼が出ていった扉と被験体を交互に見ながら、溜息交じりに言葉が漏れた。
そうそう、自己紹介がまだでしたね。
常識から遠くかけ離れた倫理観を持つ天才科学者園咲顕将、その第一助手であり研究と常識の間で揺れ動く乙女、それが私こと小鳥遊桜子(たかなしさくらこ)である。



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休憩室に入ると私は自動販売機からアイスミルクティを購入する。
さらにもう一杯、ミルクと砂糖が多めに入ったコーヒーを購入、これは園咲顕将の分である。
私は体質的にコーヒーが合わず、飲むと胸焼けを起こしてしまうのでもっぱら紅茶を好んで飲んでいる。
もちろん砂糖とミルクは欠かせない。
常に研究で疲弊した脳には大量の糖分が必要なのである。
二杯のコップを持って、彼の自室へ向かう。

「博士、コーヒーをお持ちしましたよー」

私は園咲顕将のことを博士と呼んでいる。
研究や実験を行っている彼は全てが計算し尽くされているような精細な動きをするが、一度電池が切れると実にだらしない。
おそらくは今も自室でダラダラしているに違いない。
私が世話を焼かないと食事もまともに取らない駄目人間なんだから。

「え!?あ・・・・・・桜子君、ちょっと待ってくれないか」

部屋の中から慌てた声が聞こえるが、無常にも自動ドアは開かれる。

『あん・・・・・・おにいちゃん。兄弟でこんなのダメだよ・・・・・・・・』

開かれたドアの向こうには、慌ててパソコンの画面を隠そうとして変なポーズをとっている博士がいた。

「また妹モノのエロゲーですか、博士も好きですねー」

パソコンの画面には所謂X指定の、幼い少女が裸で情事に耽っている映像が映し出されている。
この光景には割りとよく遭遇するので、今ではたいして気にならなくなった。
天才科学者も一皮剥けばただのエロオヤジだ。

「どうせまた食事も水分補給もしてないんですよね、これコーヒーです」

固まってる博士に冷ややかな視線を向けながら、パソコンデスクにコップを置く。
さすが倫理観が壊れているだけのことはある。
普通、職場の休憩時間にエロゲーするか?

「ダメだよ桜子君、いつも言ってるだろう。こういう場面に遭遇したら、イヤン博士のえっち!って頬を染めないと!」
「毎日お昼休憩にエロゲーされてたら、私の純情もいいかげん底を尽きますよ」

博士の下で研究をするようになってから気づいたことがある。
彼は基本的に本能でしか動かない。
普段の研究も自分が興味を持った対称にしか食指が動かない。
当然プライベートにおいても、本能に赴くままにしか動かない。
本当に何でこんな変態が、かつては世界の五指に入る天才と言われていたのだろう。
彼を認めていた人間も、この姿を見れば幻滅するに違いない。

「これはだね、改造手術で消費した多大な集中力を補うために必要な行為なんだ!」
「はいはい、この線からこっちにこないでくださいね。えんがちょー」

床に足で線を引きながら、両手の人差し指と薬指を交差させ、えんがちょのポーズをとってみせる。

「ヒドい!僕の心のオアシスを、彩芽たんを汚物を見るような目で見ないで!」

あのパソコンの画面に映ってる女の子、彩芽って言うんだ。
そんなどうでもいい情報にげんなりしながら私は愛用のエプロンを着用する。

「博士、手早く作りますけど、何が食べたいですか?」

不精な彼の健康管理も助手の私の仕事の一つである。
私はオカンか!

