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2015年09月26日17:55

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『バベットの晩餐会』

映画『バベットの晩餐会』を観た。

(1987年 デンマーク 監督:ガブリエル・アクセル
出演:ステファーヌ・オードラン ジャン・フィリップ・ラフォン グドマール・ヴィーヴェソン
ハンネ・ステンスゴー ボディル・キュア ヴィーヴェケ・ハストルプ ビアギッテ・フェザースピール)

BSプレミアムにて録画鑑賞。88年度のアカデミー外国語映画受賞作だそうだ。

【19世紀後半のデンマークの小さな漁村。プロテスタント牧師の父を持った姉妹の下へ、パリ・コミューン(パリ市民による自治政権)により父と息子を亡くした女性バベットが移り住んでくる。
月日は流れ、姉妹は既に亡くなった父を偲び、生誕百周年の晩餐会を開くことに…。】

原作は、アイザック・ディネーセンの小説。

私はこの作品の存在すら知らず、何の予備知識もないままに鑑賞。
ずいぶんと地味な感じの画なので、途中で寝るかもと思ったんだけど、ところがどっこい意外と面白かった。
世間の評価は割れているらしいが、私には心に沁みてくるものがあったなあ…。

その生涯を神に仕え、信者でもある村人たちとつつましやかに、質素に暮らす二人の姉妹。
若いころの姉妹は、寂しい漁村の中では美しく咲いた花のよう。
年老いてからも、姉妹は神に仕え、信者とともに変わらずに生活していた。
その姿は老いてなお凛としていて、美しい。

フォト


物語は、この老いた姉妹(ボディル・キュア、ビアギッテ・フェザースピール)のもとに、知人から紹介されたバベット(ステファーヌ・オードラン)が訪ねてくるまでの姉妹の様子を、丁寧に描いてゆく。
どこか謎めいたバベット。聞けば、パリでの政治の混乱で、夫と息子を亡くしたのだという。
行くところもなく、頼る人もいない彼女は、見知らぬ土地の見知らぬ老姉妹のもとで、家政婦として働きはじめる…。

今まで、料理を題材にした映画はたくさん観てきたけれど、こんなに調理場面をリアルに感じたことはない。
当時のフレンチがどういうものだったかというのがよく分かって面白い。
調達されてきた材料がまたダイナミック、かつ素朴…。うずらなんぞは生きたままだし。

また調理中はBGMは一切なく、食材を切る音、お鍋がぐつぐつ煮える音、うずらの羽をむしる音まで…(笑)、無駄口一つたたかずに、手際良く調理していくバベットの姿をリズミカルに演出していた。
そして、ワインやシャンパンがとてもおいしそう!料理は少しグロテスクなものもあるけど、どれも食べてみたくなる。

心を込めて作ったバベットのフレンチは、ぎこちなかった人々の心を溶かしてゆく。
晩餐会に招かれた信者たちは、けして料理のことは話題にはしないが、その表情でどんなに素晴らしい味なのかがよくわかるのよねぇ。
人間って、おいしいものを食べると心が豊かに温まって、幸せになる生き物なんだなって思った。

さて…、何が心に沁みたかというと、たぶんバベットの「おもてなし=奉仕」の心意気なんだろうと思う。
人に奉仕するって、こういうことをいうのかなと…。この晩餐会は、彼女の感謝の想いが溢れている。
ラストシーンを観ながら、無償の愛ってこういうことをいうのかも知れないと思った。

人とのつながりが薄くなりがちな現代に生きていると、こういう作品を観ると、ふと考えさせられてしまう私は、歳をとったということかしら。

静かな作品を観たい時にオススメ、かな。



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