もちろん好戦映画でもなく単純な反戦映画でもなく厭戦映画の傑作。

宮崎駿監督の引退作『風立ちぬ』テレビ初放送「金曜ロードSHOW！」に登場
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美しい飛行機に魅せられた少年の夢が、国家によって戦争へむかってと歪められていく。飛行機技師として生きることの葛藤は、大震災と戦争のなかで光輝き、やがて敗戦へ、破滅へと向かう。それでも生きて！という亡き妻の言葉は、人間の矛盾と絶望の向うにある儚い希望であるのかもしれない。

ネット批評では、あのゼロ戦映画よりも圧倒的に評価が低いのは、この国の知性の低下のなによりの表れだろうし、アカデミー賞をあのディズニー映画がとってしまったのも、このきわめて個人的な、宮崎駿的な、矛盾の美しさと醜さと悲しさを世界は理解できなかったのだと思う。

世界は人間なしに始まったし、人間なしに終わるだろう、というのはレヴィ＝ストロースの言葉だが、この、いまのところ宮崎駿の最後の長編作品には、そのような９９パーセントの絶望と1パーセントの希望がある。そして私たちはその1パーセントを信じて生きていくしかないのだ。