「まったく、今回の施術は大変だから英気を養うためにとっておきのシーンで止めておいたのに・・・・・・あ、野菜炒めでオナシャス!」

この人は私がいなかったらどうなるんだろう、そう思いながらも冷蔵庫の野菜を取り出す。
キャベツ、人参、豚肉を一口サイズにカットして、ピーマンを細切りにしていく。

『おにいちゃん・・・・・・わたし恥ずかしいよ・・・・・・』
「大丈夫だよ彩芽たん、ぼくが優しくしてあげるから」

フライパンを火にかけ、ほどよく温まったところで豚肉を炒める。コレステロールを抑えるために油は豚肉から出たものだけで調理する。
火が通った豚肉をボウルに避難させ、続いて野菜を炒める。

『おにいちゃん・・・・・・なんかきちゃう、私変になっちゃうよー』
「フヒヒ、最高だよ彩芽たん」

キモい、キモ過ぎる。
何で私はこんなキモ男に料理を作ってるのだろうか。
最後に野菜と豚肉を合わせ、塩コショウで味を調えると野菜炒めの完成。
出来上がったものを皿に取り分け、調理が完了する。

「おい、キモ豚クソ野郎、さっさとパソコンを片付けないと、それブッ壊しますよ」

人が世話焼いてる横でエロゲーなんてしてほしくない。
つい本音が漏れてしまった。

「アッハイ、スミマセンデシタ」

いそいそとノートパソコンを閉じてデスクの上を片付ける博士、なんか小動物みたいで可愛いな。
いつもこれくらい素直だったら扱いやすいのに。
綺麗になったデスクに出来たての野菜炒めとご飯を並べる。

「博士はソース派でしたよね」
「そだよ」

私はそのまま博士の皿にソースをかけ、自分の分には醤油をかける。
野菜炒めにソースって、ソースの味しかしないと感じるのは私だけなのだろうか。
よく地域によって食の好みが違うと言うが、野菜炒めには醤油が一番だと私は思う。

「相変わらず桜子君の料理は美味しいねー」
「博士の場合、お腹を満たせられれば何でもいいんじゃないですか?」
「そんなことないよ、美味しい食事は活力を生み出すからね」
「その活力の行き場がエロゲーじゃなければいいんですけどね」

他愛ない会話を交わしながら箸を進める。
有り合わせで作った割にはいい出来だと自分でも思う。

「ところで桜子君、大事な話があるのだが」
「何でしょうか?」

博士の真面目な顔つきに、私の言葉も改まる。

「そろそろ僕のことをおにいちゃんって呼んでくれていいんだよ?」
「一生呼びませんから!」

真面目に対応しようとした私がバカだった。
随分と長い付き合いになるが、この男の思考は今でも読めない。 この発想はどこからくるのだろうか。
よく天才とバカは紙一重というが、プライベートの博士は間違いなくバカだと思う。

「そんなにプリプリ怒ってたら可愛い顔も台無しだよ」
「ぶっ!!だ、誰が可愛いって言ってるんですか!?」

博士の予想外な言葉に喉を詰まらせる私。
そう、顔が火照って赤いのは喉が詰まって息苦しいだけよ。

「おいおい、そんなに慌てなくてもいいじゃないか」

差し出されたコップを受け取ると一気に飲み干す。
苦さの後にくる甘さが喉をスッキリさせる。

「あ・・・・・・」

飲み干してから気づく。

「どうしたんだい?」
「な、なんでもないです!博士のバーカ!」

これ、間接キスだ。
さっきよりも火照る顔をごまかすために、とりあえず博士を罵倒した。
その時、部屋の内線が鳴り響く。
他の研究員からの連絡である。

「休憩中くらいゆっくりさせてほしいんだけどなぁ」

面倒くさそうに博士は受話器を取り上げる。

「うん・・・・・・うん・・・・・・へぇー・・・・・・そりゃ大変だねぇ」

まるで世間話をしているような対応だ。
きっと大した内容ではなかったのだろう。

「わかった、じゃあ」

そう言って受話器を置く。

「何かあったんですか?」

念のために確認する。
どうせ午後の施術開始時間の確認か何かだろう。

「えーと・・・・・・OnI001が逃げ出しちゃったって・・・・・・どうしよう?」

部屋の空気が一瞬で凍りつく。

「はい?」


【後半へ続く】
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