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2015年04月07日21:38

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SOS団VS第3話『ハルヒ、普通人になる 前編』 その2

SOS団VSスケット団、第3話の続き。


ハルヒもスケダンも明るくて似た雰囲気なんで、クロスさせるにはうってつけだと思ったんだけどね。
(スケダンの場合は『スイッチ・オフ』のような重い話もあるけれど)
『銀魂×るろうに剣心クロスオーバー』とどっちがマッチしてるかな。


劇中に登場した 『あべこべ茶』はSKET DANCEの『錯乱の花散るらん(第209話。24巻に収録)』に登場する薬なのですが(アニメでは出なかった、残念)、
このお茶をハルヒキャラに飲ませるとどうなるだろうと思って書いてみました。
とはいってもハルヒ以外の3人はちょっとだけだったからなあ。再登場させたほうがいいか。


さ、続き続き。
若者よ、恋をしろ!


テーマソング:中島孝『若者よ!恋をしろ』




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 ここは茶道部の部室。
 畳が置かれ、ヒーリングの音楽が流され、清閑な雰囲気が流れている。
 部長である黒髪長髪の女性と、8人ぐらいの先輩後輩が見守る中で、ハルヒは正座で器用に抹茶をかきまわしていた。
 キョンとSOS団の3人は、谷口と共に廊下から部室を覗き込んだ。
 ここにいたのか。
「こんな私を、受け入れてくれるんですか……?」
 オドオドした感じで、ハルヒは茶道部部長に尋ねる。
「いや、まあ……」部長は上品な苦笑を浮かべ、「何があったか知らないけど、学校の屋上から飛び降りようとする生徒を見て、見過ごさないわけにはいかないでしょう。
それに茶道は、人の心を落ちつける効果があるわ。お茶を飲みながらゆっくり頭の中を整理すれば、心の整理もつくでしょう」
 落ち着いた物腰で答える。
「やっぱり涼宮さん、自分をはかなんで自殺しようとしてたみたいですね……」
 笑顔のない表情で、古泉はキョンに普段見せない冷徹な視線を向ける。
 キョンは頭をかきながら、
「まさかそこまでいくなんて、思ってもみなかったんだよ……。いつもいつも自分勝手でうるさいから、少しはおとなしくなってくれと思ってああしたんだけどな」
 他の3人を気にしながら、彼はハルヒと茶道部部長の話を聞いてみる。
「本当に私、おかしかったですよね」頬を染めてうつむきながら、ハルヒは、「普通人に興味がないの、宇宙人や未来人やらを探してるのと言っちゃって」
「まあ」部長は苦笑いしながらも、「若気の至り、と言うのはあるからね。貴方も本当は、ああ言ってみたかっただけだったんでしょう」
「……たぶん……そうだったのかしら……」
「それにしても貴方、本当に茶道初心者?」部長はハルヒの手さばきを見て、「抹茶のかき回し方、本当にうまいじゃない。文武両道だとは聞いてたけど……」
「そうですか? ありがとうございます」
 ハルヒはオドオドしながらも、部長に礼儀正しく頭を下げる。
「是非ともうちの部員にしたいわ……貴方なかなか才能あるし」
「ありがとうございます。これからお世話になります……。宜しくお願いします……ぽっ」
 抹茶をかき回す手を止めて、静かにハルヒは答えた。
 『ぽっ』って、どっかのギャルゲーのヒロインみたいだけどな。
 ハルヒは、最初は過去の自分の行動を恥じて体を丸めていたが、やがてピシッと背を伸ばして正座の理想像になり、ゆっくりと抹茶を飲み干す。
「はあ……おいしい……」
 その姿、その控えめな声、その柔らかな微笑みは、まさにしとやかな大和撫子そのものにキョンは思えた。
 魅力的すぎて、言葉に出ない。
 彼は、ひそかにガッツポーズをとる。
「おいキョン!」谷口が前に進み出て、「お前、涼宮と付き合ってはいねえよな?」
「いねえけど、どした?」
「今の涼宮なら俺、ぜひとも彼女にしてえからよ。後で文句言ったりするなよ!」
 言ってから谷口は、手ぶらでハルヒのもとに駈け出した。
 おいおい、ラブレターとか花とかいらねえのか?
 そう思いつつ見ると、谷口の告白に、ハルヒは両頬を手で押さえながら、
「本当に私で、いいんですか……? ぽっ……」
 とか細い声で答えている。
 すると、どこに隠れていたのか、地味そうな男たちがキョン達の横をどやどやと前に進み出て、谷口を押しのけ、「抜け駆けすんな!」「涼宮さんは俺の彼女になるんだ!」とおのおのわめきながら、ラブレターと思しき茶封筒やら花束やらをハルヒに差し出している。
 ラブレターを茶封筒で渡すのも非常識なもんだが、彼女は元々美少女である上に文武両道だから、あの性格がなくなってしまえば、男どもが是非とも彼女にしたいと思うのは人情だろう。
 ハルヒは顔をリンゴのように紅潮させ、うつむいてしまった。
 選択に困ってしまっているようだ。
 先ほどの茶道部部長は、やめなさいと言いながら男どもを帰し始めた。
 ま、今のハルヒならベストな選択をするだろう。
 付き合う……か。
 自分だったら、朝比奈さんかヒメコさんのどっちかだけどね。
 とにかく、今のハルヒが持ち直したならそれでいいか。
 横を見てみる。
 古泉は笑顔が消えて呆然とした表情。長門は相変わらず飄々と。みくるはきょとんとしている。
 ま、こいつらもそのうち慣れるだろう。
 そう思う間もなく、突然の地震がぐらっと襲った。
 今度は大きい。震度5ぐらいか。


