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2015年04月03日18:00

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創作 騒音の主

■公園遊具も健康志向=背筋伸ばすベンチ、懸垂用鉄棒―高齢化背景に増加・国交省
(時事通信社 - 04月03日 17:01)
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=4&from=diary&id=3354024


ドンドンドン!!

誰かがドアを叩いている。

まあ、どうせ向かいの家に住む、タナカのオヤジだろう。
アイツはいつも、オレの息子が公園で騒ぐ声がうるさいと文句を言いに来るのだ。

そんなにうるさいなら、息子に直接言ゃあいいのだ。
なんでわざわざ、オレに文句を言うんだ。
親の躾がなってない。
知るか、そんなもん。

ドンドンドン!!
ドンドンドン!!

うるさいなぁ。
おちおち寝ていられやしない。

しぶしぶ玄関まで這って行って、ドアを開ける。

ドアの外に居たのは、やはりタナカのオヤジだ。
おや、隣にはヨシダのオバハンもいるぞ。

「一体、なんなんですか?昼間とはいえ、こんな風に、ドアを何回もドンドンと叩かれたら、御近所迷惑じゃあないですか。」

オレは、タナカのオヤジに向かって言う。

「ナニ言ってるんだ!!オマエが早く出てこないからだろう!!」

タナカのオヤジは、持っていた杖を振りかざして、オレに食ってかかる。
それをまあまあと、必死にヨシダのオバハンが止める。

「見てのとおり、私は身体の具合が良くないんです。ドアを叩かれても、そんなに早く出てこれやしません。」

「それを言うなら、ワシだって同じだ。しんどくて布団の中で臥せっておるのに、朝っぱらから、アンタんトコの息子が騒ぐ声がうるさくて、おちおち寝ていられやしないんだ。
アンタ親だろ。
いい加減、何とかしてくれよ!!」

やはり、タナカのオヤジは、オレの息子が朝から公園で騒ぐ、ラジオ体操とゲートボールに苦情を言いに来たのだ。

「そうですよ。私たち迷惑しているんです。
昼間ならともかく、こう朝早くから、ワイワイやられたら、うるさくて寝不足になって困っているんです。」

ヨシダのオバハンもタナカのオヤジに同調する。

アンタのトコの息子だって、つい一昨年まで、ウチの息子と一緒になって、公園で騒いでいたじゃないか。
息子が居なくなったからといって、自分の息子のことは棚に上げて、公園で騒ぐ声がうるさいだと。
全く勝手なもんだ。

「あのなぁ、私の息子と言っても、息子はもう75ですぞ。孫もいる歳なんだ。
騒いでいてうるさいと思うなら、私にじゃなく、息子に直接苦情を言ったらどうかね。
それに、ヨシダさん。
一昨年死んだアンタの息子さんだって、私の倅と一緒になって騒いどったじゃないか。
よく胸に手を当てて思い出してみなされ。」

ヨシダのオバハンは、一昨年死んだ最愛の息子を思い出したのだろうか。
目にハンカチを当てて、オイオイ泣き出した。

そこでドアが開いた。

「ただいまー。お爺ちゃん。」

今年小学生になったばかりの曽孫のタロウだ。
どうやら、学校が終わって帰ってきたようだ。

タロウは、ランドセルを玄関にほっぽり出して、何処かに出掛けようとする。

「おいおい、タロウや。何処に遊びに行くんだい。
公園へ遊びに行くのはいいけど、騒いじゃいけないよ、御近所迷惑になるからな。」

オレがそう言うと、

「ナニ言ってるんだよ、お爺ちゃん。
公園は、お年寄りのおじいちゃん、おばあちゃんが占領していて、僕たち子供の遊び場所なんかないよ。
これから、隣町のヒロシくんの家で遊ぶんだよ。」

タロウはそう言って出ていった。


全く、えらい時代になったもんだ。
少子高齢化が進んで、町には老人ばかりがあふれ、子供の声なんか聞こえやしない。
公園にいるのは、老人ばかり。
その老人が我が物顔で公園に屯ろし、騒いでいる。

私が息子を育てていた頃は、まだ、公園には子供の声が溢れていた。
あの頃が懐かしい。
まあ、あの頃も、タナカのオヤジは、子供の遊ぶ声がうるさいと苦情を言いに来てたっけ。

だがそうやって子供を排除した結果、タナカのオヤジは結局、老人の騒ぐ声に悩まされている。

全く皮肉なもんだ。



少し前に削除した日記を再投稿しました。
最近、ちょっと忙しく、日記の更新とコメントの返事ができなくて申し訳ありません。


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