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2015年06月13日13:57

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夢の小料理屋のはなし 49

「週末ここで酒飲んで過ごすのが、楽しいんすよー。」
田中さんが、一刻者のグラスをカランコロン言わせながら、今日もカウンターの右端で飲んでいる。
「今日ね、社内パンポン大会って言うイベントで出社だったんですよ、パンポン大会。」
「パンポン大会?」
「まあね、卓球みたいなスポーツですよ。」
「何故パンポンなの?」
「単純に書き間違えた人がいただけなんですけど。」
グビっとロックを飲み干す田中さん。
「それを何故、この土曜日にわざわざやるんですか?って話ですよ。」
「まあでも、1日頑張ったんだもん、今日の焼酎は美味しい筈よ。」
「そうなんですけどねー。でもま、ホントに旨いから、これでいいか。」
田中さんは本当に美味そうに酒を飲むお客さんの一人だ。
彼とはここで随分仲良くなったが、実は昼間彼が何をしているのかを知らない。
今日職場のパンポン大会に出た、と言う事以外は。
でも、それで良いのだ。
暖簾をくぐったら、浮世の肩書きなんぞ関係無く、酒を楽しめばそれで良い。
「女将さーん、お刺身ちょうだい。ニシンとアルファー鯖。」
「それ、〆鯖よ、田中ちゃん。」
「ま、知ってて言ったんですけどね。」
「でも、ニシンのお刺身なんか珍しいっすね。どんな感じなんだろ?」
「美味しいわよ、味がじゅわーっと染みてきて。」
程なくして、田中さんの前に刺し盛りと日本酒が現れる。
「あれ、僕日本酒なんか頼んで無いですよ?」
「あちらのお客さんからの差し入れよ。」
そう言って女将さんが僕を見るので、僕は田中さんに手を振ってみる。
「普通こう言うのは、女の子にしかしないんだよ。」
「ですよねえ、僕も初めてですよ。おっさんから酒貰うの。なかなか不気味ですね。」
「あ、じゃああげない!返せ!」
「いや、嘘、嘘、いただきます!」
「コールドミフク、美味しいわよ。今年の美富久は当たり年ね。」
何故か女将さんもお猪口を舐めている。
「あー!女将さん!」
肩をすくめながらこっちを見て笑う女将さん。

「フフフ、あちらのお客さんから頂いたのよ。」

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