 SOS団の今日の活動は中止となり、いつものようにボードゲームで遊んで、いつものダラダラした時間を過ごして、皆皆帰ることにした。
 ハルヒを除く、SOS団全員での下校である。
 キョンは地震のことも忘れ、ハルヒがしとやかになったことに奇妙な満足感を覚えつつあった。
 一方で古泉はあれからずっと笑顔を見せず、深刻な思案顔をずっと続けている。
「オイオイどうした古泉。元気がねえじゃねえか」
「すみません、涼宮さんがあまりにも変わってしまったもので……」悩ましげな顔をキョンに向け、「本当に大丈夫でしょうか、これで……。
古今東西、急激な変化はろくな結果を起こしたことがないんですよ。フランス革命だって民主主義が急激に浸透した一方で、多くの犠牲者を出しましたし……」
「やだなあ。みんなすぐ慣れるよ」キョンは笑って、「ハルヒ自身だって過去の自分を受け入れたうえに、モテモテになったんだから、幸せだと思うぜ」
「でも」長門は無表情で、「涼宮の抜けたSOS団はどうなるの? 存在意義は?」
 すると、みくるが泣き顔の表情になり、
「そんなぁ……。キョン君、SOS団なくなっちゃうの? 私はみんなと一緒にいたいのに……」
「大丈夫大丈夫。残った俺達でいつもの日常を送ればいいじゃないですか。
一応古泉が団長に繰り上げと言うことで。
それに、もうハルヒにバニーとかナースのコスプレとか、させられなくなるんですよ」
 そう話すと、みくるはすぐに泣き顔をほころばせた。
 キョンがちらりと長門を見ると、彼女は相変わらずマンドセルを大事そうにしょっている。
「なあ長門、そのマンドセルを使うのはやめた方がいいんじゃないか? ほら、人がじろじろ見てるし」
「見たい人は見ればいい。それにこのマンドセルは使いやすいし、笛吹が丹精込めて作ったものだし。皆、すぐに慣れる」
「いや……慣れる人いないだろうって……。そうだ、ちょっと悪いが開盟学園に行ってくる」
「え?」
「ヒメコさんにお礼を言わないといけないから……ってあれ? ヒメコさん。ボッスンとスイッチも」
「あれ? キョン君やん」
 ヒメコが、すぐそこに立っていた。ボッスンとスイッチも一緒である。
 そう言えばこのあたりのT字路は、北高の生徒も開盟の生徒も登下校に使っているな。
「ちょうどよかった」ヒメコは口を開く。「キョン君、どうや? あべこべ茶のご首尾は?」
「ああ、ハルヒに飲ませて、普通人にさせることに成功したよ。今は多分、茶道部の部室にいると思う。」
「普通人になったと言われてもなあ……」ボッスンは頭をポリポリ掻きながら、首をかしげて、「どうなったんだかわからんよ。具体的に言ってくれ」
「要するに一言でいえば、オカルトを信じないしとやかな大和撫子になったってことさ。今はSOS団団長を引退して、茶道部にいる」
「なーるほど、」ボッスンは腕組みしてうなずき、「ヒメコにも飲ませるべき薬だな……あいたた!!」
「なんでやねん!! そうやキョン君、あとでわかったんやけどな。あのお茶には問題点があってな」
「問題点……。ひょっとして、味がとてつもなくまずいということですか?」
「それや! よほどの人でないと飲めないという欠点が分かって、チュウさんは改良に取りかかり始めたんや。もしよろしければ、キョン君のも改良したいって言ってたで」
 キョンは、アジト内部をのたうち回ったハルヒ達4人を思い出した。
「まああれは確かに、お茶としては不適格ですねえ。是非とも早く改良してほしいです」
 率直すぎる気もするが、素直に感想を述べ、素直にあべこべ茶の入ったペットボトルを渡す。
 その横で、スイッチがパソコンの無線LANを起動し、今日のニュースを見ていた。
『しかし妙だな……』
「どうした?」
『今日の午後あたりから、アメリカでもヨーロッパでも震度4以上の地震が頻発しているらしい』
「……どーしたもんかねえ。まあ日本の最近の地殻もおかしいけどなあ。今日も大きな揺れがあったし。天変地異まみれだゼ」
 ボッスンとスイッチの会話を聞きながら、キョンは先ほどの地震のことを思い出していた。
 そう言えば大きかったな。
「あ、そうだ。」ボッスンはキョン以外の3人をかわるがわる指して、「お前ら、普通人ではないんだってな」
「「「は!?」」」
 3人の声がハモる。
「ヒメコから聞いたけどよ、確か長門は宇宙人で、朝比奈さんが未来人。古泉が超能力者、だっけ?」
『待て、ボッスン。そんなもん、あるはずがないだろう』
 興味深げに3人をかわるがわる見るボッスンに対し、スイッチがたしなめる。
「そんな、私は、その……」
「確かにその通り。正確には、情報統合思念体に作られた対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインターフェース」
 涙顔で慌てふためくみくるに対し、長門は長々と説明した。
「対有機なんたらだ? わけわからんが」
 ボッスンは長門の説明を理解できないよう。
 古泉はキョンを小突き、
「もしかして、僕たちの秘密をこの人たちに話したんですか!?」
 キョンは頭をかきながら、
「ああ、ヒメコさんには話してもいいと思ってよ。それに、言ったところで信じないだろうとも思ったが、まさか興味を持つ奴が出てくるとは」
 ボッスンは3人に興味深げで、
「実はうちのお得意さんによ、そういうものに興味シンシンな女の子がいてな。是非とも会わせたいものだぜ」
 おいおい、どんな女の子だ。ハルヒみたいな変人か、相当なオカルトオタクだろう。
 そう思う間もなく、後ろからドタドタドタと言う音が響いてきた。


