オギャー! 出産に立ち会った男性たちに、当時の心境を聞いてみた
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あの日のことは、今でも憶えている。
僕がパパになった日。
妊娠中から、嫁には出来るだけ出産には立ち会いたいと話していた。
と言っても僕は自営業で、患者さんを抱える身だから、産気づいたと言われても、場合によっては直ぐに駆けつけるというわけには行かないこともある。
だから、出来るだけ。
そういう意味では、はるちゃんはパパとママのことを思って、この日を選んで出てきてくれたのかも知れない。
2008年11月2日。
はるちゃんの産まれた日。
土曜日だった。
しかも、3日は日曜日であり文化の日。
振り替えで4日も祝日で丁度連休に当る日だったのだ。
まさに、このタイミングで、というベストタイミングではるちゃんは出てきた。
予定日より、2週間ほど早い出産だったから、もしかするとはるちゃんは本当に、この日を選んで出てきたのかも知れない。
あの日、夜中にトイレに起きた嫁が、戻ってくるなり、僕を起こした。
どうもオカシイと言う。
おねしょをした自覚もないのに、パンツが濡れていると言うのだ。
それが破水だった。
産婦人科に電話を掛けると、直ぐに来て欲しいとのこと。
慌てて、着の身着のままクルマに乗って、産婦人科に向かう。
夜中3時半だったろうか。
病院に着き、僕たちは分娩室と隣り合わせになった控え室に入った。
そこで、陣痛の周期が短くなるのを待つ。
嫁の子宮口は3センチ程開いていて、何時産まれてきてもおかしくないとの話だった。
暫くすると、嫁の陣痛の周期が短くなって、痛みも強くなる。
僕たちは分娩室に入った。
あれは妊娠が分かって直ぐの頃だったろうか。
僕は、湯船の中でシクシク泣いている嫁を見た。
赤ちゃんを産むことについて、嫁は怖いと泣いていたのだ。
いつもは明るい嫁が、僕に泣いている姿を見せまいと、湯船の中で隠れて泣いていたのだ。
怖いというのは、陣痛や出産の痛みのこともある。
でも、それ以上にこれからの生活に対する不安なんかも、嫁の頭の中にはグルグル渦巻いていたに違いない。
その嫁の姿を見て、僕はどうしても出産に立ち会いたいと思った。
そばにいて、何が出来るわけでもない。
ただ、そばにいて嫁が安心してくれるなら、手を握ることで気分が落ち着くなら。
それくらいのことしか出来ないけれど、でも嫁のそばに居たいと思った。
そして、生まれてくるその瞬間を2人で迎えることが出来るなら。
それは嫁の為でなく、僕の為に出産に立ち会いたいと思った。
嫁の出産は、助産婦さんも驚くくらい安産だった。
今でも僕は、はるちゃんが出てくる瞬間を憶えている。
あれは、そう。
朝の8時過ぎだったか。
何故、其処まで憶えているか。
これは今でも嫁に話しても信じて貰えない。
でも本当の話だ。
僕は、まさに生まれてくるはるちゃんと目が合ったのだ。
生まれてくる瞬間、目を閉じていたはるちゃんの目がパチッと開いて、そして僕の方を確りと見た。
僕を見てくれた。
これだけは嫁は信じてくれないけれど、本当の話。
そして、僕の目からは涙がこぼれた。
その日。
僕は結局、一睡もしなかった。
その所為もあったろう。
出産を終えた嫁が病室で寝ている間、僕はこっそりと病院を出た。
11月にしては暖かな陽射しが心地良かった。
それ以上に僕はハイテンションになっていた。
きっとこれ迄の人生で、あんな気分になったのはあの日だけだと思う。
喜びもある。
ホッとした気持ちもある。
でも、それ以上に自分に息子ができ、これからその息子を育てていくという責任感。
そんないろんな気持ちが綯い交ぜになったフクザツな気持ち。
これがパパになるってことなんかなぁ。
まだ、僕の中にはパパの実感はなかった。
僕は病院を出て、クルマに乗り、市内の百貨店に向かった。
嫁と約束をしていたのだ。
赤ちゃんが退院する時、一番最初に袖を通す服は、僕が選んで買ってくると。
百貨店の子供服売り場に着いたはいいが、どれを買えば良いか分からない。
困った顔をしている僕に、店員のお姉さんが声を掛けてくださった。
”どうされましたか?”
実は、さっき赤ちゃんが生まれたんです。
言わなくていい事まで言ってしまう。
あの日の僕は、きっと何処かおかしかったんだろう。
店員のお姉さんは、ニッコリと笑って、おめでとうございますと、親身になって一緒に服を選んでくださった。
服を買って、病院に戻る時、クルマのバックミラーに映った僕の顔。
頭はボサボサで、無精ヒゲの僕の顔。
僕はクルマの中で、ひとりゲラゲラ笑った。
あの日の僕は、きっと何処かおかしかったんだろう。
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