mixiユーザー(id:3700229)

2016年02月13日16:28

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「愛しき人生のつくりかた」

見た後すばらしく豊かで爽やかな気持ちになれる人生讃歌だ。
フランスで100万人を動員したというのも納得。
最近めっきり増えてきた終活映画なのだが、我の強い老女の冒険が、可愛い孫にとびきりの贈り物をもたらし、悩める中年の息子を再生させる。季節がめぐるように、命が循環し、希望が受け継がれていく様が、ユーモラスに生き生きと描かれて、楽しいったらない。
前半、3人の息子がひとり暮らしになった母をもてあまし、老人ホームに入れて、その費用を払うために生家をこっそり売却してしまうくだりは、胸が痛む。ひとり暮らしの母が心配な私も、できることならそうやって早く安心したいなあと思っているからだ。
ホームに足繁く通うのは孫のロマン君だけで、失踪した祖母を追ってはるばるノルマンディまで出向くのも彼だ。こんなにやさしい子を育てた両親は、それだけでも親孝行だよなあと、子どもを持たない私は、ここでもまた胸を痛める。せめてものおわびにできるかぎり母の好きなようにさせておこうと思う。

ロマン君の父親を演じるのは大好きなミシェル・ブランだ。老母の心配×定年の疎外感×夫婦の危機の三重苦に悶え苦しむ姿が最高にチャーミング。悩めば悩むほどに笑わせてくれる芸達者。あの「仕立屋の恋」ですら、ボウリングのシーンだけは妙におかしかったからなあ。
旅の途中でロマン君と父親にそれぞれ絶妙な助言を与えるロードサイドの店の販売員もピュウ〜と口笛を鳴らしたくなるほどカッコイイ。アメリカ人のジョークとも違って、粋で、洒落ていて、ちょっと笑える。ホテルのオーナー(監督自ら出演)とロマン君の疑似親子関係や、ロマン君と祖母が発見した画家のエピソードなど、脇道のエピソードも効果的。ほんとによくできた映画だ。
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