 ボカッ!
 キョンは思いっきり後頭部に拳骨を食らった。
「いたっ!!……って、ハルヒ!?」
 振りかえると、ハルヒが怒りの表情で、腰に手を当てて立っていた。
「キョン! あんた何か企んでるのかと思ったら、私にあんなまずいものを飲ませるつもりだったのね!! おまけにそれからの私は、なんかおどおどしておかしかったし!! 普通人しかいない茶道部に入るなんて! おまけに男どもがギャーギャーうるさかったし!!」
 いつものがなり声を出した。
「は、ハルヒ……?」キョンは唖然とした表情になり、「茶道部は?」
「やめた」
「谷口達は?」
「振った」
 今までの努力、全部水の泡か……?
 キョンはすっかり元に戻ってしまったハルヒを、呆然として見るしかなかった。
「どうやら、あべこべ茶の効き目が切れたみたいですね」
 古泉はハルヒを見て、再びいつもの笑顔になった。みくるは複雑な表情。
 スケット団のメンツはポカンとした表情になっていた。
「キョン、私にこんなひどいことをした罰として、あんたは平団員からパシリに格下げだからね! お茶くみもあんたがしなさいよ!!」
「は、はい……」
 平団員もパシリも似たような気がするが。
 そう思いながらも、キョンは黙って、ハルヒのがなり声を聞くしかなかった。
「ボッスン!」続いてハルヒの怒りはスケット団に向く。「私がおかしくなったことで、なんか関わってない!?」
 スケット団のメンツは目を背けたりしてやり過ごす。全く関わりがないと言えばうそになるからだ。
「おいおい、ヒメコさん達にまで八つ当たりすることはないだろう。ほら、行こうぜ」
 キョンはハルヒの手を強引に引っ張って、家路についた。
 とはいっても、茶道部で見た、性格も容貌もよく、大和撫子のハルヒは是非とも残ってほしかった。
 あきらめて、たまるか。


続く
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